エピローグ 『機械仕掛けの英雄』
これで最後です。
エピローグの機械仕掛けの英雄で『Huma Gear』のセカイを楽しんでください。
――いつもと同じような朝が始まった。いつもの時間に家を出て、いつもの駅まで歩き、いつもの改札をくぐり、今日も準急に乗る。
昨日も今日もいつもと変わらない日常を繰り返している。
《次は〇〇駅〜、〇〇駅〜、お降りのドアは左側です》
今日も定型文のようなアナウンスが耳に流れる。
事故なんかも起こらず、俺の日常は崩れることはない、今日も機械のように学校へ向かわないといけない。
変わらぬ時間割に変わらぬ交友関係、そんなこんなで一駅二駅と電車が揺れる。
この準急の末端の号車の席は俺の特等席だが、そこに座れるかは分からない。いつかの出来事で急激に人口が増加したため、過疎という言葉は遠く離れた市になってしまった。その影響で朝の電車の椅子取りゲームは争いが激しいのだ。
本日は俺の勝ちという結果になったが、明日は分からない。とそんな事を考えていれば着いてしまった。
8時42分、俺が電車を降りる時間だ。
「おっはよう!権三!」
「朝からうるせーな、おはよう」
申し遅れたが、俺の名前は権三。流星とか英雄とかの名前が流行っている中で古臭い祖母の祖父から名前を取ったとかはた迷惑な名前を付けられた至って普通の学生だ。
「それにしても久しぶりだな?なんかあったっけ?」
「お婆ちゃんが死んだんだよ、103歳の。」
「うっわ……ごめん!気が利かなったよな……」
「気にすんなって、別に悲しくも何ともなかったし、休めてラッキーぐらいに思ってたし、」
「お婆ちゃんってどんなやつだった?」
祖母にはあまり良い印象がない。かくいう俺の名付けも祖母である。祖母は会う度に昔話をしてきた。いわゆる親から子にそこから子に話すタイプの迷信が混じった、子供だましの昔話とかいうやつだ。
今の平和があるのは英雄様がいたからだとか、その英雄様が生まれた経緯とか、怪物の恐ろしさとか、寝ないと怪物が襲ってくるぞ、とかだ。
「昔話とかよくしてくれたぐらいしか……たいした記憶がないな」
「昔話って?」
「ほらっ……英雄と怪物のあれだよ……」
「うわっ!お前あれ信じてんの?あんな200年前の御伽噺を?ぷぷぷ――」
「だあー、うるせえ!お前が聞いたんだろ!」
「悪い悪い!でもさ〜俺も信じてたわ。対決の話になると怪物を応援してたっていうか〜。」
「子どもあるあるだな。」
「てか、それってあれだろ?駅前の像のやつ――」
駅前の像。英雄が怪物にトドメを刺したときを象った像だ。英雄は口角を上げて、怪物が使っていた武器を用いてとどめを刺している。噂話では怪物は怪物の剣で心臓を刺さなければ死なないとかいう。その目は何か悲しげな気もするが、俺はそういう芸術とかは分からないからどうでもいい。
「ーーそんなことが起こったかも眉唾だけどな、あれだぜ、ヒューマ犯罪なんてここら100年間は起きていないし、それ以上に戦争も1945年のが最後だぜ」
「そうだよな、起きたっていう証拠がないしな。この像もヒューマ犯罪を抑止するためだけに建てられたでっち上げの噂話だろうな。」
「ちょっといいかしら?」
突然後ろから声をかけられた。声色からして女性だろうか?。
「なんすか?」
友達が返事をする、それと同時に俺は振り向いて話を聞こうとした。その少女?は黒いフードを被っていて全体的に顔を隠している。背格好や肌を見ても俺たちとそんな変わらない年齢な気がする。
「この辺りに政府官邸があるらしいんだけど知ってる?」
「それなら、……あっちっすよ!」
「あっち?あの建物かしら?」
「そうっす!あの赤い屋根の建物を曲がって、そしたら見えるんで」
「あら、ありがとう。」
その少女?はスタスタと歩いていった。政府官邸に用事があるなんてどういうことだろう。身長が小さいだけで、成人している女性だろうか。
「綺麗な人だったよな〜……」
「そうか?」
「そうだよ。お前は背が高いから見えなかったんだろうな、連絡先を聞いとけばよかったぜ。」
「ふ~ん。そんな奴が何の用事だと思う?」
「あれじゃね?政府とかのあれだから、英雄キャンペーンのあれだろ?」
「そうか、もうその時期か」
英雄キャンペーンは昔存在した。英雄を祝うために17歳の少女が毎年一人、政府の仕事を体験するとかいうキャンペーンだ。政府が過去を忘れないようにとか。
かれこれこれも100年以上は続いているらしい。茶番にしか思えないが、こんな事をしてなにになるんだろう。
「やっべ!急げ!もう予鈴が鳴るぞ!走れ!」
「あっ、おう!」
平和とかそんなんはよくわかんないし、ヒューマとかも俺らの世代はよく知らない。これから習うかもしれないし、習わないかもしれない。でも、今の時代が退屈なぐらい平穏なことは分かる。それを作ってくれたのは俺たちより前の世代の大人ってことは勉強で知ってるし、俺もそれを守れるようにしたい。そんな事を婆ちゃんの葬式で思った。
――End 『Huma Gear』
『Huma Gear』を今まで読んでいただきありがとうございます。
作者の近藤世界です。
この物語の構想から書き始めまでを流れでやってしまって走り抜いたような今作ですが。
明確に意識していたことが一つだけあります。
それは個人が内包している言葉の意味です。
1話の初めにあった朝だの言葉も言葉の解釈で変わるよという言葉です。
その通りで言葉とは捉えるものの解釈で変わります。
人という言葉に沢山の意味を込めた今作もそのような狙いがありました。
悪の定義や正義の定義。それらを説いたのも最終章での試みでした。
後は人の役割とかも意識てましたね。
炎帝の役割、官房長官の役割、躑躅森の役割。
カンナと鉋の役割。マギアと怪物の役割。
そんなこんなで素人が書いた作品を熱心に読んでくれた皆様。誠にありがとうございました。
近藤世界でした。またどこかで会いましょう。
ちなみに次回作の発想は最終話を終えた時点で描き始めているので、明日か明後日には1話を投稿できるかもしれないです。
お楽しみにしていてください。




