決着
レシアやヴォシム王女が居るキャメロットに、魔王の技が降りかかる。ジェットは魔王の狡猾な作戦を前に大ダメージを受けてしまい、神力を消耗してしまった。
「これで終わりじゃな……これで、全てが……!!」
勝利を確信し、ニヤリと笑う……しかし、いつまで経っても技は爆発の気配を見せなかった。
「……なんじゃ……!!?」
──そう、魔王は忘れていた。彼には、とんでもない仲間が居たことを──
「奴は、知らないようだな……勇者の冒険を支えた仲間が、ここに居ることを……!!」
「フン……!!」
ローレンスとジョーが、暗黒のエネルギーを相手に気のバリヤーを張っていた。両者とも黄金宝石で全回復しており、ベリアとの戦いで見せた変身をしていた。
「レシア!!王女様!!ジェットを頼む!!」
ローレンスが、後方を向いてそう言う。彼女達は、既に準備していた。
「わかってるわ……!」
「勇者様は、任せて……!!」
彼らの後ろでは、レシアがジェットを抱えていた。その横で、ヴォシム王女が彼の胸に手を当て、回復魔法を発動していた。
ローレンスはそれを確認してから、バリヤーを張る腕に力を込めた。
「おぉおおおッッッ!!!行けッッ!!ジョー!!!」
「俺に命令するなァアッ!!!」
ジョーは拳を振りかぶりながら、思いっきり四股踏みする。そこを蹴って、魔王の技へ突撃した。思いっきりパンチを放って、エネルギーボールを空の彼方へぶっ飛ばした。
「なにィイイイッッ!!?」
それを見ていたベリアル8世は、思わずエネルギーボールを目で追った。それは天を突き破り、空の向こうで大爆発した。大地にまで衝撃が轟き、雲が全て吹き飛ぶ。そして、カンカンと太陽の光が差した……
魔王の前に、例の二人が立ちはだかる。
「貴様ら……!!どこまでも、小賢しい人間ども……!!」
魔王の怒りで、大地が揺らぐ。二人は臆することなく、構えた。
「貴様も、ジェットが全快するまで待つほど馬鹿では無いだろう。故に、少しばかり邪魔をさせてもらおうか。」
「別に、テメェを倒しちまっても構わねェンだろ?」
「ほざけェエエエエッッッ!!!」
とてつもない神力が溢れ出し、爆発する。二人はそれに吹っ飛ばされそうになるも、同じ風に神力を高めて爆発させた。
「ジョーッッ!!我らでは奴の体力を削り切る事は出来ぬッ!!しかしッ、太刀打ちする事は叶う!!最低限、怪我だけでもさせろッ!!少しでも、ジェットに繋げるのだ!!」
「分かってる!!」
「作戦会議は終わりか……!!では、去ねェエエッッ!!!」
彼女は飛びかかり、強烈な一撃を放ってくる。二人はそれを避け、ジョーが彼女の腹を殴り上げた。
「ごふぁあっ!!?」
確かに腹筋をその叩けた。彼女は吐血し、揺らぐ。
「せいやぁあっ!!」
次にローレンスが、ハイキックで彼女を蹴り飛ばした。彼女は吹っ飛ぶが、地に足を踏ん張り、ダウンはしなかった。
「死ね……!!はぁあああーーーッッッ!!!」
ジョーが飛び、フルパワーのエネルギー弾を連射した。彼女に直撃する度に大爆発が巻き起こり、辺りに衝撃が波動する。
「く……!!馬鹿め、それでは敵の姿が爆煙に隠れるだけだ!!」
「うるせぇ、黙ってろ!!」
「友の警告は、聞くべきじゃぞ?」
ジョーの背後に、ベリアル8世が現れた。瞬間、彼は振り向く。
「がぁあっ!!」
「ちっ!!」
拳を、腕でガードする。それだけなのに、腕がビリビリと痺れた。
「あまいっ!!」
そのまま、彼女は猛烈なラッシュを繰り出してきた。ジョーはそれに対応しようとするも、徐々に押されて一方的に攻撃を受けることになった。
「ぐぅうぁあああ……!!!」
何て、早く重い一撃だ……ジェットはこんな化け物と殴りあってたのか……!!
吐血しながら揺らぐも、すぐに目を鋭くして腕をクロスした。
「はぁああああーーーッッ!!!」
そのまま全エネルギーを解放し、超爆発波を放った。
「ぐぅううっ!?」
彼女はそれを、腕を交差してガードする。爆発波が止んだタイミングでガードを下げ、拳を振りかぶった。
「せりゃあああっ!!」
しかしローレンスが飛び蹴りし、彼女は吹っ飛んだ。その手には神力を纏っており、手刀を構えている。
「はぁああああーーーッッ!!!」
「この、なまくらがァアッ!!」
彼女はその場でパンチを連打する。彼は立ち止まり、その手刀で飛んでくる拳圧を弾き飛ばした。
「ぐ……!!」
神力がどんどん削られ、遂にはゼロになる。
「たぁあっ!!」
そこで彼は跳び上がって体を廻し、全力で回し蹴りを放った。しかし、それは彼女の手に受け止められた。
「いい蹴りじゃ……!!しかし、それでは妾は倒せぬ!!」
そのまま、その足を下げる。彼を眼前に置き、その胸へフルパワーの正拳突きを叩き込んだ。
「ごはぁああアッ……!!!」
とてつもない威力で胸を打ち抜かれ、吐血する。そしてぶっ飛び、倒れそうになる。
「ッ!」
しかし地に手を付けて、体勢を整えて着地した。胸を押さえ、息を切らす。
「……アバラが、何本かイッたようだな……!!」
「死ね……!!」
彼女は、彼に飛びかかる。しかし、その横からジョーが迫り、ベリアル8世の顔面に踵落としした。
「ぐぎゃあっ!?」
彼女はぶっ飛んで、地を転がる。しかし、すぐに立ち上がった。そして、二人を睨む。
ジョーは、ローレンスの方を見てニヤついていた。
「まさか、あんな拳でへばってたんじゃねぇよな……!!」
「貴様も遂にジョークを言えるようになったか。」
ローレンスはムッとした表情で血混じりの唾を吐き捨てる。そして、構え直した。ジョーも構え、魔王に向いた──
二人は、魔王と攻防している。若干押され気味の様子ではあるが、何とか戦えているようだ。
「頑張れ、親分ーっ!!横の人も頑張ってくれーっ!!」
モルドレッドは、彼らを必死に応援する。しかし、その横にいたベリアは難しい顔をしていた。
「……無理だ!お母様の方が強い……!!」
モルドレッドはそれを聞いて、彼女に突っかかった。
「そんな事無いっ!!アタシの親分はアタシより強いんだ!!だから、最強に決まってる!!」
「お母様は、それより強いのだ……!!そのこのままでは、奴らが力尽きるのが先になってしまう……くそっ!!私も戦うぞっ!!」
「ッッ……じゃあ、アタシも──」
戦いに臨もうとする二人を、ジェットが静止した。
「いや……二人とも、お前達はここに居てくれ。」
最低限動ける状態にはなれた彼は、ゴキゴキと首を鳴らす。
「勇者様っ!まだ怪我が……!」
「心配すんな。何とかなる。」
焦る王女を撫でて、落ち着かせる。そして、レシアの方を向いた。
「……ほら、これ落ちてたわよ。」
彼女は、折れたジェットの剣を渡した。彼はそれを受け取り、神力で刃を形作った。
「馬鹿な……今のお前では、無理だ……!」
「みんなで協力しねぇと、ヤバいっつーの!!だから、アタシ達も……」
「じゃあ、後方支援を頼む。ヤバくなったら、前に出てくれ。以上。」
彼はそう言って神力を解放し、ベリアル8世の所へ飛んだ。
「ハァッ……ハァッ……!!」
「がハッ……ゴフッ……!!」
二人は既にボロボロの状態で、何とか立っていた。
「もう終わりか……?呆気ないものよ。神の力を宿した所で所詮は人間……!!」
「あの王女、回復するのにいつまで時間掛かってやがる……!!」
「仕方あるまい、ジェットはこのダメージに耐えながら奴を圧倒していたのだ……!」
「何をぶつくさと……このまま、灰燼と化すがいい!!」
彼女は手を上げ、そこから巨大な暗黒の炎の塊を作り出した。
「……!!」
ローレンスはそれを見て、「とてもコンパクトだ。」との感想を漏らした。恐らくアレは、全開放すればこの魔の大陸を丸ごと消しかねない代物。その威力を圧縮し、あのような形に……
「消えろーーーッッ!!!」
彼女は、それをぶん投げる。
「クソがァアァッ!!!」
本能でそれをヤバいと感じ取ったジョーは、両手に獄炎のようなエネルギーを溜め、手を合わせる。ローレンスも、込められる限りのエネルギーを、合わせ手に宿した。二人は、その手を突き出し、巨大なエネルギー波を放った。
「ぐぅうううッッッ!!!」
しかし二人は押され、靴を擦らせながら後退する。
「ジョー、もっと気を上げろーッッッ!!!」
「今上げてんだろ!!黙ってろ石頭野郎ォオオッッ!!!」
二人の気は、大きくなりつつある。しかし、魔王の技が遥かにそれを上回っていた。
「馬鹿者!!!気を上げろと言っているんだーーーッッッ!!!」
「上げてるッツッてんだろがァアアアーーーッッッ!!!!」
遂に、二人は跪いてしまった。己の気の高まりに、体が耐えきれず、腕が裂けて血を噴き始めた。身体を奔る魔力の回路も、ブチブチと焼き切れているのが分かる。
二人の頭が、限界のサインを出し続ける最中……
「はぁああああーーーッッッ!!!」
背後から、声が響いた。ジェットの声だ。彼は二人の間で急ブレーキして、剣を振り下ろした。
「……!!!?」
剣から斬撃が飛び、彼女の技を真っ二つにして、霧散させた。
「すまん、遅くなった!!」
二人の前に、あの聖なる鎧を纏った光の勇者が居た。
「危うく死ぬ所だったぜ。」
「す、すまぬ……我らが不甲斐ないばかりに、またしても……」
「謝るなローレンス。今回は助けられた。お前達が居なきゃ、この大陸が……いや、この星が消えてたかもしれねぇからよ。」
話し合う三人の前で、ベリアル8世は憤怒した。
「まァた貴様かジェットーーーッッッ!!!」
荒ぶるエネルギーが爆発し、辺りに波動する。ここで、三人は顔を見合わせた。目で何かを伝え、再び魔王の方へ向き直す。そして、構えた。
実の所、三人は他のメンバーの意図を分かっていなかった。しかし、確かな事が分かった。「自分のやれる事をすれば、奴に勝てる」と……
「……行くぞ、決着だ!!」
「殺してやるぞ、人間どもぉおおおッッ!!!」
ローレンスがその場に残り、ジョーとジェットの二人が突撃した。
「あだだだだだだッッッ!!!」
「オラオラオラァ!!!」
二人は、とてつもない速さで猛攻した。ジョーの拳とジェットの剣技が、猛スピードで飛んでくる。
「ふん……!!牽制のつもりかァアッ!!」
彼女はその全てに対応してから、両手で拳を連打した。鋭い拳圧が二人に連打され、ぶっ飛ぶ。
「せぇえいやぁああーーーッ!!!」
入れ替わるようにローレンスが来て、足に渾身の神力と気と魔力を込め、飛び蹴りした。神速の飛び蹴りは確かに彼女を打ち抜いた。
「ぐはぁああああ……!!!」
彼女は、猛スピードで水平にぶっ飛んだ。遮るものがない以上、それは止まらなかった。
「ぐっ……二人とも!!」
ローレンスはその攻撃を最後に、普通の状態に戻ってしまった。蹴りを放った方の足が砕け、あらぬ方向へ曲がっている。
「次は俺だぁああああ!!!」
ジョーが猛ダッシュして、ぶっ飛ぶ彼女に追いつく。その両腕に、燃え揺らぐ獄炎のエネルギーを纏う。
「オラァ!!」
「ぐっ!?」
二人は一撃をぶつけ合い、そこから猛スピードで攻防した。しかしながらジョーはこれまでにないほどに昂っており、彼女をラッシュで圧倒して見せた。
「どうした魔王!?さっきの威勢はどこに消えた!!」
「黙れ……いい気になるなァアッ!!!」
彼女は踏みとどまり、腕を思いっきり振る。そして、ジョーの顔面に思いっきりパンチした。拳が着弾し、彼の顔面で爆発が巻き起こる。
「……」
彼女は、ニヤリと笑う。しかし、彼はその手首を掴んだ。
「なにっ!?」
「ぐ……ぐ……!!」
ゆっくりと顔から引き剥がし、掴んでる方の手に握力を込めた。
「阿呆が!!」
その握力で、彼女の手首が潰れた。
「!!?」
突如として発生した激痛を前に、後退りをする。ジョーはそんな彼女の懐に入り、右の拳にありったけの力を込めた。
「オラァアアアーーーッッッ!!!」
それで彼女の顎をアッパーする。すると、とてつもない炎の柱が、天を衝くように発生した。
「がはぁああああ……!!!」
彼女は、上空の彼方へ打ち上げられた。全身を、獄炎に焼かれながら。
「ジェット、決めろーーーッッッ!!!」
ジョーはその体勢のまま、普通の状態に戻った。アッパーを放った腕が、ブスブスと煙を噴きながら黒焦げになっていた。
「はぁあああああーーーッッッ!!!」
ジェットは剣と心に全てを込める。その背から、美しく輝く光の白翼が顕現した。それで彼は飛び、一瞬で彼女の眼前に迫った。
「これで──」
彼の剣に纏われていた光の刃が、天に届くように伸びる。そして、とてつもなく強大な光を放った。
「ひ……!!?」
魔王はそれを前にして、逃げようとする。しかしジョーとローレンスの一撃のダメージが体に響き、動けなかった。
「な……や、止めッ──」
「終わりだァアアアーーーッッッ!!!!」
光の勇者はそれを容赦なく振り下ろした。魔王はそれに直撃し、光に飲まれた。
「ぎゃああああああーーー!!!!何故だ、何故妾が……嫌じゃ、死にとうない!!死にとう──」
とてつもない閃光が、その場を埋め尽くす。そして、やがてそれは晴れていき──
「ハァーッ……ハァーッ……!!!」
「……や、やった……のか……」
「ヒャハハハ……や、やりやがった……!!」
三人の戦士が、残っていた。魔王は確かに光に飲まれ、細胞の一片も残らず消し飛んだようだ。三人の勝利を飾るように、快晴の青空には太陽が輝いていた……




