表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/112

第五十七章『崩壊』

偽神の絶叫が、

世界を揺らした。


白い空間へ、

亀裂が走る。


無数の目が悲鳴のように瞬き、

黒い肉塊が崩れ始めた。


ローブの人物が初めて叫ぶ。


『やめろ!!』


怒り。


焦り。


狂気。


今までの余裕が、

完全に消えていた。


少女の胸から解き放たれた光は、

周囲へ広がっていく。


すると。


苦しんでいた魂たちが、

少しずつ静かになっていった。


『……あ……』


『いたく……ない……』


泣き声が消えていく。


ガブリエラの瞳から、

涙が零れた。


やっと。


苦しみから解放される。


ローブの人物は、

狂ったように手を伸ばした。


『返せ!!』


『その子は私の神だ!!』


ガブリエラは少女を抱き寄せる。


「違う」


銀黒の瞳が真っ直ぐ向く。


「この子は、

誰のものでもない」


その瞬間。


ローブの人物の空気が変わった。


怒りで歪む。


黒い霧が噴き出し、

巨大な人影へ変貌していく。


ローブが裂けた。


現れたのは。


痩せ細った男だった。


長い白髪。


異様に落ち窪んだ目。


そして。


金色の瞳。


ガブリエラは息を呑む。


男は笑っていた。


壊れたように。


『あと少しだった』


『あと少しで、

完璧な神が生まれたのに』


ノクスが舌打ちする。


「完全に狂ってやがる」


男はガブリエラを睨みつけた。


『お前のせいだ』


その声には、

憎悪が滲んでいた。


『神を殺したせいで、

世界はまた壊れる』


『だから私は必要だったんだ!!』


絶叫。


空間が激しく揺れる。


レオンハルトが前へ出る。


「違う」


男が睨む。


レオンハルトは静かに続けた。


「お前は、

自分の苦しみを世界へ押し付けただけだ」


男の表情が止まる。


蒼い瞳が真っ直ぐ向く。


「救いたかったんじゃない」


「怖かったんだろ」


その瞬間。


男の顔が歪んだ。


図星だった。


ガブリエラは気づく。


この男もまた、

“神が必要だった”側の人間なのだ。


苦しみ。


絶望。


失いたくないもの。


きっと何かがあった。


でも。


だからって、

誰かを犠牲にしていい理由にはならない。


男は震える声で呟く。


『神がいなければ……

皆死ぬんだ』


その瞳には、

狂気だけじゃない。


怯えもあった。


ガブリエラは静かに言う。


「それでも、

人は生きていける」


男が目を見開く。


ガブリエラは続けた。


「苦しくても」


「間違えても」


「誰かと一緒なら、

前に進ける」


ノクスとレオンハルトを見る。


二人とも、

何も言わず隣に立っていた。


ガブリエラは小さく笑う。


「私は、

そうやって救われたから」


少女も、

震えながら男を見る。


そして。


小さな声で言った。


『もう……

終わりにしよう……?』


その瞬間。


男の瞳が揺れた。


崩壊する空間。


消えていく魂。


そして。


少女の涙。


男はゆっくり、

膝をついた。


『……私は……』


言葉が続かない。


その身体が、

少しずつ崩れ始める。


偽神との繋がりが切れたのだ。


男は最後に、

ガブリエラを見た。


その瞳から、

初めて狂気が消えていた。


『……すま……な……』


言い終わる前に。


男の身体は、

静かに光へ変わって消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ