突然の訪問 (ケイトの母親の証言)
まあ、とばっちりはくったけど、たしかに楽しかったな、とザックは自分を取り囲む四角い木枠に張られた絵を、興味なさげにみてゆく。
「おおザック!オトコマエになってて誰だかわからなかったぜ」
同じセリフでからかわれたのは、朝からこれで四度目。いいかげんしつこかったか?と肩をすくめたニコルがカメラをかまえ、撮るから並べてくれ、と、ザックが手をかけていたキャンバスたちをさす。
「このにおいって、油絵のにおい?」
「それと、埃とカビかな。 なにしろここ、彼女が失踪してから開けられたことないみたいだからね」
ウィルがその屋根裏の唯一の窓によって深呼吸をする。
十二年前の被害者、ケイト・モンデルの身辺調査を、改めてA班が『掘り当て』することになった。
いまだに解決しないこの事件を、十二年もたった今、再調査しているからと突然現れた警備官たちに、彼女の母親は何を質問することもなく、受け入れた。
まだそれほど歳ではないはずの女は、ひどくやせた老婆のようで、すぐ先を歩くのに足音もきこえない動きをする。
姿勢はまっすぐで、ほとんど白くなった髪はきつくひとつにまとめられ、ショールを羽織る下のドレスは、いまどき見られないほど古風なデザインだった。
「突然、こんなふうにやってきて、申し訳ありません」
女と同じように古く固そうなつくりの居間でお茶をだされ、せまい肘掛けつきのソファに体を縮こめた二コルは謝った。
隣に座ったザックが口をひらきかけたのを、さらにその隣にすわるウィルがおさえこむように、その脇腹をつねった。
「っぐあ」
「こらこら。ザックはおとなしくお茶も飲めないのか?」
二コルは新人のあげた奇声に笑い声をあげてごまかす。




