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声にならない想いを乗せて  作者: 暦海


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黄昏色の帰り道

「――改めてですが、本日はありがとうございます朝陽あさひ先輩。本当に楽しかったです」

【いえ、織部おりべさん。こちらも改めてですが、本当にありがとうございます。僕も本当に楽しかったです】



 それから、しばらくして。

 黄昏に染まる帰り道を、和やかな雰囲気で歩いていく僕ら。琴乃葉月ことのはづきを出てから、折角なのでと普段は通らない道を他愛もない話をしながら暫く歩いたり……こんな何でもない時間が本当に心地好く、そして今も――



「……本当に、ありがとうございました――今まで、本当に」





「…………織部さん」



 ふと足を止め、仄かな微笑えみでそう口にする織部さん。僕をじっと見つめるその瞳には、悲愁――そして、確かな決意が見て取れる。


 ……流石に、分からないはずもない。そもそも、彼女が今日僕を誘ってくれたのは、これが理由――今日を最後に、僕との関わりを絶つつもりだった。


「……やっぱり、分かってたんですね」


 すると、ふっと微笑みそう口にする織部さん。それから、再び口を開いて――


「……すみません、朝陽先輩。私は、我が儘なんです。先輩が、私を――私と同じ類の気持ちで私を見てくれなければ、満足できないんです。以前、言ったかもしれませんが――朝陽先輩と友達なんて、まっぴらごめんなんです」

「……織部さん」


 そう、少し目を伏せ告げる。だけど、言わずもがな我が儘なんかじゃない。彼女にそんな辛い思いを……そんな苦渋の決断をさせたのは、他ならぬ僕。だから――


「……あの、織――」

「ああ、言わないでくださいね? 求める言葉が頂けないと分かっているのに、甘んじて受け取れるほど私はお人好しではありません。なので――その罪悪感は、どうぞ貴方の胸中なかにしまっておいてください」


 すると、僕の言葉を遮り告げる織部さん。そんな彼女のどこか悪戯っぽいその笑顔に、今はズキリと胸が痛んで……だけど――


「……はい、分かりました織部さん」


 そう、どうにか言葉を紡ぎ答える。そう、僕の痛みなんて関係ない。今、僕に――彼女の求めに応えられない僕に出来ることなんて、きっとこれをおいて他にないのだから。





「……さて、これにて私はお暇するとして……流石にもう、決意をなさっているのでしょう?」



 すると、さっと僕に背を向け尋ねる織部さん。些か漠然とした問いだけど、流石に分からないはずもなく。なので、迷わず肯定の意を伝える。すると、少し間があった後――



「……それでは、ご武運を。まあ、応援するとは死んでも言いませんが」

「……ありがとうございます、織部さん」


 そう、背を向けたまま言葉をくれる織部さん。そんな彼女に、どうにか声を出し答える僕。そして、再び彼女は歩みを進め――



「……そうだ、朝陽先輩。折角ですし、最後に呼んで頂けませんか?」

「……へっ? 呼ん…………あっ」


 すると、ふとこちらを振り返りそう問い掛ける織部さん。一瞬、何のことかと思ったけど……うん、思い出した。

 そして、僕をじっと見つめ言葉を待つ織部さん。……正直、恥ずかしい気持ちはある。あるけれど……うん、流石に言ってらんないか、そんなこと。


 一度ひとたび、深く呼吸を整える。そして、ゆっくりと口を開き、たどたどしくもどうにか言葉を紡ぐ。



「……こちらこそ、今まで本当に……本当に、ありがとうございました……海紗凪みさなさん」







 

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