オススメのカフェ?
その後、暫し閑談に花を咲かせながら街の中を歩いていく僕ら。その最中、良ければカフェで一息つきませんかと提案する織部さん。もちろん、断る理由もないので快諾。僕好みのとても良いカフェを知ってるんですよと案内をしてくれる彼女に、期待に胸を膨らませ付いていく僕。そして、大変馴染みのある道を進んでいき……あれ、ここって――
「――いらっしゃいませ〜お客さま。二名さまで宜しいでしょうか?」
そう、満面の笑みで告げるボブカットの美少女。だけど、その笑顔はどこか怖くて……えっと、その……ごめんなさい、斎宮さん。
【……あ、あの、織部さん。その……どうして、こちらに……?】
「おや、ご不満でしたか? てっきり、朝陽先輩のお気に召しそうな場所かと」
【……いや、それはそうなのですが……】
その後ほどなく、隅の方のテーブル席にてそんなやり取りを交わす僕ら。……いや、好きだけども。それはもう、大好きだけども。ただ、僕がこちらで働いていることは彼女もご存じなはずで……まあ、だからこそだろうけど。今も、何とも悪戯っぽく愉しそうな笑顔を浮かべているし。……うん、気まずい。
「――いや〜こっちは忙しい中あくせくと汗を流している一方、可愛い後輩ちゃんと楽しくデート――いや〜まことに良いご身分ですねぇ新里くん?」
【……いや、その……すみません】
それから、数分経て。
注文を聞きにきてくれるやいなや、ニコッと満面の笑顔でそう口にする斎宮さん。……いや、その、ほんとすみません。
「ええ、それはそれはもう本当に楽しかったですよ斎宮先輩。とりわけ、バッティングセンターでは朝陽先輩に文字通り手取り足取り教えていただきまして」
「……へぇ、それはそれは、随分とお楽しみだったようで」
「……いや、あの……」
すると、何とも愉しそうに余計なことを仰る可愛い後輩ちゃん。……いや、その、ほんとすみません。
「…………ふぅ」
それから、しばらくして。
お手洗いから出てきた後、深く呼吸を整える。……いや、ほんと心臓に悪い。まさか、ここに連れてこられるとは……まあ、任せっきりだった僕に不服を言う資格なんてないし、そもそも不服があるわけでもないけど……ただ、それにしてもやっぱり気まず――
「――おや〜、随分とおモテな新里くんではありませんか」
「……あっ」
すると、ふと傍から届いた声。振り向くと、そこには満面の笑顔でこちらを見つめる斎宮さん。……うん、そろそろ止めてほしいなぁ、その呼び方。是非とも、いつものように呼び捨てで――
「……ねえ、新里。一応、聞いときたいんだけど……今日のデート、誘ったのは織部さんの方だよね?」
【……へっ? あっ、はい……その、昨日の夜に】
そんな祈りの最中、不意に届いた斎宮さんの問い。そして、そんな彼女にたどたどしく答える僕。すると、彼女は仄かに微笑み再び口を開いて――
「……まあ、そりゃそうだよね。……うん、きっとあの子なりの決意があるんだろうね。だから新里も今日、誘いを受けたんでしょ?」
「……はい」
「……うん、分かった。ごめんね、引き留めちゃって。またね、新里」
【……はい、またです斎宮さん】
そんなやり取りの後、軽く手を振りホールへと戻る斎宮さん。そんな彼女の背中を見送った後、ゆっくりと席へ戻る僕。……うん、やっぱり気づいてたんだ、斎宮さんも。




