#22 ボスと戦うのですが
こんにちは、COCOAです。
まだ6月なのに全国的に30℃を超える場所がポンポンと…
皆さんも水分と塩分をしっかり摂るようになさってください。あと紫外線もお気を付けて。
さっきと同じようにゆっくり扉を開けて今度は2人して部屋の中を覗いてみる。中は先程の部屋よりも遥かに広い空間が広がっていて、中には何も無いように感じられる。
「…見えないね」
「そうだね」
「中に入ったら現れるのかな?」
「どうなんだろう…試してみる?」
「他にやる事も思い付かないし、そうしよ」
「分かった」
こうして私達は部屋の中に入る。中に入って歩くと足音がやけに響く。ここは何も無いのかなぁ、なんて思っていたその瞬間
「マスター!正面に魔法陣が…!」
「ちょっと離れよっか、多分ボスが出てくると思うから」
「うん!」
少し離れた所に魔法陣が描かれ始めた。描き終わるまでに取り敢えず距離を取っておく。これがボスじゃなくて地震みたいな災害が起こったら直ぐに逃げれるようにしておかないと…
なんて事を考えているうちに魔法陣が完成する。すると魔法陣から煙が大量に放出された。2人して腕を顔の前に出して煙を被らないようにしていると急に体が浮いた感覚になる。何が起きてるのこれ…?
「大丈夫?マスター!」
「あ、シルだったの?うん、私は何ともないけど…」
「良かった…」
「何が起きてるの…?」
「あれが突撃してきたんだよ、マスターに」
顔で向きを教えてくれたからその方を見てみると建物における3階くらいまでの体躯を誇るゴリラが居た。ゴリラの上を見ると【ガンドラス】と書かれている。幸いにも赤文字じゃないから適正レベル帯なんだろう。
「にしても攻撃してきたことに全く気が付かなかった…」
「煙が蔓延してたからね…私も目じゃなくて耳で判断してたし」
耳…ってことは音だよね。私は全然聞こえなかったからステータス以外に五感の差もあるんだろうなぁ…こういう所はちょっぴり羨ましく感じる。
ってそんなことを考えてる場合じゃない。
「取り敢えず私抱えたまま戦えないだろうし余裕があったら降ろしてくれる?」
今のうちに一心同体を使っておく。
「じゃあ今のうちに降ろしておくね」
「うん、ありがと」
手早くシルに降ろしてもらって体勢を整える。飛翔も使って翼を生やしておく。ガンドラスが私達の様子を伺っているのか動きを見せないから私達の方から仕掛ける。
取り敢えず飛翔で近付いて正面から殴る。防いできたからそのままブレス。どうやら魔法系統は痛いみたい。
「シル!魔法系統は結構効くかも!」
「分かった!」
何回か殴って拮抗してる間に横からシルに攻撃してもらう。シルの殴りを防げなかったガンドラスは少しよろめくと私達を思い切り薙ぎ払う。
「危な」
「怖いね〜…ま、なんとも無いけどさ!」
そう言ってシルはカウンターと言わんばかりに薙ぎ払いを避けた流れでそのまま回し蹴りをガンドラスに打ち込む。やっぱりゴリラみたいなボスだから物理には強いのかな…魔法よりダメージが通りにくい印象がある。長引かせてもメリットは無いだろうし黒雷の神子を使う。
轟音と共に私はガンドラスから距離を取って両手から黒雷を射出して直撃させる。私の意図を理解してくれてたのかシルもしっかりと安全圏まで離れていた。
「ウゥゥゥォォォ!!」
黒雷をくらったガンドラスは怒ったのか私の方に猛スピードで突進してくる。
「幾ら頑張っても、それじゃ遅いよ」
もう1回黒雷を射出して直撃させると同時に威圧を使ってガンドラスの動きを止める。適正レベル帯とはいえボスだからか、1秒にも満たないスタンが起こる。短いと思うかもしれないけど、私にとっては威圧が当たった時点で十分。スタンで止まってるガンドラスに今度は私が黒雷のスピードで突っ込んで、すぐ横を通り過ぎながら思い切り蹴り飛ばす。その勢いのまままた距離を取るとシルがブレスを撃ち込んだ。
「ウゴォォォァァ……!」
大ダメージとなったのかガンドラスがその場に膝を着く。
「シルは今のうちに攻撃して時間作ってくれる?」
「分かった!」
シルが膝を着くガンドラスに連打をして一対一に持ち込んでいく。
今のうちに私は黒雷をチャージする。両手に熱が集中すると共に静電気がバチバチ走る。どうすれば1番火力が高くなるかを考える。この場で私が思い付いたのはなるべく1点に集中させてから射出するレールガンの様なイメージだった。
ガンドラスと一対一をして疲れ始めたのかシルが汗をかいてる。シルの為にも早くこのモンスターを倒さないとね。
「シル!タイミングは合わせるからガンドラスから離れてから威圧使って欲しい!」
「分かったマスター!ちょっと待ってて!」
そう言うとシルは思い切りガンドラスに近付いてほぼ零距離でブレスを顔面に直撃させる。炎と煙でガンドラスの視界が狭まっているうちに飛翔で距離を取るとガンドラスが攻撃してくる前に威圧を使ってくれた。
「ありがと、シル」
それから私は両手を重ねてガンドラスの方に向けて黒雷を放つ用意をする。ガンドラスが私の方を見て心做しか諦めの顔をしていた。残念だったね、あなたも強かったけど、私とシルのペアには勝てないよ。そして私は黒雷のレールガンを放つとガンドラスの体を貫く。
「ゴォァ!」
痛みによる声を発したと思ったらそのまま前に倒れて動かなくなった。
「倒せたのかな?」
「わ、分かんない…」
どうなったんだろうと思っていたら通知が飛んできた。
【ダンジョンNo.21のボス「ガンドラス」を倒しました】
その通知と同時に倒れたガンドラスが赤いエフェクトを出しながら消えていった。
「良かった、倒せたみたい。あと今の敵がダンジョンのボスで合ってたみたいだよ」
「そうなの?やったぁ〜!」
シルが両手を上げて喜ぶ。その姿を見て私も嬉しくなる。赤いエフェクトを出す敵モンスターを見るよりも喜ぶシルを見た方が実感が湧くんだよね。
「お疲れ様、シル」
「マスター!!」
「んぐっ」
労りの言葉をシルにかけたらシルが目を輝かせながら私に突撃してきた。少し痛い。けど、ガンドラスが突っ込んでくるよりよっぽど良いかな。
「ありがとうねシル」
そう言って私を抱きしめて離さないシルの頭を撫でた。
「ううん、マスターの為だもん。これぐらいどうって事ないよ」
「それでもだよ、ありがと」
「えへへ〜」
めちゃ可愛い。私もシルを撫でる手が止まらない。抱き着かれながら頭を撫でると変な格好になるけど今は気にしない。ん、シルの匂いがいつもより強い。汗かいてたからかな?凄く良い匂いがする。ってこんなこと思ってたら変態みたいじゃん、私が。
「これでダンジョンの攻略は終わりなのかな?」
「いや、あと行ってない通路を攻略したらダンジョンの攻略は終わりにしたいかな」
「そっか!じゃあラストの通路も頑張ろ!」
「何も無いと良いな〜」
「出鼻を挫くようなこと言わないでよ…」
「でもその方が楽じゃん」
「それはそうだけどさ…」
そんな会話をしてからこの空間を見回す。他は何も無いかな…って、ガンドラスが倒れた場所になんか宝箱みたいな物があるんだけど。
「シル、あれなんだと思う?」
見付けた宝箱モドキを指差すと
「あれはダンジョン報酬じゃない?」
「依頼とは別にダンジョンのボスを倒したら報酬が貰えるんだ」
「そうだよぉ」
「じゃあお金稼ぎにも結構良いのかな」
「ダンジョンをポンポン攻略出来るならそうだね」
「私達なら出来るね」
「えへへ、そうだね」
「何はともあれ宝箱の中身見てみよ」
「うん!」
宝箱モドキに近付いてよく見てみる。色は茶色をメインに金属部分は銀色で出来ている如何にも宝箱ですと言わんばかりの物体。そーっと触ってみるも変化なし。簡単に開きそうなのでいざオープン。
「おぉ〜」
「いっぱいお金がある!あとこれは…なんだろ」
シルが紫っぽい色の石のような物体を見つける。何だろうと思っていたら通知が来た。
【30万G、魔石を入手しました】
あ、これが魔石なんだ。通知が来ると同時に中身が私の持ち物になって目の前の宝箱はすっからかんになった。
「今の紫色の石みたいなやつが魔石らしいよ」
「あれが魔石だったんだ…思ったより小さかった」
「まあ全ダンジョンの中ではレベルが高くないからじゃない?」
「まあそうだよね〜」
「あとシル基準で言ったらそりゃ小さいんじゃない?」
「確かに…!」
ハッとした顔でそんなことを言うシル。気付いてなかったんだね…まあ、それはさておき。
「残りの通路も攻略しに行こっか」
「お〜!」
私達は今居るボス部屋から出て元来た道を歩いて戻っていく。十字路に出ると今度は右に曲がって進む。これでまだ行ってない、ダンジョンに入ってから正面にあった通路になるね。
とてとて歩いて進むとボスを倒した時にあった宝箱の同じような箱が行き止まりに置いてあった。
「あれ…怪しくない?」
「な〜んかトラップっぽいよね〜」
「取り敢えず何かぶつけてみる?」
「そうしよ!」
ダンジョン内に転がってる適当な石を拾って箱に向かって投げる。石はあられもない方向に飛んで行って箱に当たらなかった。
「…」
「だ、大丈夫だよマスター!次は当たるって…!」
「そうだよね…次こそは」
意気込んでいざ二投目。さっきよりは近付いた…かな?ぐらいの位置に石が飛んで行ってまたもや当たらず。
「……」
「え、えっと…マスター…?」
「…」
私は無言で黒雷の神子を少しだけ使って例の箱に思い切り黒雷を直撃させた。すると箱の中からゾンビみたいな敵モンスターがわらわら出てきたからそのゾンビ達も黒雷で焼き尽くす。
「…よし」
「よしじゃないよぉ!」
「…てへっ」
「ぐっ…可愛い…ってそうじゃなくて、急に黒雷の神子を使わないでよ…」
誤魔化せなかった…
「良いじゃん、石より命中率高いんだし」
「心持ちの問題なんだけど…」
「まあ実際トラップだったし出てきた敵モンスターは殲滅したから、ね?」
「うっ…まあ良いけどさ」
「わぁい」
「なんて棒読み…」
「まあ色々あったけどこれでダンジョン内は全部攻略出来たかな」
「そうだと思うよ」
「じゃあ帰ろっか」
「は〜い!」
無事にダンジョン攻略が終わったので私達はダンジョンから出るために来た道を戻り始めた。入って正面の通路だから十字路も無視して真っ直ぐ帰るとやがてダンジョンから出る事が出来た。
「そんなに長い時間ダンジョン内に居た訳じゃないけど凄く久しぶりに外に出た感覚がするよ…」
「確かに分かるかも!」
「シルも?…ま、取り敢えず冒険者ギルドに行こっか。依頼達成の報告のために」
「出発〜!」
シルの手を繋いで仲良く歩くこと十数分、特に寄り道もせずに真っ直ぐ冒険者ギルドに着くと中に入って受付のところに向かう。
「すみません、依頼を達成してきたんですけど」
「分かりました、依頼の紙を頂けますか?」
「え〜…っと、はい。これです」
「ありがとうございます。今回はダンジョンNo.21の攻略ですね。魔石はお持ちになりますか?」
「はい」
「魔石の方を提出して頂きたいのですがよろしいでしょうか?」
「分かりました」
ステータスを開いて持ち物の欄を操作して魔石を出すと受付の人に渡す。
「ありがとうございます、少々お待ちください」
魔石を受け取った受付の人はギルドの奥に入っていった。多分確認をしてるんだろうね。
シルの手をにぎにぎしながら待ってると受付の人がやがて戻ってきた。
「お待たせしました、魔石の確認が出来ましたので今回の依頼は無事達成となります。ありがとうございました」
「ありがとうございました〜」
受付の人とお互いお辞儀をして受付を離れる。それから移動して冒険者ギルド内のいつもの席にシルと2人して座る。
「何とか達成出来たね」
「わりかしボスも強かったけど、私達なら余裕だったね〜」
「ふふ、そうだね」
シルの肩に頭を預けると、取り敢えず一息つくことにした。
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