らぶトモ 第21話 【霧ヶ峰 生徒会長 登場】
大雨ですね。
今回から新展開です。
以前にも話したけど、俺と奈々が通っている学校は、街から丘を一つ隔てた場所にある。
中高一貫校なのでいつも一緒に登校している。
自然に囲まれた敷地は、学園長の趣味らしい。
周りからは変わり者と呼ばれている学園長は、その発想の奇抜さと大胆な行動力で、日本でも有数の資産家だ。
学園長は滅多に学校に来ない。入学式でさえ姿を見せない。
そういうわけでこの学校の新入生への挨拶は、生徒会長が行ってる。
「新一年生の皆さん。はじめまして。私は、生徒会長の霧ヶ峰霞です。
今後の学校生活が良きものに成るよう、早めに友人を作る事をお勧めします。
それでは、改めて、入学おめでとう」
「凛としててかっこいい」「ちょっとクールな感じがする」「美人だしポニーテールが似合ってていい感じ」
俺もはじめて霧ヶ峰先輩を見たときは、目を奪われた。
だけど、別に自分に関わるような人じゃないし、深く考えていなかった。
ある日の正門が閉まる数時間前。
俺は走っちゃいけない廊下を走っていた。
「くそ〜、なんで今日に限って課題のノートを忘れるんだ〜。あやうく未提出になるところだった。
正門が開いてる時間で助かった〜。この時間に来たのはじめてだから、校舎に人がいない・・・。
結構怖いかも・・・」
普段は下駄箱からすぐに教室に到着してしまう感覚だけど、
こう人がいない校舎の場合、ものすごく遠く感じる。
誰もいない教室・・・怖いかも・・・。怖がってないで早く取っちゃおう。
ノートノート。急いで机の中の引き出しを漁り・・・あった。良かった。
さて帰るか・・・。
ん?誰か廊下にいる。
教室から窓越しに人影が見える。
「ん?誰かいるぞ?」
こんな時間に学校に残ってるやつがいるのか?
俺はそっとドアを開けてその後ろ姿を目で追う。
そこには、滅多に姿を見たことがない人がいた。
「よろ・・・よろよろ〜」
「霧ヶ峰先輩だ。本当によろめきながら、口に出して言ってるし、
あんなにたくさんのプリント抱えて大変そうだな」
「あ、倒れる」
「あぶな〜い!!」
紙がばさばさバラまかれ、あたりは少し白い景色に変わった。
「う、いつつつつつ〜。頭打った〜」
「私は助かった」
飛び込んで助けた甲斐があったみたいだ。
「そうですか・・・霧ヶ峰先輩が無事ならOKです」
「確かにあのまま倒れてたら、私は頭から倒れていました。
それによって、脳震盪を起こしかねませんでした。
まあ、それは感謝しています・・・ですが・・・。
そろそろ、二つの胸の膨らみから手を離してくれませんか?」
「ええ?うわ〜、ごめんなさい!
助けた時とっさに体支えて、下に回り込むためにぐるっと腕をですね〜」
ベタすぎる!これはあまりにも安直すぎる展開!
「みなまで言わなくても結構です。今回は致し方ない状況でしたから。
まあそれはさておき、有り難うございました。
私はこの散らばったプリントを集めなければなりませんから、先にお帰りなさい」
やっぱり先輩怒ってるのよな。帰った方がいいのか?でもこのプリントを集めたら、
またよろよろ歩きながら運ぶ事になるし、でもあんなことしちゃったから、早くどっかに行ってほしいのかも
しれないし・・・
ううう、いいや怒られても!
「霧ヶ峰先輩っ俺も一緒に運びますよ!」
「木村くん・・・いいのよ、これくらい・・・」
そりゃ断られるよね。
「え、でも・・・」
うわ〜冷ややかな顔で、ツンとしてる・・・っていうかそれはいつもか・・・うう、こうなったら・・・。
「大丈夫です。こう見えて170cmある妹をおんぶしてやることだってありますから、
重たい荷物を運ぶのはお手の物です」
「あ・・・プリント・・・ひったくられました」
うう、霧ヶ峰先輩をこんなに近くで見るの初めてだ。すっごい美人だな。
「先輩これ、どこまで運ぶんです?」
「視聴覚準備室まで」
「旧校舎?また遠いな」
「これも仕事のうちだから」
「他の人に頼めばいいのに」
「これは私の仕事だから」
「あ、そうですか・・・」
あ〜、それにしてもいいにおいだな〜。長い黒髪をピンクのリボンでポニーテールにして、
今流行のフレームは、レンズの下半分だけで、細い楕円形の形が大きな瞳にマッチしてる。
色付きリップかな?唇はピンク色でつやつやしてる。
「なに?」
「あ、い、いえ別に・・・」
じっと見過ぎてた。
「もういいわ。いつまでも持ってなくていいわ。着いたから」
「へ?あ、はい・・・・あの先輩怒ってないの?」
「なにを怒るのかしら? まあいいわ。ここまでつき合わせてしまってごめんなさい」
「別に大丈夫です!この程度だったらいつでも呼んでください」
「それはできません。あなたは生徒会の生徒ではないのですから」
「霧ヶ峰先輩・・・」
「木村君・・ではこれで・・・」
霧ヶ峰先輩は、視聴覚準備室へ入って行った。
少し待って見たが、出てこなかったので、中で作業でもしているのだろう。
俺は諦めて帰ることにした。
この時俺は、霧ヶ峰先輩に木村くんと呼ばれたことに全然気づかないままだった。
「早く帰らないと奈々が待ってる」
「お兄ちゃ〜ん。お腹空いたよ〜〜〜!!」
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