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声劇台本置き場  作者: 如月ふたば


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23/23

我、君ヲ想フ/二人用(男女比1:1)ラブコメ風

清水(しみず):女性

係長:男性

台本置き場、ボイストランドへも掲載

清水:ちょっと、飲み過ぎちゃったみたいだから風に当たってくるね

清水:(N)そう言って私は、課の飲み会を抜け出した。ふと空を見上げると、綺麗な細い月が夜を照らしていた

係長:月が綺麗ですね

清水:あ、係長

係長:「あ、係長」じゃなくない?

清水:係長は係長ですよね

係長:じゃなくてさ、せっかくお洒落な感じに話しかけたのに

清水:あー、月が綺麗ですねって

係長:そうだよ

清水:昨日、雨で空が掃除されたんでしょうね。今日の月はいつもより輝いてる気がする

係長:あー、そうですか

清水:もしかして、漱石が言ったという逸話の方ですか

係長:そうだよ。英語の教師の時に「I love you」の訳を「我、君ヲ愛ス」と答えた生徒に「日本人なら『月が綺麗ですね』とでも答えなさい」ってやつ

清水:あぁ、それって当時だから成立する話ですよね

係長:当時って事は明治とか大正とか?っていうか、漱石いつ死んだの?

清水:知らないけど、明治くらいに生きた人じゃないですか。そんなことより、私の話の続き聞いて下さいよ

係長:あ、はい。お話邪魔して、すいません

清水:本当ですよ。それでね、その位の時代だと、電話も無い。って事は、「月が綺麗ですね」って伝えられるって事は一緒に眺めていた。という事だと思うんです

係長:確かに、そうかもね。それ前から思ってたの

清水:そうですね。前からそんな風に考えてました。でも、話す機会無かったし。この説、係長が初めて聞けるんですよ。喜んでください

係長:ウン、ヤッター

清水:心無い言い方ですね。

係長:仕方ないよね。俺、漱石なんて学校で習った『こころ』しか読んだことないもん

清水:そう来たか―

係長:そう来たよ。で、清水さんは漱石読んだことあるの

清水:私も『こころ』だけです。しかも授業で習う所って。確か、主人公と友人と三角関係のもつれで、友人が自殺するあたりでしたよね

係長:そうそう。俺その襖に血が飛び散ってる感じ、本気で想像しちゃって怖かったー

清水:授業中に何考えてるんですか

係長:汚れた襖の事?

清水:ふふふっ

係長:やっとご機嫌になってみたいだね

清水:私はいつもご機嫌ですよ

係長:そうかなー。最近なんか落ち込んでいたように見えたけど

清水:気のせいですよ

係長:そっかー、気のせいか。疲れているから飲み会から逃げたのかなーとかも

清水:もしかして、心配掛けていたんですか

係長:仮にも上司ですからね。えっへん

清水:「えっへん」って可愛い子ぶる上司もなぁ。でも、ありがとうございます。気遣ってくれて

係長:良いよ良いよ。俺の半分は優しさで出来てるから

清水:お薬ですね

係長:そうそう、用法用量を守ってご利用ください

清水:何に?

係長:何にって?

清水:用法用量を係長の何に対してですか

係長:優しさ?

清水:半分が優しさで出来てるんですもんね

係長:そうですよ。えっへん

清水:残りの半分は、何で出来てるんですか

係長:あー、そっち聞いちゃう?

清水:いや。割と、どうでも良いです

係長:さっきも言いましたけど。俺、仮にも上司です

清水:はい、知ってます

係長:さっき清水さんが言っていたことの続き。俺も考えちゃった

清水:どの話ですか

係長:当時の「月が綺麗ですね」

清水:あぁ。はい。それがどうかしましたか?

係長:きっと、恋人……せめて婚約者とかじゃないと一緒に見られないよね。じゃないと、女性の名誉に傷がつく

清水:きっと、そうですね。なので現代に感謝してください

係長:え、なんで

清水:現代だから係長は私と一緒にこうして今、月が眺められるんです。あ、でも!!

係長:ん?どした?

清水:その逸話、文献に残ってないから事実かどうか分かんないんですって

係長:へー、そうなんだ

清水:とは言え、別にその時の生徒さんが嘘つく必要無いですもんね

係長:うん、そんな嘘つく必要は無いね。漱石に教わった事自体が逸話として強いし

清水:ですよね。なら別に事実でも良いのか

係長:そうだなぁ。誰かが捏造したのかも

清水:何のための捏造ですか

係長:そんなの、「漱石っぽさ」だよ

清水:漱石っぽさの捏造……?

係長:想像力と国語力の高い、文学の人。って感じへ見せようとする人の思い付きって言うか

清水:そんなことで捏造するかなぁ

係長:じゃさ。俺との関係、捏造して付き合っちゃおっか

清水:全然、話が見えないです

係長:現代じゃなくても、ずっと一緒に眺められるように。だよ

清水:いや、それはいいかな

係長:えー。俺、頑張ったのにー

清水:さっき係長、私に言ったじゃないですか。落ち込んでるように見えたって

係長:うん、言ったね

清水:……。……失恋したんです

係長:うん、なんとなく気付いてたよ

清水:そっか。そんなに私、分かりやすいですか

係長:うーん。俺だから分かったのかも

清水:係長だから、分かった?

係長:清水さんの事、よく見てるから

清水:係長は皆の事、よく見ていてくれるのは知ってます

係長:そうじゃなくて。清水さんの事は、特別って事

清水:なんか、それって。告白に聞こえちゃいますよ

係長:そうだよ。振られて傷ついている好きな女性の味方をするフリして、付けこもうとしてるんだよ

清水:うわ、最低の発言聞いちゃった

係長:わーい。俺、最低だってー

清水:喜ぶ場所じゃないですよ

係長:最低な時に伝えたのは事実だからね。でも、前向きに考えて、俺の気持ち。すぐじゃなくて良いからさ

清水:なんで、こんな時に

係長:うーん?そろそろ戻ろっか。じゃないと、他の奴等に何か疑われちゃうー

清水:あ。なんかあると思われたら困りますもんね。係長、さっさと戻りましょうか。先に行きますねー!!

係長:(ぼそりと)今日の月も綺麗だね

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