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鳩の豆拾い  作者: 青波鳩子


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【41】フォロワーの8割が経験したことなさそうな話    (Xでよく見るやつ)



このタイトルにハッシュタグが付いてるものが流れてくることがあります。

うっかり読むと、9割はなさそうだけど1割くらいはひょっとして経験者がいるかもと思わせるあたりが狙いどころのような気がしました。


私はみみっちいところがありますが、ここはひとつドーンと10割が経験したことなさそうなことを書いてみようと思います。

その場にいた私が、自分の体験というか記憶を疑っておりますから。

「いくらなんでもそんなことがあるわけない」と。


小学6年のある日、私鉄に1人で乗っていました。

平日の16時くらいで、電車の中は乗客がまばらでした。

私はロングシートの端に座っていて、その人物は私の向かいのシートの、ドアを挟んでその脇の3人掛けのシートのドア側の端に座っていました。

おじさんでした。

6年生だったのでおじいさんに見えましたが、たぶんそこまで年はいっていなかったと思います。


おじさんは紺色のシャカシャカした素材のバッグを持っていました。

形は、高校生のスクバのような、マチがあって持ち手が両サイドについていて、上部がファスナーのバッグでした。薄くて畳んだら小さくなりそうな感じです。

とある駅について、ドアが開いても誰も乗って来なくてドアは閉まりました。


ドアが閉まってすぐに、そのバッグからおじさんは包丁を取り出しました。

刃が長方形の菜切り包丁のような形でした。

私はギョっとして固まりました。

ところが、おじさんは今度はシャカシャカバッグからまな板を取り出したのです。

木製の小ぶりのまな板。

switch2くらいの大きさです

次に、長ねぎを取り出してザクザクと輪切りにし始めました。

私の向かいのロングシートに座っていた見知らぬおばさまが、私の隣にやってきてくっついて座ってくれました。

今考えると、別の車両に移ればよかったような気がしますが、おばさまが隣に来たことで何故か安心してそのまま座っていました。


おじさんは、長ねぎを刻み終わると、今度はプラスティックのコップを出してねぎをいれ、包丁とまな板をバッグにしまい、次に水筒を取り出して何やら注ぎました。

最後に、ビニール袋にそのまま入れられたそばを出して、割りばしでそばを食べ始めたのです。


見た順は、本当にこのとおりなのです。

この話のどこが嘘臭いって、最初に包丁を出すところです。

私は何度も思い出してきたのですが、何故最初にシャカシャカバッグから取り出したのが包丁だったのだろうという疑問があります。

私なら、まな板、次に長ねぎ、次が包丁の順で出すと思うのです。

まな板を膝に置いて、次々出した方が安定しますよね。

いや、電車の中でバッグから出したりはしませんし、そもそもバッグに包丁入れて持ち歩きません。

刃渡り7cmで銃刀法違反ですし。


ともかく、まな板が最初じゃないと、最初に出した包丁が邪魔だと思うのですよ。

でも、事実はそうなので仕方がありません。

わたしはみみっちいところがありますが、みみっちい嘘をつくことはたまにしかありませんので。


おじさんはすごい勢いでそばをすすって食べて、最後にコップの中身を飲みました。

何事もなかったかのように、シャカシャカバッグに全部しまうと、次にドアが開いた駅で降りていきました。

私はふーっと息を吐いて、隣に座ったおばさまも降りたのかいなくなっていました。

なんかこっちのほうが地味に怖いのです。

おじさんよりおばさまが気が付いたらいなかったほうが怖く思った記憶があります。


これだけなんです。これだけ。

オチは特にないのです。

あのおじさんがなんだったのか、電車の中で包丁を出したのに誰も止めなかったのか、何も本当のところは分からないままです。

今ならyou tubeの撮影かなとか思うかもしれませんけれども、そういう時代ではありませんでした。


電車の中でそばを食べる用意ができるなら、長ねぎも刻んでくればよかったのに。

何故、あらゆる危険を冒してまで、電車で包丁とまな板を出して長ねぎを刻んだのか。

何も分からないまま、おじさんは長ねぎだけではなく私の記憶にも強烈に刻みました。


読んでくださったかたの10割が経験したことがないだろうと、かなりの自信があります。

だからなんだということもないのですが、時々こういう「嘘じゃん」と自分でも言いたくなるようなことが起こります。

これまで数人にこの話をしたのですが、誰一人信じてくれませんでした。


「──ていう夢を見たってやつだよね」

「次の話のネタかな?」

「38点」

だいたいこのような反応でした。

38点は酷いと思うのです、52点くらいはクレよと。


6歳ではなく6年生ですから。

異世界では婚約する公爵令嬢もいるような年齢なので、記憶はしっかりしています。


本当になんだったのでしょう。

電車で長ねぎを包丁で刻むおじさん…。

妖精にしては普通のおじさんでした(*´ω`*)



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― 新着の感想 ―
怖い! そりゃあ、体が固まって逃げれない! もしおじさんの目的がお蕎麦でなかったらと想像したら、ぎゃーぁあー…… おばさまも怖かったんでしょうが… おばさまって、本当に存在したのでしょうか? 読みなが…
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