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The end of the sky  作者: みるく
本編ではない諸々
64/66

エゼルとゼータとパンツの話

本編では出てきていない、マルティのラボチャイルドであるエゼルとゼータのお話。


サブタイのとおり、特に意味のない馬鹿な話です。



 自身も暮す学生寮の廊下をゼータは歩いていた。

 気分は重い。重いが、目指す部屋についてしまった。

 ゼータは覚悟を決めてその部屋のドアをノックした。


「エゼル、いないのか?」


 返答がない。訪ねる時間は告げていたはずなのにこの扱いである。ゼータは舌打ちした。

 苛立ちまぎれにドアノブを回すと、驚いたことに回ってしまう。――ありえない。オートロック機能が壊れているのだ。


「エゼル!いるのか?」


 ドアを開けた先に広がるのは、足の踏み場もない散らかり放題の部屋である。というか、ドアがちゃんと開かない。これだからこの部屋には来たくなかったのだ。

 ゼータだって決して綺麗に片づけているわけではないが、使用済みと思しきパンツを内側のドアノブにかけたりはしない。

 はたして、部屋の主は汚いベッドの上で眠っていた。


「エゼル!」

「・・・んー?なんでいるの?」

「本を返してもらうと言っただろうが!どこにある」

「ん・・・どこか」


 ゼータは頭を抱えた。

 この惨状のどこかにあっても、無事であるとは思えない。

 部屋の主エゼル・トゥアーは、ゼータが物心つく前から付き合いのある幼馴染だ。

 知能指数は決して低くないのだが、度を超えた片付けられない、空気が読めない男である。その場にそぐわない言動を繰り返すことから、「馬鹿」と罵倒されることもしょっちゅうだ。

 ゼータの一番古い記憶は、不幸なことにこのエゼルに腹を立てているというものだ。なぜ腹を立てていたのかは覚えていないが。


「借り物を適当に扱うなと何度言わせるんだ!ちゃんとするというから貸してやったんだぞ!そんな約束も守れないのか!」

「なんだよ・・・べつに破ったりしてないぞ。ほんと、おまえ怒りっぽいよな。昔からだけど」

「ほんっとおまえは昔から片付けも出来ないし、他人の物でも平気で適当に扱うよな!あとレポートの提出期限、明日だろう。終わってるのか?」

「え!明日?!終わってない!」

「だと思った。とりあえず僕の本を返せ」

「うー、探すー」

「僕はこれから勉強しに図書館に行くけど、一緒に来るか?」

「うん、行く」


 エゼルはベッドから飛び降りて、床に散らばったものをひっくり返し始めた。ゼータにはすべてゴミに見えるし、今にも業者に連絡してすべて捨ててしまいたい。だがこの中にゼータの本があるはずなのだ。ぐっと我慢する。

 数分後、エゼルはゼータの本を発掘した。ブックカバーがなくなっていたが、中身は無事だった。もう怒る気力もなかった。


「そういえばエゼル、部屋の鍵壊れてるぞ」

「うん?あれ?いちいち開けるの面倒だから壊した!」

「・・・・・・」

「ニアスに頼んだらすぐに開錠のプログラム組んでくれたよ。管理室にはちゃんと鍵がしまったように表示されてるんだって。さっすがだよな」


 ニアスことイーニアス・イーサムは、彼らの幼馴染の一人だ。若くして、人工知能研究の第一人者として名高い天才である。天才と呼ばれるだけあって、常人には理解できないエキセントリックな言動も多い。

 そんな天才と、時に馬鹿とも称されるエゼルはなぜか気が合うらしく、昔からよく喋っていた。


「・・・・・・さすがというか、天才の頭脳をそんなことに使わせるな」

「えー、なんで。だってやってくれたんだもん。にしても、なんで三年も気づかなかったんだろ。損した気分」

「あのな、寮がいっくら平和だとはいえ、最低限の防犯はしろ。鍵はかけろ。貴重品を盗まれたりしたらどうするんだ。貴重品じゃなくても、盗られて困るもんがあるだろう」

「うーん・・・あるとは思うけど。まあ、今はいいじゃん。図書館行こう」


 知能指数は低くないのだ。

 発想が普通の人間とは少々異なっているだけなのだ。その発想は、常人からすると残念ながら「残念」なのだ。

 ゼータはため息をつくのも面倒になった。

 あまりイライラしても仕方がない。今は図書館に行くときだ。

 部屋を出ようとしてドアノブに手を伸ばして、はっとする。

 手は、パンツを掴んでいた。

 たぶん使用済みの。


「・・・行く前に、このパンツだけは片付けろ」

「なんで?」


 首をかしげる幼馴染の顔に、ゼータはパンツを投げつけた。






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