らぶトモ 第13話 【作るよ】
一生懸命って言葉、好きです。
【 お兄ちゃん今日は、晩御飯の支度はしなくていいよ 】
俺は荷物を部屋に置いてリビングへ入った。
するとそこには、
「あ、お兄ちゃん、今日は奈々がお料理をします!席についてください」
え?奈々が料理?嘘だろ? カップラーメンだってお湯入れすぎて超薄い味にしちゃうのに?
調味料の分量を一度も守ったことがないのに?<俺の確認する限りだが>
それにしても、奈々のエプロン姿は久しぶりだ。おままごとをしているときに見たぐらいで、
あまり印象に残っていない。
エプロンはシンプルなエプロンだ。これと言って特徴はない。しかしなんなんだろうね。
人間の目っていうのは、見えてない部分があると変に脳内変換して補正する。
エプロンの裾から覗く膝。その上のエプロンを外した胴体は、ものすごく放送事故してしまう状態なので
はないだろうかと、勝手に思ってしまう。←もう兄としてダメじゃないですかね?
男子は想像していただきたい。ビキニを着ているお胸に横線を入れて水着の色を消してくださいませ。
女子は・・・。しなくていいです。キモいもんね。
「お兄ちゃんその顔、頭の中で奈々のことを意地悪い言ってるでしょ?む〜」
「あ、いやいやそんなことないぞ」
あぶない!お兄ちゃんとして、いけないことを考えてしまった。猛省します。
それと意地悪は言っていない、あくまでも過去の事実を振り返っただけだ。←もう言い訳にもならない。
「こほん。 とにかく今日はお兄ちゃんに奈々の料理を食べて欲しいの、いい?」
「ああ、わかった楽しみにしてるよ」
「奈々頑張るよ」
ものすごく心配だ。しかしどういう風の吹きまわしだろうか。この前遊びに行ったことといい、
今回の料理といい、何かあるんだろうか。 もしかしてこれが女子の第二次成長期の一部なのだろうか。
こういう時だけは、早く家に親が帰ってくることを望むな・・・。
奈々の後ろ姿はぎこちない。
その後ろ姿を見てたら・・・。頭の中で、《ポワンポワン》と煙が立ち込めてきて、奈々の姿が、
メイドに変わった!さっき買ってきたメイド服を奈々が着ている・・・。奈々が着てるんですよ。
大事だから二回言いましたよ。
まじで似合うだろうな・・・【お帰りなさいませ、ご主人様】う、わ〜〜、やばいやばいやばい〜〜!!
「あの〜お兄ちゃん?」
「ん?ん?」
「もうお兄ちゃん!じっと見すぎ!やり難いよ〜」
ものすごくぷくっと頬を膨らませた奈々が怒っていた。全然怖くないけど。
「ああ、悪い。じゃあ、テレビでも見てるよ。できたら呼んでくれ」
「オッケー。期待しててね」
ものすごくドヤってる顔・・・。自信はあるんだな。でも料理はいきなりやってできものじゃないぞ。
ある程度はできるかもしれないが、《ガチャん》献立によっては、炒める煮る切るなど、《うわあああ》
同時進行にしないといけないのもあるのだ。《これでいいのかな?ま、いっか》
・・・・・(汗)
ま、まあ奈々のことだから、《えっと、これ皮むくのかな?剥かなくていいかな?》
一品一品を時間かけて作りそうだ。《ふああああ!》
「痛!!」
「奈々、大丈夫か!」
「お兄ちゃ〜ん・・・」
漫画的に【ピュ〜〜〜】と指から血が出てるし!
「ほら、これでよし」
「ありがとうお兄ちゃん。えへへ失敗しちゃった」
顔を赤くしながらぺろっと舌を出して恥ずかしがる奈々。
あ〜も〜、どこのギャルゲーだよ!自然にこの仕草するとか、けしからんぞ!
あれ?なんだこの指・・・。いくつも絆創膏・・・。
「奈々お前・・・」
「あ、えへへ気にしないで。さて続きしなきゃ」
指を隠しながら、恥ずかしそうに料理を再開する奈々。
そうか・・・。
今日は友達の家に行くって言ってたのはこのことだったのか。
奈々お前は本当に・・・。
その後も《ふええ》《なんでなの?》《吹きこぼれた〜》など、
台所が戦場のごとく、音を立てていたが、2時間後にようやく完成に至った。
出てきた料理は、ハンバーグだった。
あれ?だいぶ煮込んだり、野菜を切る音をさせていただのだけど・・・。奈々の後ろの台所に目をやる。
【チラリ】
「お兄ちゃん!今は見ないの!!デリカシー無いよ〜!!」
「はいすみません」
奈々からデリカシーが無いって言われて、ものすごくショックを受けた。
デリカシー無いお兄ちゃん・・・。名誉挽回をしなければ!!世のなかの素敵なお兄ちゃんたち!ごめんなさい!
俺、頑張ります!
「じゃあお兄ちゃん。どうぞ召し上がってください」
「お、おう・・・。い、いただきます」
箸を持ち、箸先をハンバーグに着ける。
見た目はまともなハンバーグだ。しかし、付け合せの人参が、イフリートから炎を浴びさせられた状態だ。
「ゴクリ」
心の中は、ホウジロザメが、静かに獲物に近づくときのBGMだ。
サクッとハンバーグを切る。あれ?ちゃんと焼けれるじゃないか。これは思った以上に期待できそう。
はむ・・・もぐもぐ、ごっくん。
「どうかな・・・」
心配そうにこちらをうかがう奈々。
「う、ううう!うううううううう!」
「お、お兄ちゃん!大丈夫?お兄ちゃん!ごめんね、奈々が美味しくないの作ったから!
お兄ちゃん吐き出して!今回ばかりは出しちゃっても、全国の人は怒ったりしないよ!」
「嘘だよ〜!」
「えええええ!!?」
ぽんと、奈々の頭に手を乗せて
「奈々、旨いぞ」
「う、うわあああああああああああああん!!」
「な、奈々ごめんごめんごめん!!」
やばい、やり過ぎた、マジ泣きさせてしまった!!
「奈々この通り、許してくれ!ごめんよ、もうしないから!」
「ヒック、ヒック・・・。お兄ちゃんのバカ〜〜〜、本当に心配したのに〜〜〜!!」
「奈々〜。もう泣かないでくれよ〜!あ、そうだ、なんでも1ついうこと聞くから!な!頼むよ!」
「本当になんでも?」
お、食いついた。泣き止みそうだぞ。
「おうなんでもだ」
「なんか軽いんだけど・・・なんでも言うこと聞くって今のお兄ちゃんから聞くと〜」
「あ、まだ怒ってるよね、本当にごめんって! それと、ハンバーグありがとな。
その指見て、一生懸命奈々がやってたこと思うと、嬉しいよ。最高のサプライズだ。
自慢の妹だなお前は」
「お、お兄ちゃん・・・。そう言ってくれるなら、許してあげる。もうあーいう嘘はしないでね」
「ああ、約束だ」
「はい、じゃあ」
「指切りか」
「そ、針1000本飲ますよ」
「こりゃだいぶハードル高いお願いが待ってそうだな」
その言葉の後、2人で、笑った。幼い頃に無邪気に笑っていたように。
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