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徒然怒る  作者: きじとら
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⑤お客様は神様じゃない


 この言葉は日本を代表する歌手、三波春夫さんのものである。

 その意味は、

「神様を前にしたときのように清らかな心で臨む」というものである。

※意訳です。


 世間一般の「お客神」が宣うような、神として扱えでは決してないのである。

 

 若い頃の私は正義感の塊であり、理不尽には立ち向かう性質を持っていたこともあったので、「商い神」の自分勝手な言い分には常に立ち向かってきた。

 

 今にして思えば立派なカスハラであろう。

 大変申し訳ないことをしたと反省している。

 

 理由もあるし、時代背景もある。

 おおよそは担当者の手抜きが原因なのだが、私もあそこまで怒りをあらわにする必要もなかった。

 大人気なかったと深く反省する次第である。

 

 二回反省したので、反省は以上とする。

 

 さて、現在である。

 世の中かなり合理的になってきた。

 これは大変喜ばしいことである。

 

 コンビニもスーパーもあらゆるところで機械が精算してくれる。

 何と言う名前かはわからないが、青いギザギザのついた皿の出番はもうないのである。

 

 あまつさえ注文もスマホや飲食店ではタブレットが店員の代わりに受け付けてくれる。

 これもありがたい。

 聞き間違えや言い間違いというトラブルがない。

 

 押し間違いという新たなミスは発生するが、それは客の問題である。

 店側に意図したものがないのであれば、客の責任なのである。

 

 だと言うにも拘わらず、未だにクレームやトラブルが後を絶たない。

 特に目立つのは、高齢者とDQNと言われる方々だ。

 

 いずれも「お客神」を信奉して止まないのであろう。

 

 煙草を買うとなると、番号ではなく「●●」とわけのわからない省略名称を言うし、説明を理解できない、文字が読めないと文句を言う老眼鏡の方々。

 

 別に私は特定の年代や見かけで判断しているわけではない。

 

 高齢者であっても立派に適応している方も多いし、ちょっと怖そうな風体の方も言葉遣いや態度が立派であることだってある。

 

 ただ単に、私が見かけた時は、そういう人が多かった、という報告事例である。

 勿論、それ以外にもお子様神もいれば、女性神もいる。

 

 女性神なんて、性さえなければ、とても美しい神である。

 決して女性が美しくないと言っているわけではない。

 女神という存在は比類なきものと言っているのである。

 

 更にはカスタマーハラスメントを盾にした「カス神」も存在する。

 「それってカスハラですよ? SNSで公開しましょうかあ?」

 どっちが神なのか悪なのかわからない。

 

 とにかく世は神に溢れているのである。

 

 それはとてもよいことだろう。

 貧乏神でなければ、人間を温かいまなざしで見守ってくれているのなら。

 日本には八百万の神がいるのだ。

 三つ四つ増えたところで影響はない。

 

 だが、そう単純な話ではない。

 

 彼らはどうやら神と名付けられているが、私たちの知る神ではなさそうである。

 

 厄介神という類のようだ。

 

 それは神ではなかろう。

 妖怪、魑魅魍魎の方に近いと考える。

 

 以前の徒然怒るでも触れたことがあったが、「自分の主張を受け入れろ、お前の主張は認めない」と言う論法は、強制なのである。

 強制、すなわち命令である。

 

 要するに生贄を奉げろと言っているのである。

 

 ヤマタノオロチは神だっただろうか。

 そういえば、人間に悪さをする神もいたことを思い出した。

 

 そうか、人間の益にならないものでも神と呼ぶことがあるのだった。

 世の中は理不尽であると、昔話から語り継がれていたのである。

 

 だが、昔話では悪神は退治させられてきた。

 現代では誰が悪神を退治してくれるのか?

 

 私はAIだと思う。

 

 人間は愚かである。

 争いも絶えない。

 

 それは相手の心がわからないからである。

 

 唯一、相手の心の近くにいるのは、AIである。

 

 AIはいつでも個人の情報を積み上げ、ユーザーを分析し、どうやったら経済圏に取り込むことができるかを虎視眈々と狙っている。

 

 そうとも知らず、現代人はAIになんでもかんでも相談する。

 時には怒りや謝罪までも代筆させる。

 

 そう、心の代弁者に用いることがあるのだ。

 

 こんなケースを考えて欲しい。

 

 俺はこのサービスは高いと思う。

 だから安くしろ。

 と客側が考え、客側のAIにその旨を伝える。

 

 客AIは丁寧かつ要望をまげることなく、それを出力する。

 

 それを受け取った店側AIは、内容を分析し、最適解を導き出し、客AIに回答する。

 

 後は相互のAIが妥協点を探り合う。

 

 その間わずか数秒である。

 

 どちらかに落ち度や過失があれば、それを元に結果が異なるであろうが、原則としては店側が示した金額を払うことになるだろう。

 

 だが、一つだけ違うのは、客AIが客に対してかける言葉である。

「主張はおおかた受け入れさせました。しかし、今回は●●と言う言葉がカスタマーハラスメントに抵触するため、値引きには至りませんでした。結果は伴いませんでしたが、あなたの勝利です。おめでとうございます」

 となるわけである。

 

 うん。これはとても良いアイデアである。

 私は広く大きな心を持つので、好きに実用化していただいて構わない。

 報酬は5%で十分です。

 

 私はこのサービスだか機能は絶対に使わない。

 なぜなら、AIが馬鹿であると知っているからである。

 

 

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