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不撓不屈2

一本、二本、と魔力回路を切断していく。

カーティスの魔力を得たことと、弱体魔法でユーフェミアの魔力が押さえられたことにより、先程よりもずっと早く事が成せている。

勿論いままでと同じように、回路を切る度に跳ね返る力がルーナルドの身体を貫いてはいくが。

ルーナルドを守る魔法障壁と、すぐさま発動される回復魔法のおかげで、致命傷となるほどの傷も残っていない。


これならばいける。このまま問題なく終われる。


そう思った。

けれど・・・。


───・・・魔力が安定しない・・・・!


必死で回路を切断しながらも、ルーナルドは強い焦燥感に見舞われていた。

身体の中心にある、一番重要な最後の魔力回路。

精神に直結しているそこを切断するには、今までよりもずっと丁寧で繊細な魔力調整が必要になる。

下手なところを切ってしまえば、ユーフェミアに意識障害が残る可能性があるからだ。

なのに、魔力がぶれて安定しない。

原因は分かっている。先程取り込んだカーティスの魔力だ。

自分の魔力だけならともかく他人の魔力をも取り込んでいる今、感覚に微妙なズレが生じて来ている。

そのせいで、細部までのコントロールがきかない。

かといってカーティスの魔力を手放せばユーフェミアの魔力に押され、正確な魔力回路の場所を見つけられない。

だが取り込んだままでは魔力回路を正確に切断できない。


腕の中のユーフェミアは、もう全身傷だらけだった。回復魔法では補えないほど身体の崩壊が進んでいる。

もう時間はない。

こんな風に手をこまねいている時間なんて一秒だってないのに。

なのにどうしても魔力をうまく調整できない。

このまま一か八かで切断してしまうべきか?

・・・・けれど失敗してしまえばユーフェミアの命に関わる。

だがこのまま何もせずに時間が過ぎればどのみちユーフェミアは助からない。

・・・・けれどこんな状態で事を成せばほぼ間違いなく後遺症が残る。それは彼女の幸せと言えるのか?

でも死んでしまうよりいいはずだ。

・・・・最悪眠ったままになる。それで生きていると言えるのか?


何度も自問自答を繰り返す。

誰よりも大事な人の命を自分が握っている。

自分の行動で彼女の今後が大きく変わると思うとどうしても決断ができない。


───・・・やはり、だめだ。


一か八か、なんてそんな博打を大事な彼女の命で打てるわけがない。

ルーナルドさえしっかりすれば、もっと確実に彼女を救えるはずだ。

必死で自分の魔力を安定させる。意識をとことんまで集中するとなんとか魔力が安定してきた。

しかしそうすると今度は切断すべき魔力回路を見失ってしまう。


くそっ! なんて情けない!!


心の中で盛大に舌打ちをする。

あれほど大口を叩いてこの始末。情けないにも程がある。

けれど実際問題として、魔力回路を見つけるのも、自分の魔力を安定させるのも、どちらも相当高い技術が必要になる。当然かかってくる負担も大きい。それを両方同時にはできない。


だけど泣き言を言っている暇はない。ルーナルドがやらなくては・・・。


そう、思ったとき。


ふっと身体にかかる負担が急に軽くなった。同時に不安定だったルーナルドの魔力が研ぎ澄まされた刃物のように鋭く美しく形成されていく。


「・・・・は・・・?」


状況が理解できず呆然とするルーナルドの耳に。


「ルーナ」


すぐ後ろで誰かが立ち止まる気配がしたと同時に、これ以上ないほど頼もしい声が聞こえた。

後ろを振り返り確認するまでもない。

ルーナルドのことを「ルーナ」と親しみを込めて呼んでくれる人間はもう一人しかいない。

そして恐らく、こんなに簡単に他人の魔力を制御してしまえる人間も。


誰よりも長い時間を共に過ごした。

いつも共に学び、共に鍛練に励んだ。

彼ほど優秀な人間をルーナルドは知らない。

誰よりも頼りになって、誰よりもルーナルドが信頼している──・・・。


「アッシュ・・・。兄さん・・。頼む、力を貸してくれ」


アッシュフォードそこに立っていた。











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