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何事

茜目線

ピーンポーン


あれ?ここどこだっけ?


「はーい」


誰の家だここ。


「あ!茜さん!いらっしゃい!」

「え?」

「ん?」

「なんで馨くん?」

「茜さんが僕の家に訪ねてきたんでしょ。なんでそんな不思議がってるのさ」


私なんでここにきたんだっけ?

私はちょっと前のことを思い返した。


* * * * *


拝啓

春の暖かさが次第に夏の気配へと移ろう今日この頃、神土(かんど)様におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。


さて、本日は一つお願いがあり、筆を取らせていただきました。

茜様、もしよろしければ男装をお試しいただけないでしょうか。そして、そのお姿のまま霞の母にお会いいただきたく存じます。

詳細につきましては、ご快諾いただけました際に改めてお話しさせていただきます。


末筆ながら、今後ともご健やかにお過ごしくださいますようお祈り申し上げます。


敬具


追伸

興味あるって言ってたよね?この日にきてね。


ーーーーーーーーーーーーーー


ん?

なんだこれ?何事?

馨くんから突然メールが届いたと思ったらこれだった。なぜこんな丁寧なんだ...。他人行儀もいいところだ。


男装か...。男装は興味あるけど...。なんで霞ちゃんのお母さんに会わなきゃならないんだ?でも引き受けないと詳細を語ってくれないわけだし...。


...。


* * * * *


思い出した。もう全てを思い出した。

霞ちゃんのお母さんに会わなければならない詳細を知りたくて、無意識のうちに馨君の家まで来てしまったんだ。


「本当に来てくれた...」

「詳細が知りたい」

「どうぞあがってください。話はそれからです」


私は馨に案内され部屋へと入っていった。


「こちらにお掛けください」

「ああ。はい」


私は馨くんに勧められた椅子に座った。


「いや実はですね」

「はい」

「かくかくしかじかで」

「...え?」

「だから、かくかくしかじかで」

「は?」

「かくかくしかじかって言ってるじゃん」

「いや、かくかくしかじかって言われてもわからんのよ」

「あっそうなのか」


・・・。


「え?ガチ?ボケ?どっち?ネタ?ネタなの?ネタだよね?」

「まあ。あの。なんで茜さんに男装をしてもらいたいかと言うとですね。霞のお母さんが男装してる霞を見て、知らない男が霞の家を出入りしているって言う誤解をしてしまって...」

「ちょっと待って」

「ん?なんだい?」

「霞ちゃんって男装するの?」

「言ってなかったっけ?」

「知らない聞いたことない」

「やばば」

「なんでやばいの?」

「実は霞もこのこと隠してて」

「言ったちゃったじゃん」

「言っちゃった。口外しないでもらえますか?」

「いいよ。助けてもらったし、そんな秘密バラせないよ」

「いやうっかりしちゃった。僕バレてるし、霞もバレてると思ってた」

「うっかりさんやね。あっごめん話遮っちゃった。つづきお願いしてもいい?」

「ああ。そうだった」


馨は1から10全てを茜に話した。


「なるほどね。だから私に...」

「そういうことなのよ。で、どうですか?」

「うーん。うまくいくかはわからないけど...」

「けど?」

「その...」


茜の顔が少し赤くなった。さっきまで馨の目を見ていたのに今はそっぽを向いている。


「私、ちょっとキョーミあったんだよね...」

「いい顔だ。そう来なくっちゃ」

「え。いい顔って。今どんな顔してる?」


捲し立てるように馨に詰め寄った。


「えっと。翼に見せてやりたい顔してた」

「いったんどんな顔なの?」

「話を戻して。今日は何もない?」

「うん。大学もバイトも休みだよ」

「もう、今すぐ会ってもらいたいから、今日メイクするんだけど」

「え。いますぐ?」

「うん。でも僕、女装メイクしかできないから、男装メイクのプロを呼んだの」

「プロの男装メイク...。誰だ。誰なんだ」

「じゃあ出てきてもらいますか」


馨は立ち上がって、部屋の扉をカラカラと開けた。


「本当にありがとう。茜ちゃん」

「霞ちゃんだ。久しぶり」

「プロの男装メイクさんです」


馨は自慢げにしている。


「なんであんたの方が鼻が高そうなのよ」

「彼氏として鼻が高いから」

「あんまそういうこと言わないで」


茜はこの時、目の前で惚気られて、男装を断りかけたという。


「早速やっちゃうよ!」

「あ。よろしくお願いします!」


茜の初男装が取り掛かられた。

理由を忘れた方はEP30から読み直すとわかります。

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