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合気道無双  作者: 間咲正樹


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1/5

第一投:真の強さとは

「うおりゃああああああ!!!」

「ホッホ」

「うがああああああああ!?!?」


 兄弟子であるブラッドリー先輩の目にも止まらぬ鋭い右ストレートパンチを軽くいなし、そのまま床にブラッドリー先輩を叩きつけるゴウガイ先生。

 な、何度見ても凄い……。

 ――これが、合気道の業!

 ゴウガイ先生の体格は、13歳の俺と同じくらいの小柄なものなのに、一回りも大きい屈強なブラッドリー先輩を赤子の手をひねるが如く投げ飛ばす様は、まさに武神――。

 俺も、いつかきっとゴウガイ先生みたいに……!


「まったく、何度言っても聞かんのぉ、お主は。そんな力任せなゴリ押しでは、いつまで経っても儂には勝てんぞい」

「う、うるせぇ!! 合気道なんて所詮、一対一の素手相手じゃないと何もできねぇ、欠陥品じゃねーか!」


 なっ!?

 ブラッドリー先輩のあまりの暴言に、思わず頭に血が上る。

 ゴウガイ先生の神業を欠陥品扱いするなんて、いくら先生の一番弟子であるブラッドリー先輩でも、看過できない――!!


「ホッホッホ、その欠陥品に今し方投げ飛ばされたのは、どこの誰だったかのう?」

「クッ……!!」


 だがゴウガイ先生はそんなブラッドリー先輩の暴言を歯牙にも掛けず、いつも通り飄々とされている。

 ゴウガイ先生……。


「ハッ、最近じゃ、『銃』とかいう、鉛玉を高速で打ち出す武器まで出回ってるらしいぜ? ――アンタはそんな銃を持った相手でも、合気道で勝てるって言うのかよ!?」

「ホッホ、当然じゃ」

「なっ!?」


 ゴウガイ先生――!!

 そうですよね、ゴウガイ先生なら、相手がどんなに強力な武器を持ってようが、絶対負けないですよね!


「じゃ、じゃあ、『魔法』ならどうだ!? 燃え盛る炎や轟く雷を放たれても、合気道で勝てるかッ!?」

「ああ、勝てるとも」


 ゴウガイ先生ええええええ!!!!

 一生ついていきまあああああああす!!!!


「……ハッ、口ではどうとでも言えるよな。あーあ、もうやってらんねー。――俺は今日限りで、この道場を辞めさせてもらうぜ、ジジイ」


 えっ!?

 ダルそうに立ち上がりながら、道場から出て行こうとするブラッドリー先輩。


「オウ、行くぞお前ら」

「「「へーい」」」


 そんなブラッドリー先輩に、他の兄弟子たちも全員続いてしまう。

 そ、そんなッ!


「待ってくださいッ!」


 慌てて俺は、ブラッドリー先輩たちの前に立ちはだかる。


「アァン? 何だよジェイク。ザコの分際で、この俺に文句でもあるのか?」


 ブラッドリー先輩が獣のような目で俺を見下ろしてくる。

 クッ……!


「ブ、ブラッドリー先輩も、俺と同じく孤児だったのをゴウガイ先生に拾ってもらったんですよね? なのに、こんな恩を仇で返すような真似をしていいんですか!? 武に生きる者としての矜持はないんですかッ!」

「――! う、うるせえええええ!!!」

「がっ!?」


 ブラッドリー先輩に顔面を思い切り殴られ、思わずその場に倒れ込む。

 口の中が血の味でいっぱいになった。


「ザコがッ!! イキってんじゃねえよッ!! クソが!」


 俺にゴミを見るような目を向けながら、ブラッドリー先輩たちは道場から出て行ってしまった。


「……大丈夫か、ジェイクよ?」

「ゴウガイ先生……」


 ゴウガイ先生が俺に手を差し伸べてくださった。


「も、申し訳ございません……! 俺が弱いばかりに、ブラッドリー先輩たちを止められませんでした……」


 いたたまれず、ゴウガイ先生から目を逸らす。


「ホッホ、そんなことはない。お主は強いぞい、ジェイクよ」

「え?」


 ゴウガイ先生……?


「いつも言っておろう。真の強さとは、心の強さじゃと」

「――!」

「心が強ければ、身体は後からいくらでも強くなる。じゃが、心が弱いままじゃと、身体はある程度までしか決して強くはならん。その点お主は、明らかに格上であるブラッドリーの前に、勇気を出して立った。あれこそが強さじゃ。自信を持てジェイク。お主なら、いつかきっと儂をも超える男になることじゃろうて」

「先生……!」


 ゴウガイ先生は俺を励ましてくださる間、俺に差し伸べた手を一切引っ込めなかった。


「ありがとうございますゴウガイ先生……! 一生ついていきます……!!」


 俺はゴウガイ先生の手を握った。

 するとゴウガイ先生はほとんど力を入れていないのに、いつの間にか俺はヒョイと立ち上がっていた。

 相変わらず、ゴウガイ先生の合気道は神業だ――。


「ホッホ、では今日もまずは、基本の型からやっていくぞい。……うぅ。ゴホッ! ゴホッ、ゴホッ!」

「っ!? ゴウガイ先生!?」


 ゴウガイ先生が胸を押さえながら咳き込んだ。


「大丈夫ですか、ゴウガイ先生!」

「……うむ、心配は無用じゃ。儂ももうイイ歳じゃからのぉ。多少のガタはきておる。とはいえ、まだまだ死ぬつもりはない。さあ、構えを取れ、ジェイクよ」

「は、はい!」


 俺はゴウガイ先生と向き合い、先生の型を真似る。

 嗚呼、何度見ても、先生の型は美しい……。


 ――俺はゴウガイ先生と出会った、あの日に思いを馳せた。



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― 新着の感想 ―
真の強さは、心の強さ……。 良い言葉ですね ( ˘ω˘ )
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