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声にならない想いを乗せて  作者: 暦海


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渇望

「……あの頃のことは、今でもよく覚えてるよ。それまで元気のなかった海紗凪みさな表情かおが、見違えるように輝くようになったことをね」

「ふふっ、そうだねおばあちゃん」



 時は戻り、織部おりべ家にて。

 暖かな眼差しで耳を傾けながら、甚く嬉しそうに微笑み告げるおばあちゃん。彼女の言うように、あの日から私は明確に変わった。それはもう、鏡なんて見るまでもなく明確に。……でも、それをその日の内に――どころか、帰宅した私を一目見ただけで分かってくれたのは流石と言う他なくて。……うん、いつもありがとう、おばあちゃん。




 さて、あの日――朝陽あさひ先輩と出逢ったあの日以降ですが、その後も彼とお話しする機会が何度かあって。と言うより、きっと私を気に掛けてか彼の方から中庭へと会いに来てくれたわけでして。

 そして、その中で改めて感じたのは――彼は自身をコミュ障なんて言ってますが、別段そんな印象は受けないということ。きっと、声を発するのが苦手なゆえそのように自身を誤解をなさっているのでしょう。……まあ、お気持ちは分かる気もしますが。


 ですが、出逢ってから一ヶ月ほど経過したある日――卒然、私が転校することになり先輩と離れ離れになってしまいました。尤も、彼は当時三年生――どのみち、残り数ヶ月で離れ離れになってしまったのかもしれませんが……それでも、この唐突なお別れを納得させる理由にはなり得なくて。



 そして、転校からおよそ一年が経過したある秋のこと――卒爾、脳裏に衝撃が走る。

 ある日の黄昏時――ぼんやり帰路を歩く視界に映ったのは、見覚えのある端整な少年……されど、私の知らないお洒落な少年。恐らくは、誰から見ても紛れもなく美少年でしょう。……ですが、それ以上に衝撃だったのは――隣で楽しそうに笑う、こちらも見目麗しき少女。それは、さながら恋人のような雰囲気で。


『…………』


 その瞬間とき、私の胸中なかに芽生えたのは、狂おしいほどの嫉妬――そして、願い。なんとしても、彼を私のものに――そんな、どうにも抑えようのないほどに強烈な渇望ねがいでした。



 ――そういうわけで、早速その日から行動を起こすことに。……まあ、行動といっても別段仰々しいものではなく。ただ、それまでにほぼ固めていた志望校を変えただけ――朝陽先輩の通う公立校、聖香せいこう高校へと。



 そして、数ヶ月後――入学式にて幾ばくかの緊張を抱えつつ代表挨拶を述べていると、ぽかんと目を見開き私を見つめる先輩の姿が。……ふふっ、今思い出しても可笑しくなってしまいます。


 ともあれ、その日にて早速空き教室へ――そこにはの美少女、斎宮さいみや先輩への《《ご挨拶》》という目的もありましたが……それ以上に、やはり久方ぶりにどうしても彼と逢いお話ししたくて。



 そして、数日後――事前に収集した情報を基に、とうとう切り出します。朝陽先輩を手に入れるに当たり、極めて重要となるの提案を。



『――斎宮先輩と日坂ひさか先輩を、私達により復縁させるというのは如何でしょう?』



 すると、ややあって彼は承諾。尤も、彼の性格からして想定通りではありましたが……それでも、返答こたえを聞いた際はほっと胸を撫で下ろしたもので。……まあ、それにしてはその後も度々イチャついていたようですが。よもや、お忘れではないですよね?


 まあ、そんな不服はさて措き――朝陽先輩のいる日々は、思った以上に彩り溢れた日々《もの》でした。一緒に映画やカラオケに行ったり、体育祭では同じチームで更には応援団でダンスのペアまで。他にも、鴨川で二人のんびりしたり、文化祭では自由時間を二人であちこち回って過ごしたり。……そして、最後に――



「……ところで、改めてだけど……ごめんね、海紗凪」


「…………へっ?」







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