第75話(最終回):世界で一番騒がしくて甘い包囲網。……殿下、生涯を賭けて私を溺愛監禁するのは、最高の職権乱用(プロポーズ)です!
「状況把握、開始。時刻は午後七時。我が家の超小型新兵(我が子)が誕生してから、ちょうど一年。私は今、王宮の歴史上、最も贅を尽くした『一歳大生誕祭』の主賓席に座っているのだけれど。……私の目の前では、国王夫妻から第一騎士団までが揃って涙のスクワットを執行し、隣にいる夫は私の手を骨が軋むほどの力強さで握りしめている。状況、私のものぐさスローライフへの戦線は、完全かつ永久に敗北(降伏)した模様ね」
あの日、お腹の中から「出撃」してきた我が子も、ついに一歳の誕生日を迎えた。
今では「ママ」「パパ」と最高に愛らしい音声信号を連発し、王宮の廊下をミリタリースペック(縦横無尽)な速度でハイハイ進軍する、最強のチートスペック幼児へと成長している。
今日の生後一年の大生誕祭に際し、ルファード殿下は「我が国の未来の太陽の誕生祭だ!」と叫び、世界中の珍しいおもちゃ(財宝)を買い占めてプレゼントするという、親バカのフルインフレを発動していた。
「見てくれ、アルティナ。我が子が今、一升餅を背負って見事な直立不動をキープしたぞ! なんという強靭な肉体だ! ああ、愛おしすぎて俺の脳内戦術マップが幸福感だけでオーバーフローしてしまう……っ!」
「で、殿下! 一歳児の誕生日を、英雄の凱旋パレードみたいにフルスペックで演出するのを停止してください! ほら、主役の我が子がおもちゃの山に strategic 埋もれて困惑しています……っ!」
殿下はフッと、あの出会った頃のような、けれど120%の熱量を孕んだ極上の笑みを浮かべた。
そして、我が子をお世話ロボと化したキリアン団長へと一時的にパージ(お預け)すると、ごく自然な手つきで私の腰をホールド(ハグ)。そのまま王宮のバルコニーへと私を連れ出し、二人きりの至近距離で、宝石のような紫の瞳を熱く細めた。
「アルティナ。この一年、お前と一緒に育児という名の最高の共同戦線を張れて、俺は世界一幸せな男だよ。……だが、俺の独占欲の防衛ラインは、まだまだお前への愛を注ぎ足りないとアラートを鳴らし続けているんだ」
耳元で囁かれる、低く掠れた甘い声。
殿下は私の華奢な身体を壊れ物を扱うように 強く、激しく、この世の何よりも愛おしそうに抱きしめ、唇に、息が絶えるほどの濃厚な生涯契約(口づけ)を落としてきた。
「ん、む……っ!? お、おのれ肉食獣上司……っ! 誕生日のドサクサに紛れて、バルコニーでまで私をベッド監禁(朝までコース)へ誘う戦略的ハメ手を仕掛けるのをやめなさいーーー!?」
「バカ言え、誘ってなんかいないさ。これは確定ルートの執行(宣戦布告)だよ。アルティナ、お前が静かに引きこもりたいと願うなら、俺の腕の中(ベッドの上)だけでサボっていればいい。お前たちの平穏と幸福は、俺が一生をかけて、国家権力とこの命のすべてをフル稼働させて防衛(溺愛)し続けるからね」
(……ああ、状況把握。この男、パパになっても、私の精神的防衛基準をミリ単位で溶かし尽くす、世界最強の肉食獣上司のままだわ)
夜空に、我が子の誕生日を祝う特大の祝砲(花火)がインフレ気味に打ち上がる。
大広間からは、キリアンら第一騎士団が「御子の一歳をお祝いして、総員スクワット千回ーーーッ!」と血の涙を流して咆哮する声が響いてくる。
世界一騒がしくて、世界一過保護で、世界一愛に満ち溢れた、私の新しい戦場。
(おのれ肉食獣上司、そして私を愛してくれる最高の家族(包囲網)たち……! こんなに激しくて甘い総攻撃を毎日喰らわされたら、私の自衛官精神なんて、一秒だって保たずに全面降伏になっちゃうじゃないのよーーー!?)
私は嬉しさと気恥ずかしさのレッドゾーン(限界突破)で顔を真っ赤に染めながら、愛する夫の逞しい胸に身を委ね、これから先も一生、この最高の溺愛包囲網の中で、甘く激しく守られ続けていく未来を、最高の笑顔で受け入れるのだった。
(元自衛官令嬢アルティナの引きこもり戦線・これにて大団円(完全降伏)!)
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本作はこれにて完結致しました。
他にも短編や長編の『ハッピーエンド』で終わる作品を投稿しております。
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