理由
それに反論しようとするザックをおしのけるように、大きな体を女にむける。
「あの、・・・失礼ですが、・・この辺は、停電かなにかの問題でも?」
「いえ。とくにはありません」
女は冷えた声で応じた。
「・・そうですか・・・」
「うちが電気をひいていない理由が、気になりまして?」
「い、いえ、そういうわけでは、」
あせったように手にしたお茶に口をつけ、二コルは大きな目をくるりと室内に走らせる。
『突然』ここに来ることになった理由は、この家に、《電話》が存在しなかったからだ。
これから行くという連絡をしたくてもできない状況を、新人の若者は「信じられない」と首をふり、絶対に電話を取り付けたほうがいいと進言するんだと二コルに言った。
なので、さっきのはそれを口にしようとしたのだろうが・・・、家の中を見た限り、それはよけいなお世話だという気がする。
使い込まれた暖炉には小さな火。
天井にあるのも小さなランプ。
マントルピースにあるラジオだけが、浮いたように現代的だった。
質素、というよりも、余分なものが、何も見当たらない。
「ほんらい、人間は太陽と月のあかりで暮らすものです」
「・・・・は?」
突然、ソファのむかいの椅子に座った女が、明るい窓の外をみながら話しだす。




