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ジェットのぼうけん  作者: ジョーカー
中章:激震魔大陸
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作戦会議

「……ふむ、こんなものであろう。」

ローレンスが、魔術で辺りに結界を張った。魔物がここに侵入出来ないようにと張った、陰陽術の結界だ。家柄が家柄なので、この程度ならば出来るのだ。

時刻はすっかり夜。長い船旅と、本土の魔物の洗礼で、体力は万全だが精神的に消耗していた。しかし、精神的に消耗する理由がここにも……

「……それにしても、私を生け捕りにするとはな……いいのか?後ろからグサリといかれても。」

サキュバスのレシアだ。情報収集用に生け捕りにしたはいいものの、まだこちらの敵になる覚悟は出来ているらしい。好機を狙って、グサリといくつもりらしいが……

「その時は、我らの中の誰かが貴様を殺すのみだ。」

「ゾッとしないわね……」

爆弾を抱えてしまった気がして、今思うと、この行動は安直なものだと思った。しかし、選り好みできる状況ではない。

「では、この島の全貌を教えてもらおうか。何がどこにあるのか、我々は把握出来ていない。」

「……じゃあ、話すわ。地図はある?」

「我が持ってる。」

「またアンタなのね……」

「リーダーが無能なのでね。」

「もう、やめにしませんか。」

無能と言われたジェットのツッコミもそこそこに、作戦会議が始まった。

「今私達がいるのはここ。名前も無い荒野ね。ここからしばらく行けば〜」

魔物の戦闘員が居住してる砦、人間の街の跡地……そして、魔王城の位置まで教えてくれた。しかし……

「そんなでけぇ城なら、ここからでも見えるんじゃね?」

ジェットが立ち上がり、辺りを見回す。しかし、彼女は首を振った。

「無理よ。魔王城には特殊な結界が三重にも張られてて、普通の方法じゃ干渉できないもの。」

「なに……?」

「ま〜ためんどくせぇ事を……」

ローレンスは眉をひそめ、ジョーは溜息をつく。しかし、ジョーの方が笑った。

「まぁ、逆にその結界さえブチ破れば魔王城に突撃する事が出来るッてか。どうすればいい?」

「どうしようも出来ないわ。」

「は?」

三人は、首を傾げる。苦笑いしながらも彼女は、そのまま続けた。

「……その結界の制御装置は、四魔姫のうちの三人の体の中にあるわ。四魔姫を殺せば結界は解けるけど……」

「なんだ、簡単な手があるじゃねェか。」

ジョーが笑いながら言うと、二人もクスクス笑い始めた。

「同感だ。面倒が無くてわかり易いな。」

「ひゃ〜、あの魔王も馬鹿だな〜。結界の制御装置ぐらい、城の中に置いておけば破壊されずに済むのに。」

「……正気なの!?」

レシアは、信じられないものを見る目で三人を見る。

「特に、ジェット!あなたは手加減している四魔姫を相手に二度も不覚をとったって話じゃない!」

「俺は、もうあの時の俺じゃねぇ。あの頃とは比べ物にならねぇ程の力を持ってるハズだ。それに、今は心強すぎる仲間までいる。絶対になんとかなると思ってるぜ。慢心なんかじゃない、確信だ。」

「……そーゆーのを、慢心って言うのよ……」

「はァ」と息をついてから、改めて三人を見る。

「まぁいいわ。私からしたら、君達人間は敵だもの。そのまま無様に殺されてしまえば、私も万々歳よ。」

意地悪にそう言い、頭をバリバリ掻く。

「それで、その三体の四魔姫は何者で、何処にいる?」

「ええ、その話もしようとしてたわ……」

彼女は咳をついてから、改めて三人に向いた。

「まず一人にハルピュイア様。魔王様への忠誠心と自負心が高い、ハーピー族最強戦士。『狙った獲物は逃がさない』を信条に上げてたから、今は君の事でカンカンよ。」

「ああ、逃げれちゃったもんな。」

「ハルピュイア様が居るところは、あの大樹よ。」

彼女が指差した方向……世界樹のようにでかい樹が、そびえ立っていた。遠くにあるものの、ここからでも確認できる。

「それじゃあ、次にゴルゴーン様ね。デビル族最強戦士で、魔物の中でも謎に包まれてる所が多い戦士よ。だから、どこで何してるのかすら私にも分からない。」

「下手すれば、そこらでエンカウントする可能性も有りうるという事か。」

ローレンスがそう言うと、こくんと頷いた。

「そういう事よ。せいぜい気をつけることね。」

道中では、いつゴルゴーンが来てもいいようにしておけ、という事らしい。気をつけねば。

「三人目は、やっぱりアイツ?あ……あ……アンドロマリウス?」

「アルトリウス様よ……」

「そう、それ。」

アルトリウス……確か、消し飛ばされたドラゴンが口にしてた名だ。

「アルトリウス様は、半魔半物の機械生物……改造悪魔(サイボーグ)って言った方が通じるかしら。四魔姫でも特に強く、直属の部下も強者揃いという話よ。」

「ほう……?」

「それで、ソイツは何処にいる?」

「……」

レシアは、ふと上空を見た。三人もつられ、上空を見る。三秒ほど沈黙が続き、ジョーが口を開いた。

「……まさか、空に居るとか言い出すンじゃねェだろうな……」

「そのまさかよ、アルトリウス様は空に居る。」

その言葉に、三人は驚愕した。

「何だと!?」

「な……!?」

「マジ!?」

「正確には、空中要塞に乗って移動しているわ。魔空要塞都市・キャメロット……私達魔物は、そう呼んでる。」

「おいおい……どうしろっつーんだ。俺は飛行能力はねぇぞ……」

「しかも、空中"要塞"と来たか……通常の手段では我らに一方的に攻撃が降りかかり、それで終わりだろうな……」

「何とか、撃ち落とすなり何なり出来りゃいいがな……」

とりあえず、まずは倒すべき三体が分かった。

まず最初にハルピュイア。言わずもがな、こちとら借りが大きい。

次にゴルゴーンだが……まぁ、どこかでエンカウントするだろう。

そして最後にアルトリウス。こればかりは、その時になってみないとどうとも言えない。

さて、これで最初に倒すべき敵が見えてきたとは言え……一つの疑問が、三人の胸の中にあった。

「……最後の四魔姫は?」

そう、ここまで来て最後の四魔姫の正体が分からなかった。四魔姫というのだから、こんな奴が四人もいるんじゃないのか?

「……そうね。最後の一人は、9世様よ。」

「9世?」

「ええ。現魔王の娘、ベリアル9世様。今は修行中だけど、その潜在能力ならば8世様を超えるって話よ。まぁ、もっともあまり表舞台に出ないから、私も詳細は知らないわ。」

「……そうか。」

やはり、魔王の娘とも戦うハメになるのか。いや……そうでなきゃ、人類に自由は訪れない。

ジェットはとりあえず今の事をメモに纏めて、皆に向いた。

「……そんじゃあ、大体どうすればいいのかは分かった。次はやる事決めようぜ。」

「あァ、それだが。」

ジョーが挙手したので、サッと手を向ける。そのまま、彼が続けた。

「俺はまず、魔物の砦とやらに殴り込みに行きてぇ。そこなら、衣食住にはしばらく困らねぇハズだ。」

「我も同感だ。船の食料を持ってきたとはいえ、これでは心もとない。まずは、拠点を確保する方が先決だな。」

「やっぱり、そう思う?俺らにしちゃ珍しい、安全策だな。」

ここから先の戦い、力だけで解決できる戦いではない。きちんと策をねって、確実に戦いを進める方が賢明だろう。

「それじゃあ、明日は魔物の砦に殴り込んで拠点を強奪するって形でいいかな。」

「それしかあるまい。」

「俺も、それでいい。」

とにかく、これで作戦会議は終了した。本格的な戦いが、明日から始まるだろう。

さて、明日の戦いに備えねば……


魔王城……

ベリアル8世が、千里眼でジェットを見ていた。

「くふふふっ、来おったか。くっふっふっふ……」

その横には、ハルピュイアも居る。

「遂に、勇者一行がここに……ボニーは殺られたのね……」

「くふふ、今にも飛び出しそうじゃな。ハルピュイアよ。」

「……」

くふふと笑う魔王に、ハルピュイアは向く。魔王は、ハルピュイアと目を合わせた。

「サキュバスの一体が生け捕りにされ、情報を吐かされておったわ。」

「……なにっ!?」

「まぁ、中級止まりのサキュバスじゃ。これ以上は何も喋れんとは思うが、潰しておけ。」

「……」

魔族の誇りを地に落としたか、サキュバスめ……いいわ、勇者諸共細切れにしてやるわ。

燃え立つような怒りを目にする彼女を、魔王が見た。

「くっふっふっふ、奴らは第四地区の砦に行くらしいぞ。確か、お主の管轄の鳳凰樹が近くにあったじゃろう。」

「ええ……鳳凰樹から精鋭を連れ、奴らを待ち伏せして一気に仕留めるつもりです。」

「そうかそうか、期待しておるぞ。」

「ハッ!」

ハルピュイアは羽を靡かせながら魔王に一礼し、スタスタと歩き去る。

「……さぁ、まずは因縁の対決……と言った所かのう。くっふっふっふ……!」

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