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ずっと誰かに見つけてほしかった ~魔道具に込めた思い~  作者: とと


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1/2

前編

読んでいただきありがとうございます。



「リュナおはよう今日もいい天気ね」


「バウア先輩おはようございます」


寮から職場のリペア室までは、庭園と騎士団訓練所の間を通るのが一番近い。

今日もバウア先輩と一緒にその道を歩く。


私はラジール子爵家の次女。

次女とはいうが、兄が5人の7人兄妹だ。

子爵家はもともと代々

魔道具作りにたけていて

魔道具の販売や修繕をを中心とした

商会はなかなかの利潤を得ており裕福な方だ。


7人目で末娘の私も、幼いころから魔道具を分解しては組みなおす

分解しては組みなおすを繰り返しいつしか魔道具の修繕に魅了されていた。

より安全に使用しやすい形に直せた時の晴れやかな気持ちときたら。


そして難関を突破し、狭き門で有名な王宮リペア室に

入る事が出来た時はすごく嬉しかった。

入室時の私は、希望とやる気にメラメラと燃えていた。

王宮すべての!強いては王都いや

この国全体の魔道具を安全に使用しやすく!

私のこの手で変えていくんだー。


そんな燃え盛る私から早2年……


夢や希望や提案は、おとなしく静かにいわれたことだけしていろと言う

室長にギュウギュウと潰され

今では爵位が上の後輩に影でこき使われる始末。

唯一の癒しはバウア先輩がいてくれる事くらい。


「リュナ、今日のお昼なんだけど……」


「行ってきてください。私一人でこっそり

ランチができうる秘密基地を見つけたんです」


「ありがとう~。今日もかわいいリュナ♪」

バウア先輩は先月、平民ではあるが事務官のホープ。

トマスさんとお付き合いを始めた。

王宮務めは、まだまだ爵位が幅を利かせる事が多いが貴族でなくても優秀な人の

抜擢や昇格も多くなってきている。


はあ~。

彼氏なんて、眼鏡で地味な私には

縁のない話だな~。

今日もお仕事がんばろー。



✿ ✿ ✿



「リュナせんぱ~い」

午後3時を過ぎると必ず

アンブル・モア伯爵令嬢がやってくる。

魔道具から眼を離さない私の作業台に

アンブルは魔道具を二つ投げてきた。


「これ、今日中に

直しておいてもらえます~」


「魔道具を雑に扱わないで、それにあなたに割り当てられた仕事でしょ」


「もちろん私の仕事ですけど。  

かわいい私は~。

今日はある方と大事なお約束があるんです

先輩は特に予定がありませんよね~。

それに仕事だけはちゃちゃっとできるじゃないですか~」


アンブルはこうして毎日必ず、私に仕事を押し付けて来る。

アンブルのお父様であるモア伯爵は、うちの商会と取引をしているが

それを取りやめますよと軽く脅すようにしながら……


実際はモア伯爵家との取引が

ダメになっても子爵家は困る事は無いのに

アンブルの仕事を受けるのはコネで入り

大した技術も無いくせに魔道具を扱ってほしくないだけ。

んーもー。私の魔道具バカ!


「わかったからさっさと帰りなさいよ」


「はーい。じゃあ先輩♪ 

よろしくお願いしま~す」

彼女はひらひらと手を振り帰っていった。


「あーお腹すいた。もうこんな時間か

バウア先輩が誘いに来ないと

ついついお昼が遅くなるのよね~」

私はこっそり一人でランチできる場所へと向かった。


新しく見つけた、秘密のランチ場所は

騎士団の所有する建物と、魔導士や魔道具作りを行う我がリペア室がある建物とが

ちょうど重なり、隣接するためその壁には窓もなく小さなベンチが

ぽつんとある小さな庭でどちらの建物からも裏手になるので

全く人が来ない。


秘密基地のベンチにたどり着いた私は、

包みを開けサンドイッチをひと口かじる


少しすると庭の相棒がすり寄ってきた。


「あらいらっしゃい。

ちゃんとあなたの分もあるわよ」

私と同じヘーゼルアイで、アッシュグレーのきれいな毛並みの美人猫さん。

かわいい花柄の青いリボンを首に巻いてるからきっと誰かの飼い猫だと思う。


「ご主人様には内緒よ」

私は、別のパックに入れた、蒸した魚のほぐし肉を彼女の前に置いた。


「ニャー」


「どうぞ召し上がれ」

食べ終わると美人猫さんは、三つ編みに編んで片側に流した私の髪で遊び始めた。

手で髪の先を揺らすと両手を上げて、ちょんちょんと髪にパンチする。

「ご主人様はあまり遊んでくれないの?

ところで庭の相棒さんは、なんて言うお名前なのかしら」

私は少しの間、相棒に癒してもらい仕事に戻った。



「ん~。まただ」

私は魔道具を前に頭を抱えた。

アンブルから預かった魔道具の中に、筋力を強化する魔道具があった。

筋力強化は使用する人への負荷が大きく危険だから、使用をしない様に何度も言っているのに。

今回の魔道具は剣に付けることが出来るアクセサリータイプで

使用するものの筋力を強化し戦闘力を増す様に作られていた。


一般的に剣に着ける魔道具は、剣自体を軽くしたり

振り下ろす時だけ加速がかかったりすることが多いのだが……

そもそもちゃんとした鍛錬の元にどの魔道具も使用されるべきだし

騎士道を重んじる人はあまり使用しないと聞く。

どうして禁止にしないのか!


アクセサリー自体は効果のあるなしに限らずほとんどの騎士が付けているし

ただのアクセサリーか、魔道具かどうかは

外見だけだではわからない。

さらにそれがどんな魔道具でどんな付与が

付いているかは技術のあるものが魔道具を分解しないとわからない。


私は抗議のため室長の室に乗り込んだ。

「室長! 何度も筋力強化は使用する人に負荷がかかりすぎるため危険だと

お話しさせていただいたはずですが!」

私は、ハムザ室長の机にことりと

魔道具を置いた。


「なんでこれをお前が持っている。

お前に直せと言った覚えはない!」


「アンブル様が私に直してほしいと持ってこられました」


「これはお前が直す必要はない」


「では、そのまま使用しては危険であることを説明して

返却もしくは破棄していただけますね」


「ああ… … うるさい!わかったわかった」


「よろしくお願いします」

ハムザ室長をもう一度、じっと見て私は

作業室へ戻った。


はあ~ひとつ仕事が減った~。次の魔道具を仕上げなくちゃ。


修繕する時には、元の物より使いやすく

女性が使用する者ならかわいらしく美しく。

男性が使用する者ならスタイリッシュにカッコよく。

更に安全に使用できるようにすることを

モットーにして私は魔道具に向き合っている。


集中し本日分の作業を終えた頃には

外はもう真っ暗だった。



✿ ✿ ✿



ワイアット・ローベル侯爵令息 視点



「ローベル騎士団長

こちらのレストランで、先日のペリースの

留め具を修繕した女性がお待ちです」


「ああ。修繕を手掛けたのは女性なのかだからあんなに繊細は細工を……

女性と二人だけになるわけにはいかない。

アルクこのまま同席してくれ」


「はい」

レストランの個室に案内されると、繊細とは無縁の艶やかな女性が待っていた。


「お時間をいただきありがとうございます。

私は第一騎士団 

団長のワイアット・ローベルです。

私のペリースの留め具を修繕をしていただいたのはあなたですか?」

あいさつすると女性はおもむろに立ち上がり、私に腕を絡めて来た。


「まあ~ワイアット様。お会いできてうれしいです。

私、モア伯爵家のアンブルと申します。

是非 アン とお呼びください~」


「モア伯爵令嬢、席にお戻りください、さあ団長もこちらの席に」

部下のアルクが割ってはいってくれたが。。。本当に彼女が修繕を?


「早速だがモア伯爵令嬢、修繕いただいた留め具の事なのだが

どの様にするとフックが掛けやすく外れにくい様にできるのだろうか」


「そんなことより、ワイアット様のことを

教えて下さいませ~。どんな料理が好きですか?

嫌いなものなどは?このレストランは

父が手掛けていますのでどんなご希望に添えます。

なんでも言ってくださいませ」


「すまない。モア伯爵令嬢、食事は結構だ、留め具の話を進めたいのだが」


「簡単に作って返してきた留め具の事なんていつでもできますわ~。それよりも~  」


私は話をきり上げ、席を立つことにした。

「留め具の話ができないのであれば

私はまだ仕事を残してきておりますのでこれで失礼します。

アルク後を頼む」


「あのあの、ワイアット様。 待ってください」


モア伯爵令嬢の呼び止める声が聞こえたが、そのままレストランを後にした。

モア伯爵家はあまりいい評判を聞かない。

娘が一人リペア室に入っていたのか。


「留め具を修繕したのは彼女ではないな……」

簡単に作って返してきた?

他の者に依頼したのか?

リペア室は確か……

アンダーソン伯爵家のハムザ室長に

事務官が2名に技術職は男性3名

女性3名だったか……

そんなことを考えながら、執務室のある棟へ向かっていると言い争う声が聞こえた。

男性と女性が道の真ん中で向かいあって揉めている。


あの女性は!

裏庭でシルバーがお世話になっている。


!! 

男性が女性の腕を掴んだ。

「仲裁に入るか」

私は二人のもとに急いだ。




✿ ✿ ✿




「ロバートさん 手を離してください!」


「今日も室長と揉めていただろ

仕事なんて早く辞めて僕と結婚するほうがいい」


「仕事はやめないです。

ロバートさんとも結婚はしません」


「心配しなくてもきみ一人養うことなど僕には簡単にできるよ」

もーーー。

何度断われば

この人はわかってくれるのかしら。

勢いよく、ロバートさんの手を振り払おうとするも、離してもらえない。


「いたたた」


力を込めて手を振り上げようとすると、ロバートさんの悲鳴が上がり

突然手が離れ後ろによろめいた。

絶対に転ぶ!しりもちを突く!とギュッと眼をつぶり

体を固くしたが、ふわりと体が浮いて足が地面に着地した。


おそるおそる眼を開けると私は

騎士団長様の腕にすっぽりと収まっていた。

「君は女性に対して暴力を振るうのか!

どこの所属だ!」

騎士団長様が、ロバートさんの

手をひねり上げている。


「痛いです。離してください。

私は、リペア室で事務官をしているロバート・スミスです。

子爵家の者です。彼女とはちょっと行き違いがあっただけで、暴力など……


か 帰りが遅くなったので、寮まで送ろうとしただけです」


「そうなのか?」

騎士団長様が私を見下ろし

綺麗な青い瞳と眼があった。


「ひとりで帰れます」


「リュナ!そんなこと言わないで一緒に帰ろう」

ロバート様がまた私に手を伸ばす。


「今日は私が彼女を送る。スミス子爵令息、君はこのまま一人で帰りなさい」

騎士団長に促され、ロバートさんはしぶしぶ帰っていった。



「助けていただきありがとうございました」

騎士団長様に向き直り、深々と頭を下げた。


「余計なことだったろうか?

彼とは親しいの?」


「いえいえ。親しくありません。

職場が一緒なだけです!なんどもお断りしているのにしつこくて!

あーヤダ。

こんな話を騎士団長様にすみません」


「助けになったのならよかった。

君、名前は?」


「ラジール子爵家が娘、リュナと申します」

ワンピースの裾を少し持ち上げ挨拶をした。


「ああ。あの魔道具作りで有名な」


「父や兄たちをご存じですか?嬉しいです。

私はリペア室で修繕を担当させていただいています。


その。。。。先ほどから気になって

いたのですが、団長様の付けている

ペリースの留め具、使い心地はいかがでしょうか?

少し前に私が修繕させていただいたのですが……」


「君がこの留め具を!」

団長様に両手で手を握られ

その手はぶんぶんと上下に振られる。


「やー。すごく掛けやすいし、動いても外れにくくなった。

デザインも洗練された物になり

その上!ついていた付与も強化されている。

君は付与師でもあるのかい?」


「はい、もともとある付与を

強化できるだけですけど」


「あの掛ける部分はどのような工夫を?」


「電磁石を使用しました。

そうすると見なくても掛けやすくなりますし外れにくくなります。

団長様がお使いになるものと知っていれば

もっと似合うでデザインを考えられましたのに♪」

私と団長様は時間を忘れて、魔道具や修繕、安全に使用するための案など話し合い

気が付くとすっかり真夜中になっていた。


「すまない。女性をこんな時間まで引き留めてしまって。

今度こそ寮まで送ろう」


「一人で帰れますから、団長様も早く休んでください」


「騎士としてこんな夜中に女性を一人で帰らせるわけにはいかない

それと、私の事は団長では無くワイアットと呼んでくれ


私も君をリュナと呼んでもいいだろうか」


「あの本当にいいのですか?

私などがお名前をお呼びしても」


「ああ」


「あの…… では、ワイアット様」

なんだか恥ずかしいし

気が付けばこんな夜中に

外だけど男性と二人きりなんて!


「さあ帰ろう。そしてシルバーにいつも

おやつをありがとう」


「シルバー? 

 も もしかして、ワイアット様は

あの美猫ちゃんの飼い主ですか?

かってにおやつをあげてしまってすみません。

どなたか飼われている猫ちゃんだとは思ったのですが

スリスリすり寄ってくるのがかわいくてつい」


「かまわない。

シルバーはもともと迷い猫で巡視中に保護したんだが

飼い主も見つからないし、私以外に懐かなくてね、実家の侯爵家では

母が猫アレルギーで飼えないから、私の執務室で面倒を見ているんだ。

時々窓からどこかに抜け出すからどこに行くのか気になって行く先を覗いてみたら    

  ふふ。

リュナとシルバーがベンチで昼寝をしていた」


「あわわわ…… あの庭には誰も来ないし、窓からも見えないと思っていたのに」


「私の執務室からは、少し覗けば見えるんだ」


「すみません。以後気を付けます」


「他には誰も使ってないし、シルバーもリュナと会えないと寂しいだろうから

誰の許可もいらない。使っていいと思うぞ」

話しながらワイアット様はちゃんと、寮の入り口まで送ってくれた。


「また魔道具のことで、後日リペア室を訪ねるかもしれないが

よろしく頼む。  

   ではゆっくりおやすみ。リュナ」


「はい。ワイアット様。おやすみなさい」





(*^-^*)

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