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第7話

 冒険者ギルド、王都ソルテーラ本部、教官室。


「今年の新人は………っは!!もう辞めたのかよ」


 その一室の中では嘲笑の声が響いていた。外では同僚たちが不気味がっているのがわかる。「なにが壊れた」だ失礼なやつらめ。


 冒険者ギルド所属、訓練教官ライト。彼の手には24枚の退学届がまるで手札のように揃っていた。それをポイっとゴミ箱に放り込み、机に足をかけ、真新しい椅子に浅く腰掛けて額にあるアイマスクを下げる。昼寝の体勢が整った。無論、彼の仕事は昼寝ではない。だが、やるべき仕事が存在しないのだ。なら探せ?それこそバカのやることだ。

 そう、今の彼に仕事はない。ライトの仕事は新人の冒険者のしごき。迷宮、依頼、その他諸々で死なないようにする為の訓練。なのだが、昨日の訓練でとうとう24人全員が退学を決めたのだ。いや、決めさせたというべきか。兎も角、今日の朝に訓練場に誰もいなかったのは気分が良かった。


 しかし、悲しいかな。この訓練場の生徒は増え続けている。理由は至って単純、ここが王都ソルテーラだから。魔石の買取価格がほかのどの都市よりも高く、成り上がり、出世に最適な地だからだ。つまり、見習い冒険者も多いというわけで。ライトの仕事は無くなることは滅多にないはずだった。しかしその実、ライトのこのサボりは頻繁に発生している。それは単に彼の訓練が関係している。


 訓練を受けた見習いAさんの証言

「あんなの人がやるものじゃない。いったい誰ならあのLBCライト・ブートキャンプを耐えら

れるというの!?ウワーーーー!!!!」


 訓練を受けた見習いGさんの証言

「あれは誰でも強くなります。でも、誰もあれで強くなろうなんて思いません。むしろ、あれで強くなったら負けかなって思います」


 訓練を受けた見習いBさんの証言

「あ、あんなの訓練なんて、い、言えないですよ。も、もももしもシルちゃんがあれをさ、させられるっていうなら、ぼ、僕が守ってあげないと」

「ちなみにどれだけ続きましたか?」

「3日だみっかーーーうわーーーーーー」


 とまあ、こんな感じで彼の訓練は厳しすぎるのだ。おそらく、全部こなせば銅級ブロンズでも、トップクラスに、銀級シルバーの最底辺くらいには。ちなみに彼の訓練は最後まで突破できたものはいない。通称、地獄への片道切符だと言われている。


 ようやく、眠りにつきそうになってきたところで、教官室の扉が開く音がした。ライトはアイマスクを上げると不機嫌そうに入ってきた女を見る。そこには同僚が立っていた。


「今は真っ昼間よ、ライト。もう少しないの?」

「んあ、グレイか。なんだよ説教か?言っておくが俺はサボってるわけじゃない。仕事がないだけだ」

「なら、他の仕事を探すとかさぁ」


 受付嬢のグレイがやってきた。受付嬢なだけあり美人だが、ライトは彼女のことが嫌いだ。理由は仕事を持ってくるから。グレイは受付のトップを担っており、他の受付嬢はライトを嫌っているのでグレイがまとめて持ってくるのだ。


「俺の生徒どもはもういなくなったはずだぞ。よってこの時間はお昼寝だ。Q.E.D.」

「その時間は終わったわ。はい、新しい生徒たちの参加希望。働きなさいライト。Q.E.D.」

「ッチ!!!!!」

「その溢れ出る不安を舌打ち一つにこめるの辞めて。唾がとんで汚い。それにそのお前が全部悪いみたいな目もやめて。私だって仕事なのよ」


 いつもやってるやり取りだった。


「っていうか、どうせ辞めるんだからいいじゃねーか。ほっとけよ。適当に迷宮で痛い目みて相応になるだろ」

「その初見の痛い目でほとんどが死ぬのがこの世界の現実なの。そしてそうなってしまうと都市にとっても痛手なの」


「それじゃ明日に来るはずだから。お願いね」と言いながら、グレイは去っていった。


「はあーーー、めんどくせまじせかいしねもうひとなんてほろんじまえ」


 ライトはそう文句垂れながら訓練に使用する道具を取りに行った。



 ライトとグレイがやり取りをする数時間前。ユーリとシルはあのあと別室へと通されてギルド所属のグレイから指導を受けていた。


「それじゃ次はモンスターと冒険者のランクについてね」

「ああ」

「ええ」


 ギルド所属受付嬢グレイによると、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

モンスターのランク

上からSABCDEFG


Sランク 金級複数人で挑むレベル。それでも討伐は保証されない。迷宮の階層主とか。歴戦の魔物とかが該当する。

Aランク  金級が1人で討伐できるレベル

Bランク  銀級が複数人で挑むレベル。

C ランク 銀級が1人で討伐できるレベル

D ランク 銅級が複数人で討伐できるレベル

E ランク 銅級が1人で討伐できるレベル

F ランク 鉄級が複数人で討伐できるレベル

G ランク 鉄級が1人で討伐できるレベル


冒険者のランク

うえから金、銀、銅、鉄、石。それぞれ、身体能力レベルと、活動実績で決められる。

金級ゴールド レベルⅩからⅧ

銀級シルバー レベルⅦからⅥ

銅級ブロンズ レベルⅤからⅣ

鉄級メタル レベルⅢからⅡ

石級ストーン レベルⅠ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 とのことだった。


「つまり、俺たちは石級か」

「うん、そういうことね」

「なるほど。ランクを上げるには身体能力レベルを上げて、活動実績を稼げばいいのですね」

「うん、そういうことね」


 グレイは若干感動していた。少年少女たちの素直さにである。無論、冒険者はろくに教養もないバカばかりだ。だって教養がある人は別の仕事を選ぶ。そのバカどもは口を開けば簡単な出世の方法だの、ご飯に行きませんかだの、ワンナイトどう?だの。うるさくてしょうがない。一定の教養を持っている人も一癖も二癖もある人種の方が多い。普段接するのがバカとひねくればかりだったグレイは素直に話を聞き、時には質問をしてくる姿勢に浄化されつつあった。


「時に先生。質問いいだろうか」

「ええ、どうぞ?」

「身体能力レベルはどうすれば上がる?魔物を倒せばいいのか?」

「んーー、その辺は私冒険者じゃないからよくわからないのよね。でも、身体能力は魔物を倒し、魔力を取り込めば上がるとされているわ。どれだけ倒せばどれほどというのは、ごめんなさい。わからないわ」

「謝らないでください。私たちもその辺は分かっていないので」


 説明することも無くなってきたときに、グレイはああと思い出したくないことを思い出した。そう、LBTである。通称地獄への片道切符なのだが、冒険者の試験を突破した者には必ず勧めなければいけないライト(あくま)の行事だ。グレイは少年少女たちに申し訳ないと思いながらも懐から紙を取り出した。


「ところで、新人にはこれを必ず薦めることになってるの。どう?」

「なんだ………ギルド実施の新人教育?」

「費用タダ。宿代もギルドに泊まってOK。と書いてありますよ?ユーリ様」


 そこに書かれていたのは、『迷宮や依頼での立ち回りを教えます!!お金取らない。宿代もギルドに泊まればかからない。日にかかる出費は食費だけ』という謳い文句だった。


「なんともお得だな。裏を疑わざるを得ないが………まあ、あの小迷宮での立ち回りは危険同然だったからな。教えてくれるというならありがたい他ない」

「そうでございますね。どうします?」

「シルはどうしたい?」

「受けるべきだと思います」

「なら、受けるか。明日でいいか?」

「はい。問題ありません」


 グレイは気持ちが沈んだ。罪悪感で。でも仕事だからしょうがないよね。ごめん。私も抗えないのと静かに地獄に踏み出そうとしている2人を眺める。


 こうして、ユーリとシルの地獄への片道切符は切られたのだった。


 ひとまずグレイは2人の肩に手を置いて一言。


「頑張って。あれも殺さないとは思うから」

「え、まってめっちゃ怖い」


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