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橘とアルチェアリ  作者: 御社こはく
序章:ルディアノ辺境
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1/10

00 Prologue


空が揺れる。

冷たい雨が大地を打つ中、泥濘(ぬかる)んだ道を走る2つの人影があった。

片方はもう片方を気遣いながら、剣を片手にひたすらに走る。


息が上がる。体力も底をついている。

それでも走らなければ、()()()()()()


背後には魔物が迫っていた。

少女の手を引く剣士に、もう戦う力は残っていない。その脇腹にはどす黒い血が滲んでいる。


走って走って、追い詰められて、少女は決意した。

彼ならば、この海を超えられる。


少女は、剣士を突き落とす。


「愛していますよ」


そう言い残して。





その日、国が1つ滅んだ。

アルディニア大陸は、アルチェアリは、絶海の孤島になってしまった。








残骸の散らばる海岸を歩く、1人の老人がいた。

船であったのだろう木っ端を退かし、破けた布片を拾い上げ、捨てる。


老人は何かを探しているようだった。

しかし、集めれば金になる鉄屑には目もくれない。



今日もまた、砂浜には船と人の残骸が散らばっている。

この海を渡ろうとして、船ごと海魔に襲われたのだろう。服と見られる布片から行って、おそらく商人。


()()は老人の探しているものでは無かったが、全てスコップで掬って集め、高台から捨てる。

それが老人の日課で、仕事だった。


しかしその日はいつもとは少し違った。


綺麗な死体があったのだ。




老人の目の前に広がるこの海は、アルセパリア海と呼ばれている。

アルセパリア海には、今や外海など比較にならないほど凶暴な海魔が蔓延っている。


海魔が棲みついた海は死ぬ。その海の全てを海魔が破壊してしまうから。

その海を人が渡ろうとすれば、船を破壊され、あっという間に食い散らかされてしまうだろう。


つまり、難破した船の船員は殆どの場合五体満足ではないのだ。

酷いものは頭だけ残されたり、逆に頭だけ無かったものもある。


「.........」


しかしこの死体はどうだろう。

裂傷は激しいが、見た所四肢は欠けていない、外套がへばりついているせいで顔までは見えないが、おそらく首も繋がっている。


ため息が漏れる。この大きさを捨てるのは手間がかかるからだ。

直接触っては厄介な毒をもらうから、ある程度大きな死体は砕かなくてはならない。

そうなるといよいよ、気が進まない。


しかし死体を放置すれば魔物が集る。


海水にさらされた人体というものは、いとも簡単に崩れるから、老人にとっても難しいことではない。

致し方無し。スコップを振り上げる。


その時、突風が吹いた。


へばりついていたフードが煽られ、死体の顔が(あらわ)になる。


まだ若い、青年だった。

その茶髪は、思わず老人の手元を狂わせる。


その時、青年の瞼がかすかに動いた。


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