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最果ての城の姫サーガ(テーマ曲つき)  作者: 貴島璃世
ランガル国異聞〜古の伝説
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20/21

新たなる伝説へ

挿絵(By みてみん)

『伝説』→ ……これがおまえたちへの、俺からの、おまえたちの世界からはるか遠くの、ランガル国生まれの、ロルド・ベルトンからの戒めだ。


†


 老人の姿が消えたあと、狼狽える俺の頭の中で声が響いた。どこかしら面白がっているようでもあった。


 “おまえに贈り物をしておいた。私の考えが正しければ、それは有効に発動するだろう。なんと言っても、おまえは"姫"の声を聞くことが出来た、私の知る限り、ただ一人の男だからだ。


 その意味がわかるか? 私の長い人生で唯一なのだぞ。


 姫自身が望まなければ、その声を聞くことは叶わない。だからおまえは姫に選ばれたのだ。おそらく、失敗ばかりしている無能な私の後継者としてな。いずれその手に闇の剣が継承されることだろう。


 愛する我が子の言うとおり、私は人の道を誤った。だが、姫に捧げたこの身を後悔していない。願いは叶わなかったが、まあ仕方がない。


 あとはおまえに託すのみ。世界の行く末をおまえの手に委ねよう”


 そしてそれから二百年の時が経った。俺は死ななかった。老人が言った贈り物とは、長い命のことだったらしい。不死ではない証拠に、僅かずつ歳を取っているが、寿命が尽きるまで千年単位の時が必要だろう。


 姫が俺を呼ぶ声が次第に強くなっている。しかしとりあえずまだ自分を保っている。腰に帯びた剣は銀の光を反射し、とりあえずまだ漆黒ではない。俺はあの老人と違って精一杯抵抗してやるつもりだ。


 姫の正体は……。俺の頭の中で、あの老人の声が聞こえたとき、刹那、老人の心に触れた。そして俺は、あの老人の心を通じ「姫」と繋がった。一瞬でも「姫」は俺の心を捕らえる、魅了し、呪縛されかけた。だから、かの人について俺は語れない。はるか太古の昔、かつては人であった「姫」。創世の神に呪われ、強大な魔と化した「姫」を。


 姫への抵抗の要と言うべき桜は世界にあと二本だけ。俺はその二本の桜を訪ね、ダメ元で種子を採り増殖する計画を立てた。だが、うまくいかない。やはり、姫が住まう最果て城にあるオリジナルの木から採取した種子でないとダメらしい。


 まあ、次の復活の日まであと百年あるから、もしかしたら何とかなるかもしれない。常に希望を持てと昔から言うじゃないか。


 もしも俺の心が姫に負けてしまい、暗黒の剣を帯びるようになったたら、この物語をここまで読んでくれたおまえたちに、世界を救ってもらおう。邪悪な力に負けた俺を倒してくれ。その方法は俺にも分からないが、俺が語ってきた物語の中に手がかりがあるような気がする。


 闇に囚われた俺は、立派な外観や輝かしい名声、よく回る舌でおまえたちを誑かそうとするだろう。ゆえにこれまで度々言ったとおり、見かけや評判に騙されるな。英雄の美談を疑え。真実などただの言葉遊びだと思え。真なのは事実のみと心にとどめよ。


 伝説とは、苔むした古の、自分とは関わりのないお伽話ばかりではない。季節が巡り、また麗しい春がやって来た。桜の下で花見と洒落こむのもよいが、その下にはこの世界を我が物にと熱望している魔物が隠れている事実を肝に命じておけ。


 新たな伝説は、今ここから、今ここに存在している我々が紡ぐのだ。

挿絵(By みてみん)

⭐︎テーマ曲MV

https://youtu.be/pDvinxapqCw?si=OdYrZdUd-cnndfcC


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