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今日と言う日を。

心音ちゃんの前でナイトさまのコスをする事が小さな夢になっていたけど。

自分のしているのはレイヤーなんて言えるものでは無くただただ衣装を着ているだけで。

数週間前にナイトさまのコスをしている美しいレイヤーを見た時、同じ人間かと疑うほどの衝撃を受けた。

自分はそんなレイヤーにはなれないし、レイヤーをしてみようとした動機も不純な物で純粋にキャラクターを愛してレイヤーしている人達への冒涜と言われたら否めないが。

それでも。

今日僕はナイトさまのコスをして、そしてその姿で心音ちゃんの前にいる。


「やっぱりニッコニッコ会議って人すごいですよね!私、ここは初参加なので驚いてます!」


辺りを気にする事無くいつもと変わらないハイトーンのアニメ声で心音ちゃんが言うものだから通り過ぎる何人かがこちらを振り返るから僕の方が焦ってしまう。


「心音ちゃんみんなに見られてるよ」


あ…。と小さく言ってから。


「最近声のボリューム調整うまくいかなくて」


頬笑った。

陽の光りを浴びたその笑顔がキラキラしてて見いってしまう。

自分のコンプレックスも難なく乗り越えられる心音ちゃんはすごいな。

素直にそう思う。


「私?変な事言いました?」


僕の返答が遅かったからか心音ちゃんは焦ったように手でパタパタと僕の顔を仰いだ。


「い、い、いや、そんな事無い…よ、そのさ、心音ちゃんって…」


たどたどしく次の言葉考えるより前に僕より輪をかけたようにもっとおどおどした声に遮られた。


「あのー…い、い、一緒に写真撮ってもら…って…もいい、ですか?」


振り返るとセーラーピンクの痛バッグを持った明らかに自分よりだいぶ年上の女性が少し顔を赤らめて立っていた。


「え?え?ぼ、ぼくと…?」


「え、えっと、で、できればお二人と一緒に撮りたいのですが…」


初めての声掛けに動揺してしまいおろおろと自分を指差す姿は最早ナイトさまでは無かった。

そんな自分とは対照的にキャラになりきっている心音ちゃんは胸に手を充てて、


「もちろん、大歓迎です!」


セーラーピンクさながら答えた。

あー、やっぱり僕は全然ダメだ…。

レイヤーをやるからにはちゃんとキャラになりきらなきゃなのに。

きっと写真を求められたのは彼女と一緒にいたからだ。

僕一人立っていたところできっと声を掛けられる事は無いだろう。


それでも…。


写真を頼んできた女性の顔はとても嬉しそうだった。

僕と心音ちゃんの間に入って指の上り切らないピースサインでスマホに映った彼女の表情は強張ってはいたけど、満面の笑顔を見せていた。


「私、セーラーピンクとナイトさまが本当に本当に大好きだったんです!ありがとうございました!」


何度も何度も僕たちに頭を下げて帰って行く彼女を見て僕も嬉しくなった。

人をこんなに幸せにできるレイヤーってすごいと心から思った。


「やっぱりコスって楽しいね!」


僕は初めてコスしたこの日を。

隣で笑う心音ちゃんの笑顔を。

ずっと覚えていようと思った。



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