後編
読んでいただきありがとうございます。
次の日出勤すると、ロバートさんはお休みでさらに明日からは、他の部署で急に辞職した方々がいるて
その穴埋めに移動になる事になったと聞かされた。
そしてなんだかアンブルの機嫌がむちゃくちゃ悪い。
「ねえ。あの子なんであんなに機嫌がわるいの?」
「ほんとですね…… バウア先輩。関わらない方がいいですよ~」
早々に先輩と各々の作業場に逃げ込んだ。
その後、数日間はアンブルに仕事を押し付けられることも無く穏やかに時間が過ぎて行った。
その日私が遅めの昼休みから戻ると、室長の部屋から怒鳴り声が聞こえてきて私はあわてて駆け込んだ。
「お前が修繕した魔道具だろ!」
私が部屋に入ると、ハムザ室長がバウア先輩に掴みかかって、どなり散らしていた。
「私が修繕したものではありません」
「そんなこと無いです~。私がこの間バウア先輩にうまくできないから助けてくださいとお願いして修繕してもらいました~」
「私は、モア伯爵令嬢から仕事を頼まれたことはありません」
「魔道具がどうしたんですか?」そう言いながら室長とバウア先輩の間にグイっと割って入る。
「こいつが修繕した魔道具が原因で、第一騎士団の団員が一人倒れたこいつに責任を取ってもらう」
「魔道具はどん魔道具ですか?まさか筋力強化ではないですよね!」
室長は私から眼をそらした。
「そうなんですね!問題の魔道具を回収してきます」
私はドアへ向かう。
「おい待て、魔道具はもう粉々だ確認しても意味はない」
「本当にバウア先輩が修繕した魔道具なら粉々になるはずがありません。先輩は道具の強度を上げる付与を持っています。ご自身で修繕した道具には必ず強化の付与をしています」
「生意気な事ばかり言いやがって、いつも遅くまでちんたら働くうすのろのくせに役立たずなお前らは、まとめてクビだ。それで騎士団には許してもらう様に俺が計らう」
「問題の調査も行わないまま、下の者に責任を擦り付け排除することが正しいことですか!
問題が起きた魔道具は粉々でも確認や聞き取りはできます。室長として正し判断をしてください。お願いします」
「室長として正しく、問題を起こした者に処罰を与えているだろう」
「私はクビになっても構いません。問題の魔道具をきちんと調査させてください。
そうしないと次にまた同じ事故が起こります」
「調査などしなくてもこいつが原因だとわかっているだろう」
あー。堂々巡りだ!
組織の上に立つ者が正しく判断できなければ、そしてその過ちを正すことができなければ、この組織はおしまいだ。身分なんてなんだ! 身分があってもこの役立たず!
なんでわからないんだ!んんーーーーーーー。
みんなが豊かに、安全に過ごせる手助けをしたくて仕事を始めたのに!
組織の中で上に立つものがそのパワーをちゃんと使えないなんて!
抱えきらない怒りや悲しみをどうしていいかわからず、室長を睨んでいると後ろから誰かに腕を掴まれた。
「クビになるのか。それは都合がいいリュナは、このままスミス子爵家で引き取ろう」
「ロバートさん! 離してください。クビになってもロバートさんのところにはいきません」
「うるさい。行くぞ」
ロバートさんに腕を強く引かれ、痛みで顔がゆがむ。
コンコン!
ノック音に振り返ると、ブラウンのくせ毛ときれいな青い瞳、すらっと背の高い青年が立っていた。
「ロバートさん、手を離した方がいいですよ。暴行罪も追加しますか?」
「なんだお前」
「トマス!」
えーーー。バウア先輩の彼氏!
「私は事務次官補佐のトマスと申します。今回リペア室の調査で、事務的な確認を担当させていただきました」
「平民の事務官ごときがなんのつもりだ!ここは俺が管理しているんだぞ」
「リペア室の問題は当然ハムザ室長に取ってもらうつもりだ」
トマスさんの背後から、ワイアット様が現れた。
「ワイアット様~。みんなが怒鳴ってて、私怖いです~」
アンブルがワイアット様めがけて突進するも、騎士の皆さんに阻まれた。
「ちょっと私は伯爵令嬢よ!触るんじゃないわよ~。離しなさいよ!」
「うるさくて話が進まないから別室に連れていけ」
ワイアット様の指示で、アンブルがギャーギャー言いながら連れていかれる。
「さて静かになったところで、話を進めよう。まずは筋肉増強魔道具の件だハムザ室長、調べは既についているがなにか申し開きがあるか!」
ハムザ室長がガタガタと震えだす。
「私は悪くありません。モア伯爵に脅されていて従わないわけにはいかなかったのです」
「関与していたことは認めるんだな、今回リペア室で行われていた様々な不正行為は騎士団と事務次官で調査し、すべて裏を取っているモア伯爵と協力した不正魔道具の販売と、リュナ達の超過勤務費の着服。更には、材料費の水増し請求それらをハムザ室長、モア伯爵令嬢、そしてそこにいる事務官ロバート・スミス子爵令息とが共犯し行われていた」
「俺は、悪くない、悪くないんです」
ハムザ室長が膝から崩れ落ちた。
大きなため息をつきトマスさんが手を上げた。
「さあ。続きは調査省の皆さんが聞いてくれますから同行をお願いしますよ」
騎士団の皆さんが、室長とロバート様を拘束する。
「バウア。あとで説明するからね」
トマスさんは手を振って騎士団の皆さんと2人を連れて去っていく。
「リュナ。頑張ったな」
ワイアット様が、私の頭にポンと大きな手を置いた。
「私が!……私がもっと早く、他の人に相談していれば、騎士の方も倒れなくて済んだはずです。
私がもっと、力があれば意見を聞き入れてもらえたはずです。なんども、なんども訴えたのに……聞いてもらえなかった。どうすればよかったの……うぅ」
私は子供みたいにわんわん泣いた。涙を止められなかった。
泣いている間、ワイアット様とバウア先輩は、私の肩をポンポン叩きながらそばに居てくれた。
✿ ✿ ✿
残されたリペア室の面々は、三日間お休みを取っていいと言われ、ありがたくいただく事にした。
一日目は泣いたせで、顔がパンパンに張れていたので本当にお部屋で休み。残り二日はバウア先輩と、町に繰り出した。
美味しいものをいっぱい食べて、欲しいものを買って♪溜まったストレスを発散した。
休みを終え出勤すると、リペア室のメンバーは調査省に呼ばれた。
会議室には、事務次官のジェームス様、事務次官補佐のトマスさん、ワイアット騎士団長が待って現在の状況をトマスさんが説明してくれた。
「不正を行っていた3人は、聞き取りを進め処罰が下される。
少なくとも今後王宮に努める事は出来なくなる。関わっていたモア伯爵家も調査中だ、調査内容によっては爵位を返上してもらうことになる。
筋肉増強魔道具を購入していた騎士達には1年間の減給と2カ月の蟄居処分。ワイアット騎士団長は管理不行き届きで1年間の減給処分。現在までの処分対応は以上、君たちには何のお咎めも無い」
「ここからの体制については私が説明しよう」
そう言いながら、ジェームス事務次官が立ち上がった。
「王宮内で起きた今回の不正を、王家は重く見ている。
今後そのような事が起きないよう、王宮職にセキュア部門を設ける事となった。
この部門は、王宮内の安全を守るため調査省と第一騎士団が協力し安全を管理するさらに部内に魔道具の制作と修理保全を行う魔道具管理室と仕事の環境や質の改善を行う質管理室を配置する。
リペア室の皆さんには、魔道具管理室で引き続き仕事をしていただきたいと考えているがどうだろう」
「「「「はい。よろしくお願いします」」」」
✿ ✿ ✿
それからの毎日は新しい部門の立ち上げに目の回る忙しさだけれど充実していた。
私達は魔道具の制作にもかかわることができるようになり【みんなが使いやすい安全な魔道具で豊かな暮らしにする!】その夢に一歩踏み出すことができた。
そして私の秘密基地は、新しい部門で使用することになった二つの建物をつなぐための渡り廊下へと姿を変えた。
「ニャー」
「あらいらっしゃいシルバー」
私の足にシルバーがすり寄ってくる。
シルバーは渡り廊下を挟んで隣同士になったワイアット様の執務室と私がいただいた新しいお部屋を悠々と廊下の真ん中を歩いて行き来している。
コンコン!
「失礼するよ、リュナ技術リーダー殿」
「もーワイアット様、からかわないでください」
セキュリ部の長を兼務される事になった事務次官のジェームズ様は「身分に関係なく、優秀な者が上に上がっていくべきだ!」と私を魔道具管理室で室長を補佐し部屋をまとめる役割を学べるポジション。
リペア係のリーダーに抜擢してくれた。
そしてここは、室長の執務室に隣接する狭いが私の作業場兼執務室だ。
こんな素敵な組織を作り私を抜擢してくれた。ジェームズ様の期待に応えたい。
「ほらこれ。ちゃんと食べろよ」
ワイアット様は、仕事に没頭しがちな私に毎日お菓子や軽食の差し入れをくれる。
「ワイアット様は、私を太らせるつもりですか?」
「リュナの顔が見たいだけだ」
もー。完璧な笑顔で見つめながらそんなこと言わないでください~。
耳まで赤く染まり膨らませた私の頬をワイアット様がつまむ!
心が一度ボッキリ折れたけど。
私の仕事も恋も輝き始めました~。
~ 終わり ~
ちなみに、トマスさんはリペア室の調査で、バウア先輩に一目ぼれして
猛烈アタック!お付き合いが始まりました~。




