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第5話 パーティーと出会い


「ルシアー! 準備できたか!?」

「今いく!!」


 時は八月。来たる社交界デビュー。

 まだ見ぬ出会いに想いを馳せ、多くの貴族の子女たちがこの日を待っていた。

 その中で私は――


「行きたく無いよぉぉー!!」


 駄々をこねていた。

 メイドたちに着せ付けられて、見かけは可愛く着飾った女の子。実際はただの往生際が悪い駄々っ子だった。


「友達とかいらないのに……」

「いい加減に諦めて楽しんできたら?」

「そうだぞ。一生家にいるわけにもいかないし、慣れるためにも行ってこい」

「ううぅ」


 なぜ私がこんなにも行くのを嫌がるのかって言うと、社交界と聞くと政治的なイメージが強く、いまいち行く必要があるのか疑っているのと、人と喋ると気疲れするからだ。 

 そもそも友達を欲していないのでノーメリットなのである。


「ルシアー!! 早く来い!!」

「は、はーい!!」

「行ってらっしゃい、ルシアちゃん」

「慌ててコケるなよー」


 玄関でセド兄さんと姉さんと話していたら、お父さんからかされて、二人の声を背に門の前に止まっている馬車へ向かって走り出す。


 誰も話しかけて来ませんように。 

 なんのために行くんだと自分でも思うこと考えながら馬車に乗る。

 右にお父さん、左にお母さんがいて、御者はお父さんの執事がやってくれる。


「出ていいぞ」

「了解です」


 馬が大きくいなないて、馬車が出発した。 



 屋敷を出て、馬車で十分程度移動すると街の外壁があり、門を通って外壁の外に出る。

 門の先は、一面緑の草原が広がっていた。

 馬車二台が余裕を持ってすれ違える分の幅だけ草が刈ってあり、白い地面が見える道がどこまでも続いている。

 

 

 視線を横に向けると、見事な深緑ふかみどりの森が見えて、その遥か先には地平線の彼方からも存在感を主張する山々がそびえ立っている。

 

 たしかあれはジュール山脈だったかな?

 ジュールという名の英雄があの山脈で修行してたとかで名付けられたらしい。


「山が気になるのか?」

「うん、綺麗だよね」

「日の出の時はもっと綺麗よ。今度観に行きましょう」


 確かにそんなことが書いてあった気がする。

 お母さんに「楽しみだね」と返し、また山に視線を戻す。


 英雄ジュール、どんな人だったんだろう。

 過去の英雄に想いを馳せていると、少しずつまぶたが閉じていった。



「着いたぞ」

「んぅ〜……おはよ」


 夢の世界から揺り戻されて、周囲を確認する、どうやらもう馬車は止まっているみたいだ。

 馬車から降りていたお父さんが伸ばしてきた手を取り、私も地面に立つ。


 

「でっかい……ここが公爵家かー」

「さ、入りましょう」

「はーい」


 なんか、思ったより緊張してないなー。

 一度寝たことで気持ちがリセットされたのだろうか、私はあまり不安を感じてなかった。開き直っただけかもしないけど。


 公爵家の使用人に案内されて会場に行くと、既に多くの貴族が集まっていて、あちこちで談笑してるのが見える。

 私が考えていたような硬い雰囲気は無くて、会場には子どもの声が響いてる。

 

 確かに十歳以下の子どもの顔合わせと考えると、賑やかになるのは当然かも知れないけど、前世からのイメージとはかけ離れてる。思ったより楽しそうだ。


「なんか、大丈夫そうかも」

「だから言ったじゃない、大したことないって」


 そうは言っても実際見るまでは信じきれないものだ。

 先入観って怖いなぁ、と心の中で呟く。


「じゃあ中に入ろうか」

「はいはーい」


 入り口で固まってても勿体ない。てとてとと、食べ物があるテーブルまで歩いていく。ビュッフェ形式のパーティーなので、お皿に好きな物をよそってから指定された席へ向かう。


 残念ながらお米は置いてなくて、私はサラダとバケットとベーコンにコーンポタージュという朝食っぽいメニューとなった。お米が恋しいぜ。


 席は子どもと大人で別れており、子ども用の席は丸いテーブルに三つの椅子が置いてある。

 私はお父さんとお母さんに手を振って別れ、既に二人の女の子が座っているテーブルへ向かう。


「こんにちは、今日はよろしくお願いします」

「ふふっ、こちらこそよろしくお願いします」

「わたくしもよろしくお願いしますわ」


 私は椅子に座り、先に座っていた二人に挨拶する。

 最初に返事をしたのは私の左に座る少女で、リラックスした様子で微笑んでいる。

 次に返事をした赤髪の少女は緊張してるのか、少し違和感のある言葉遣いだ。素なのかもしれないけど。



「三人揃ったので自己紹介をしましょうか、まずは私から、アレット・フォン・ロレンツです。家は伯爵家。よろしければ仲良くしてください」


 落ち着いた雰囲気の銀髪少女がニコリと笑いかけてくる。かわいい。


「では次はわたくしが。わたくしはミリーゼ・フォン・ラングス。伯爵家の次女ですわ。よろしくお願いしますわ」


 ザ・お嬢様な口調な赤髪少女が次に自己紹介する。かわいい。


「私はルシア・フォン・ファーナル。ファーナル伯爵家の三女です、以後よろしくお願いします」

 

 最後に金髪碧眼美幼女の私。多分かわいい。


 美幼女が三人いる、ロリコン憤死もののテーブルになっている。

 駆除できるね。

 

「じゃあ、食べましょうか」

「そうね」


 銀髪の子――アレットちゃんは大盛りのミートスパゲッティとガスパチョをマナー良く食べてる。ガスパチョはパンやトマトなどを使った冷製スープのこと。


 私の右側に座るミリーゼちゃんはバケット、クロワッサン、イングリッシュマフィンと、お皿中にパンが盛り付けてある。パンだけなのに綺麗に盛られているので違和感がない。スープはクラムチャウダーみたいだ。


 二人とも上品に食べるから少し食べづらいなー、と思いながらコーンポタージュを飲む。おいしい。

 食べ終わったら会話が発生するはず、初対面ってなに話すんだろう。

 ま、なんとかなるっしょ、二人ともいい子っぽいし。

 友達とかいらないって言っちゃったけど、仲良くなりたいなーとか、欲が出てきちゃった。


 あー、クルトンおいしー。


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