15 世界
「もしよければ、秘密基地に連れていってくれないだろうか」
私が絶対に言わないであろう台詞、そして私が絶対に言うであろう台詞。私は私であって私ではないのだから。
「みんなには秘密だよ?」
「ああ、わかっている」
非効率の中に、私にはなくて私が持っているはずの何かがあったのかと思ったから。私が本当の私になることは叶わないのだろう。だって私という存在は無駄でしか無いのだから。
こんなところに森があったのか。もう少し都会というイメージがあったが、これは改めなければなるまい。
マイナスイオンがどうとか聞いたことはあるが、その真偽はどうなっているのだろうか。実際、どちらでも私的にはかまわないのであるが。
「なぜ、私はこんな非効率なことをしているのだろう。わからない、理解が追い付かない」
「……それは、お姉さんが」
言いかけた言葉は最後まで全て紡がれることはなく、頭の中に仕舞いこまれてしまったようだ。考えるのが苦手な私からすれば、それは地獄でしかない。
「……やっぱり、なんでもない」
なら、言わないでくれ。私には人間がわからない。人間が考える全てがわからないのだから。
それは単なる思考停止なのだろう。意味も、価値すらも無い行為なのだろう。どうでもいい。もう、どうにでもなってしまえ。そうして、世界ごと滅びてしまえ。
私が否定したのは、自己ではなく他者。人間という種そのもの。高度な思考回路を持つ生命体全て。
だから無関心という態度を貫き続ける。私は、私であってはならないとこんな私でさえも理解することは出来るのだから。こんな私がいたら、彼女は彼女では無くなってしまうのだから。
嫌だ。こんな考えしかさせてくれない世界に嫌気がさしてくる。本来の私はこんなものでは無かったはずなのに。
本来の私って一体誰なんだ。それを探すのは非効率なのではないか。非効率、私が嫌いな言葉の一つ。人間は非効率だ、だから私は人間が嫌いだ。
本当にそうなのか。その理屈だと私は私のことを嫌っていることになる。だが、私は私が嫌いではない。むしろ関心すらも持てない。
好きの対義語は何かというどうでもいい問いが頭をよぎる。あれの正解は、嫌いではなく無関心だったような気がする。
つまり、私は私のことを嫌っているどころかそもそも見ていないということになる。無駄を省いた結果がこれだ。笑いを通り越して哀れみさえ覚える。
哀れみ、哀れみって何だ。私にそんなシステムは存在しない。してはならないのに。
とうとう壊れてしまったのか。毒されてしまったのか、人間に。無駄の塊でしかない生命体の一つに、私はならなければいけないのか。
嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。体から溢れ出す嫌悪感。そうか、私は私が嫌いなのだろう。いや。嫌いの次のステージにいるのだろう。
滅びてしまえ、私ごと。滅びてしまえ、この世界ごと。そうすれば私が嫌いな無駄という概念は綺麗さっぱり消えるのだろう。最高だ。
最高で最良で、最善の選択なのだろう、それは。最高に自己中心的で誰にも文句を言われない最強の手段。
さて、そうなった場合、私はどうなるのでしょうか?




