第46話:新章突入。……殿下の側近の騎士様、私を睨むその目は、完全な敵前不敬(毛嫌い)ですよね?
「……ふぅ。状況把握、開始。時刻は午前十時。新婚十三日目の午前。私は今、王宮の軍事演習場を見下ろす特等席(サボり椅子)に座り、お茶を飲んでいる。……のだけれど、私の背後に立つ人物から放たれる殺気(鋭い視線)のせいで、お茶の味が全くしない。状況、極めて不快な包囲網ね」
新婚生活二週目。連日のベッドの上での過酷な居残り残業(溺愛)から逃れるため、私は「殿下の公務(訓練視察)への同行」という名目で、合法的な戦略的脱走(お出かけ)を敢行していた。
しかし、そんな私の前に、新たな「敵」が立ち塞がった。
「――アルティナ皇太子妃殿下。ここが神聖な第一騎士団の演習場だとご理解されているのですか? 皇太子妃という立場でありながら、お菓子を片手に訓練を見下ろすなど、前線の騎士たちへの侮辱も甚だしい」
冷徹で、一切の感情を排した声。
振り返るとそこには、我が夫・ルファード殿下の右腕であり、若くして第一騎士団長を務める青年――キリアンが立っていた。
端正な顔立ちを不機嫌そうに歪め、宝石のような灰色の瞳で、私をこれ以上ないほど「毛嫌い」した目で睨みつけている。
頭が良すぎる私は、彼が私のことを「実家(侯爵家)の権力を使って殿下をたぶらかし、週休六日を公言して引きこもる、我が国のガン(無能な軟弱令嬢)」だと徹底的に見下していることを秒で看破した。
「状況把握、完了しました、キリアン団長。ですが、私がここに居座るコストと、殿下が激務で倒れるリスクを天秤にかけた結果、この『同行』は殿下の精神安定(国益)に深く貢献しています。規律違反ではありません」
「言い訳を! 殿下は優しすぎる。あなたのような軟弱な令嬢が、戦場を生き抜いてきた殿下の隣に立つなど、片腹痛い。私は認めませんよ、あなたのような『お飾り王妃(※皇太子妃)』など――」
キリアンがなおも私を冷酷に糾弾しようとした、その時。
――ズガァァァン!! と、演習場の地下から、大地を揺るがす凄まじい爆発音が響き渡った。
(……っ!? 状況把握! 爆発の規模、TNT換算で中規模以上。発生源は、演習場直下の『禁忌の魔導兵器保管庫』。不審な魔力の暴走を検知――!)
私のカンストした自衛官レーダーが、一瞬で「最高レベルの非常事態」を告げてアラートを鳴り響かせる。
黒煙が立ち込め、訓練中だった近衛兵たちが大パニックを起こす中、キリアンは「殿下の防衛線が……っ!」と顔を青ざめさせ、即座に抜剣して煙の中へと飛び込もうとした。しかし、その足元――大理石の床に、爆発の余波で巨大な亀裂(崩落ルート)が走り、彼の身体が宙に浮いた。
「なっ、床が――がはっ!?」
地下の奈落へと真っ逆さまに落ちていくキリアン。
いつもなら「状況把握。私の管轄外ね」と見捨ててサボるところだが、天才皇太子(夫)の右腕をここで失うのは、今後の我が国の防衛ロジスティクス(戦力)にとってあまりにも大損失だ。
「ハァ……状況把握。本日これより、予定外の『緊急救助任務(残業)』を執行するわ!」
私はドレスの裾をバッと引き裂いて戦略的パージ(動きやすさ重視)。
悲鳴を上げて落下していくキリアンの後を追うように、私は迷わず、黒煙が渦巻く暗黒の奈落へと最大戦速で飛び降りた。




