らぶトモ 第57話 【明けましたよ】
今日も寒いですね。風邪をひかないように。
「新年明けましておめでとう」
「お父さんお母さんおめでとうございます」
「おめでと」
「おめでとう二人とも」
俺たち家族は久しぶりに一家団欒だ。
奈々の記憶喪失のことから考えたら、自然なことだな。忙しくして、俺たちのために働いているとはいえ、心の距離は離れなくても、実際会う時間、いや一緒に過ごす時間が少ないのはやはり寂しいと思う。もちろん俺は奈々がいれは十分だけどだからといって、両親との距離を遠ざける理由もない。
奈々の笑顔を見たいからな。
奈々は一家団欒なこの時間もすごく好きなんだ~。二人には事故のことで心配させちゃったし、お兄ちゃんがいるから寂しくないけど、やっぱり四人一緒の時間も大切だよね。奈々は恵まれてると思う。だから大事だし感謝してるよー。
「んなんだ奈々ニヤニヤして」
「あぐ!ニヤニヤしてた?お父さん」
「あははは、正月だからニヤニヤしてていいんだぞ」
「うわ!お父さん抱きつかないで~」
「ガーン」
「あなたー。なにしてるかしら?」
「父娘のスキンシップ...イタタタ」
「やりすぎです!奈々はもう高校にあがるんだですからね!」
「わかった!わかったから、耳イタタタ」
「ふん!まったくもう」
「相変わらずだね、二人とも」
「な、なによ大吾、わかった風な口きいちゃって」
少し照れながら言う母さん。
耳を痛そうに撫でてる父さん。
父さんの熱い包容を回避して安堵する奈々。
よし、今年のスタートも安心だ。
ピンポーン
日付けが変わり深夜1時頃にチャイムが鳴った。
「こんな夜中に誰だ?」
「はーい!迎えにきましたよー」
「た、太助?」
「ふむ。不本意だがこやつの同行を許した」
「泉水ちゃん」
「明けましておめでとうございます。私も泉水様に同行をしてまいりました」
「うわ!玄関で騒がしいと思ったら泉水ちゃん、さくらさん、太助さん!」
まさか三人揃って家までくるとは。
「なにいってるですか?迎えに行くって連絡しましたよ」
「え?マジか?あ、ほんとだ、すまん、見てなかった」
あちゃー。完全に見落としてた。
しかも送られてきたの22時だ。母さんと料理してる時間だよ。
「だから言ったのだ。既読がないのだから、忙しくしているのでは?とな。しかしこのあほは言うことをきかん」
「もう、そんなこといいっこなしですよ。我々だって、企業の年越しのpartyでうんざりしてたでしょ?」
山縣家と太助の会社は取引などもしていたな。
家同士だと競い合ってる感じだし。
犬猿とまではいかなくても、落ち着いてはいられないのだろう。
「貴様が無理やり行こうと言ったのであろうが!共犯にするな」
「まあまあ、泉水ちゃん、せっかく来てくれたんだし、みんなで初詣行こうよ。お詣りは何度してもいいみたいだし、今はなんの準備もしてないから、私服でいこうかな」
「俺は構わないが、父さん母さんに言わないと」
「「了承」」
二人の合唱が背中から聞こえた。
そして、事故のこと、いつも俺たちになかよくしてくれていること、自己紹介を三人にする両親。
さすがの太助、泉水ちゃんも恐縮している。ちょっと笑える。桜庭さんは微動だにしない。さすが侍女だ。冷静だな。
ということで、俺たちは初詣に出掛けた。
出掛けた先は成田山だ。
1年の祈願をするには持って来いらしい。
確かに人がいっぱいだ。
「すごい人がいる」
「みな、この頂上で初日の出を見るらしいな」
「あ、MEもみたいですね」
「貴様は見なくてもいいぞ、我らの縁起がわるくなる」
「山縣泉水女史~ひどいです~!人を災いかなにかと考えてるですか?」
「害虫だ」
「人外...とほほですよー」
「みなさま寒いので風邪をひかないように」「心配してくれて、ありがとうさくらさん」
「桜庭さんはいつも優しいからな」
「い、いえそんな」
「さくら、なにを紅くなっている?」
「い、いえそんな」
桜庭さんはどんどん顔が紅くなってる。
ゆでダコだ、面白い。
「ふむ。ちょっと野暮用を済ませてくる」
「泉水様わたしもお供します」
「MEも行くです~」
「貴様はそこでしてろ!」
「そんな~」
今年も3人はあんな感じだな。
「奈々はいかなくていいのか?」
「ウーン...やっぱり行っとこうかな。こういうことのって、女子はすごい混むからねー」
「我慢はよくないぞ」
「はーい!じゃ行ってきます!うわ」
ずてーんと、ヘッドスライディングのように躓いた!神社だから砂利多いしな。
と、うわ!やば!見えた!猫が!
「イッターい!あ、きゃ!お兄ちゃん!」
さっと、目をそらす。
「な、なにかな?」
寒さどころか、一気に体温が急上昇だ。
「見たよね?」
「なにを?」
「奈々の見たよね?」
「さあ」
「うう...」
奈々が涙目になって睨んでる。
「ご、ごめん、見えた!見させてもらいました。眼福でした、ごめん!」
「もう!さいてー!お、お兄ちゃんの...あほ」
奈々はそう言ってダッシュしていった。
「あんなタイミングで転けるからいけないと思う...でもちょっと嬉しい自分もいる...妹に萌えてしまったー!」
ああ...今年も奈々のあの魅力から、俺は耐えられるのだろうか...。ついに高校にあがるし...。どうしたものか...。
そして、初日の出。
「おお!感動だ」
「泉水様、素晴らしいですね」
「アンビリーバボー!すごすぎ!」
「綺麗だな~」
「今年はいいことありそうだ」
俺たちは、手を合わせて願い事をした。
俺はもちろん。
煩悩退散にゃー!煩悩退散にゃー!
煩悩退散にゃー!煩悩退散にゃー!
願いを籠めるたびに、さっきのおパンツの猫がにゃー!と、姿を現す!頼む!消えてくれー!
と、どうせできもしないことを祈るのであった。もう神頼みしか残ってないそ!頑張れ俺~!
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