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〜らぶ トモ〜 LOVE TOMORROW  作者: にのみやみのに
学園生活編
38/139

らぶトモ 第35話 【初めましてするよ】

急展開です

「さて、奈々の好きな海老マヨもできたし、帰ってくるのを待つだけだな」


 その日はヤケに寒く。突風も時折吹いていた1日だった。

 今日は泉水ちゃんの家に学校終わってから勉強するとのことで、帰りを待っていた。


 携帯が鳴る。


「もしもし、木村ですが」

「兄上か?」

「泉水ちゃんか。奈々がお邪魔してるよね」

「実は兄上にすぐに来て欲しいところがあるのだ。奈々が今ピンチな状況にいる報告なのだ」

「どういうこと?」

「今奈々は、ベッドの上で寝ておる」

「え?なにそれ?」

「兄上に・・・私は謝らないといけない。早急に来ていただきたいのだがよろしいか?」

「いくよ!奈々がどうしたの?それに謝るって?」

「話は来てからという事で。場所は」

「待ってメモる!うん・・・うん・・・町外れの・・・・わかったすぐいくよ!」


 俺は、両親に連絡をし、タクシーを呼んで泉水ちゃんが指定した場所へ向かった。

 この時のタクシーを待つ時間ほど、イラついたことはなかった。


 --タクシーが来て乗る--


「どちらまで?」

「町外れの・・・ここまで」

「はいよ」

「急いで!!!」


 いったい何の展開だよこれ! 奈々が、病院にいて、俺は病院に向かってて!

 ありきたりのドラマじゃあるまいし!こんなの現実な訳が無い!

 病院に着いたら「うそでした〜」ってたちの悪いいたずらだって、丸く収まるんだろ?

 なあ、そうだろ?!


 タクシーが病院に到着し、受付に怒鳴りつける俺。今思えば申し訳ないほど取り乱していた。

 

「木村大吾と言います!妹の奈々がこちらに運ばれたって!?」


 受付の人が場所を教えてくれ、走ってはいけない廊下を駆け上がる。


「はあ、はあ、泉水ちゃん!!」

「お待ちしておりました」

「奈々は無事なんですか?先生は?」

「あなたが木村さんの身内の方?」

「はい」


 奈々を担当して治療してくれた先生が現れた。

 先生は一言。【身内の方が一番落ち着かないといけません】と告げる。

 まずは会って説明します。という。


 ドアを開ける泉水ちゃん。表情はとても暗い。


「奈々!!」

「はい?」


 ドア閉める泉水ちゃん。その場で動かない。


「奈々大丈夫か?痛い所無いか? 心配したぞ」

「はい、あのその」

「奈々良かった〜〜、元気そうだ」

「すみません・・・どなたですか?」

「は?何言ってんだ?冗談はよせよ」

「あ・・・・その・・・」

「奈々?」

「ごめんなさい・・・わからないんです」

「え?わからないって」

「言葉の通りです」

「先生・・・」

「お兄さん、少しこちらによろしいか?」

「はい」


 俺は先生に連れられて、別室へ向かった。


「娘さんや。騒がせたな、許せよ」

「いいえお気になさらずに」

「私は、先ほどの男性と話がある故、1人にしてしまうがよいか?」

「はい、大丈夫です」

「そうか、すぐ戻る」


 ドアを静かに閉め、俺がいる別室に移動した。


「あの・・・木村さんの身内の方ですか?」

「あなたは?」

「彼女に助けていただいたこのコの親です」


 先生が別室に連れて来て来た理由は、この親子に会わせるためだった。


「このコを助けた、奈々が?」

「はい、なんとお礼を言って良いやら・・・。本当に有り難うございました。

 ですが、奈々さん・・・。記憶が無いと聞いて・・・。

 本当に申し訳ありません」


 泣きながら頭を下げる母親。

 俺はどんな顔をしてあげたらいいかわからない。


「あ、あの、頭を上げてもらえますか? そこまでされると、奈々も困ると思いますし・・・。

 僕もなんて言って良いやらわからないので。

 とにかくお子さんが無事で良かったですね」

「はい、そういっていただけると助かります。このお礼はまた後日・・・。失礼します」


 何かに気づき、奈々が助けた女の子が戻って来た。


「お兄ちゃん、これ」

「なんだい?」

「これ、大事な熊なの。お姉ちゃんにあげる」

「え、いいよ」

「早くお姉ちゃん元気なってほしいもん」


【お兄ちゃん】

 女の子が手渡してくれた熊。お兄ちゃんと笑顔で言う。なんと重なり・・・涙が・・・。


「奈々」

「お兄ちゃん?」

「あ、いや・・。わかった有り難くもらっとくよ」

「えへへ。じゃあね〜」

「じゃあね〜」


「兄上・・・」


 力なく俺を呼ぶ声。


「泉水ちゃん、奈々は?」

「断りを入れて兄上に話に来た。今は1人で病室にいる」

「そっか・・・」

「兄上・・・・申し訳ありませんでした」

「どうして謝るの?泉水ちゃんのせいじゃないじゃん」

「だって・・・だって・・・奈々を早く帰しておけば・・・。それよりも先に勉強なんて誘わないで、

 学校でやってれば・・・。こんな・・・こんなことにはならなかったかもしれない・・・う、うう」

「泉水ちゃんが悔やむことないよ。何も悪くない。誰も悪くない。だから泣き止んでよ」

「ふ・・・う・・・」


 なんとか鳴き声を抑えつつ。啜り泣く泉水ちゃん。

 俺は頭を撫でて、落ち着かせた。


 奈々がこんなことになるなんて・・・。俺に何ができるんだ?

 俺は奈々を助けることができるのか?


 情けない兄貴だ・・・。兄貴失格だ・・・。バカじゃないのか俺は?


 どんなに自分を蔑んでも、奈々の記憶が戻るわけがないのに・・・。


 そうでもしていなければ、落ち着かないのだ。自分を取り戻せないのだ。涙が出てくるのだ。


最後まで読んでくださってありがとうございます。


シビアな部分でした。書いてて、顔が怖くなっていました。



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