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Huma Gear  作者: 近藤海月


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2/4

逃避

2話です。

一話を読んでくれた方へ感謝を。

感想を頂けると私が喜びます。

彼の笑いは10秒程度続いていた。周りが静かすぎるのもあって、それぐらいに感じられた。

私はその間、呆れた顔をして見ていただろう。

笑いを急に止めると、倒れている大男の側に彼は近付いていった。

しゃがみ込み、慣れた手つきで脈と瞳孔を確認した。

大男が事切れたという事実は、私にも理解できた。

安全を確認したところで、彼は貴重品の物色を始めた。 


その時、私のスマホがバイブした。学校が休校したことの連絡だった。

そんなことよりも、私はさっきから起きている出来事を彼に聞きたかった。


彼の方に目を向けると、まだ物色を続けているではないか。

彼は見たことのない硬貨や時計などをポッケに入れていた。


その時だった。遠方から警察官が一人、こちらに歩いてきているのを見つけた。幸い、こちらにはまだ気づいていない。

彼も少し遅れて、警察官の方を一瞥していた。

その眼は鋭く、何かを考えているように見えた。


警察官がこちらを見た。

彼は依然、死体の横にいる。

警察が口を開こうとした時には、私は彼の手を取っていた。

「あ…えっと…逃げるよ!」

彼の手をぐいっと引っ張り、走り出した。

「…え、ああ…そういうことか…分かった!」

彼は状況を理解できていないのか、うわ言のような声を出したが、すぐに察したようだった。

彼も遅れて走り出したが、すぐに私を追い抜きそう

だった。


私達の行動を見て、警察も状況を理解したのか、「何をしている!!」と声をかけてくる。

どうやら、大剣と大男の死体を見ての判断だろう。

その声色は本気だった。


「君!ちょっといいか!?」

彼はそう言うと、私を下から抱き上げた。

俗に言うお姫様抱っこというやつだ。

「ちょっ!」

変な声が出た。

私を抱き上げた彼は、グンっと加速した。

原付並みの速度だった。しかも、人を抱えたままである。


警察の方を見ると、無線に連絡を入れ、銃に手を掛けようとしているように見えた。

追いつけないと判断して、私達を撃とうとしているように思えた。

その時であった。彼は急に方向を転換した。

路地裏だ。

やはり、逃走こういうことに慣れているのか?

「よしっ……上だな…」

彼が何かを呟いた。


その時、私の目線が地面から離れていく。

少しの浮遊感の後、重力が押しかかってきた。

「…えっ…?」

彼は壁の換気扇やひっかかりを蹴って、上へと登り始めたのだ。

上がる度に、私の内臓がぐるぐると揺れる。

一つ一つの足場を力強く蹴って、ビルの谷間を登頂したのだ。

しかも、私を抱えながらである。

本当に、何なのこの人。


彼は私の方を見て、「危なかったな、大丈夫か」と声をかけてきたが、むしろ本当にこの人は大丈夫なのかと思ってしまった。

安心するべき場面なのに、私の中では安心感の他に、別の興味のようなものが湧き出していた。


私が息を整えている間に、彼は周囲の警戒を行っていたのだろう。

私は息と共に、思考も整えようとした。

私を襲った大男は死んだのだろう。あいつが死んだのは、私にも要因がある。それに、警察からも逃げてしまった。

そして、彼とは価値観が違うことも、行動を見て理解できた。


周囲にサイレンが鳴り響き、今は日常ではないことを実感した。

私の息が整ったのを見て、彼は喋り始めた。

「こういう場だが、自己紹介をしよう!俺はマギア。マギアと呼んでくれ!」

彼は自分の名前を言ったのだろう。私も応えた。

「カンナ……加羅木鉋からき かんな…カンナでいいよ」

彼は私の名前を聞き、少し間を取った。

「カンナか!宜しくな!」

彼はにこやかに、私の名前を復唱した。……マギア。私が言うのもあれだが、変な名前だ。


「マギア……色々聞きたいことがあるんだけど、いい?」

「何だ?俺に答えられることなら、何でも」

それでは、お言葉に甘えて。

「……じゃあ……あの大男は誰?」

マギアは少し考えてから、口を開いた。

「彼の素性については分からないが、指名手配されていたのは確かだな。俺はそれを追っていた」

指名手配犯?追っていた?彼は警察?……そうだ。ヒビについても聞こう。

「ヒビは?……マギアも、あいつも、あのヒビが割れて出てきた!それは知らない?」

この質問への返答は早かった。

「……すまないが、俺も奴を追っていた際に、奴が穴に入っていったから付いていっただけだ。穴についてもヒビについても、知っていることは何もない」

少しがっかりしたが、分からないものは仕方がない。

「そっか……」

穴に関して思うことはいくつかあるが、考えても答えは出ないので後回しだ。


そうだ……

「あいつがさ……腕を磁石みたいにして、瓦礫を纏っていたよね……あれは?」

マギアは少し驚いた様子だったが、答えてくれた。

「そうか……フフ……あれはヒューマ能力だ」

ヒューマ能力?何だそれは?

「……何それ?」

「なに?ヒューマ能力を知らないのか?」

「知らない……」

私と彼とでは、やはり常識が違った。


少しの沈黙が流れた。

「じゃあ……マギアは、そういうのは持ってるの?」

マギアは即答した。

「俺はノーヒューマだ」

言い切るような口調だった。また、知らない単語が現れた。ノーと付くのだから、無いという意味だろうか。


マギアが口を開いた。

「さっきの奴らが増えてきたな……場所を変えようか。何かいい場所はあるか?アジトとか」

さっきの奴らとは警察のことだろう。それに、アジトと言った。やはり普通ではない。

だが、彼の言う通り、こんな場所でじっとしていてもどうにもならない。

学校も休みになったし、家に帰ろう。

そういえば、彼はどうするのだろうか。

「マギア、私は家に帰るけど、一緒に来る?」

「いいのか?そうなら、是非だ」

「いいよ。家にはおじいちゃんだけだし」


私とマギアは、私の家に行くことにした。

そこで、ゆっくりと話そうと考えた。

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