海上での闘い
船を手に入れるために向かったディエチ港。しかし、そこでは西の大陸に渡る船は手に入れられなかった。そこで、ローレンスはオンス海にいる人魚海賊団とやらの船を強奪し、西の大陸へ向かおうという計画を立てた。当然、人魚海賊団を皆殺しにしてどうにかしようとしていた。
作戦当日……早速ジェイドの船に三人は乗り込んだ。既に、多数の戦闘員が剣の刃を研いだり銃の手入れをしている。
「……これが、海賊か。」
「ああ、宝島を夢見た男達だ……そこらの王国のやる気のない兵士よりは強い。」
「ヒャハ!期待できそうだな。」
この海賊船も立派なもので、全長は50m近くあり、大砲やら何やらがたくさんある、いかにも海賊船という感じの船だった。
「ようやく来たか、坊主ども。」
三人の前に来た、ジェイド……酒場で見る彼よりも、何倍にも大きく見えた。船長として……だけではなく、息子の手前なのでいつになくやる気なのだろう。
「父ちゃん。」
「分かってる、息子よォ!絶対にヘマはしねぇ!だから、そっちも下手こくんじゃねぇぞ!!」
「……分かってる。その時は、地獄で親子喧嘩でもしようぜ。」
父と息子は、拳をガチンとぶつける。そして、父の方が船員の方へ向いた。
「そんじゃあ、野郎ども!!俺の腕と左眼を持っていったあのクソどもに、派手にぶちかましてやろうぜぇえええっ!!!」
「おおおおぉーーーッッッ!!!」
雄叫びの後、船はイカリを上げて出航する。そして、あの魔の海域へと一直線に向かった。
船の舳先の手前に、ジェイドとジェットの親子が並ぶ。
「……何年ぶりだろうなァ……俺とジェットが、こうして同じ方向を見るなんて……」
「さぁ?」
親子同士での会話が、そこで続いた……あまり愉快な話でも無いけど、そこまで嫌な話でも無い。微妙な感情がお互いの胸に宿り、話に花が咲いた。
ジョーとローレンスは、海を見ていた。
「おぉい、ローレンス!海景色だぜ!マジで地平線が見えるぜ!」
「うむ……」
「なんだ?テンションの低い奴め。」
「貴様はぬけぬけと……我は、一番死ぬ確率が高い任務を請け負ったのだぞ……」
「ヒャハハハハ!でも、お前だって怖いのと同じぐらい楽しみなクセによォ!」
「……少なからず、我にもそのような感情があるから否定出来ん。戦士である以上、闘いを求めるのも避けられぬ……」
「ヒャハ!死ぬなよローレンス?」
「誰に向かって言っている。貴様こそ、気を抜かん事だな。」
「余計なお世話だ。」
二人は笑い、ハイタッチする。
船は、オンス海へと向かっていった……
「船長、もうすぐ海域ですぜ。」
船員の一人が、ジェイドに言う。もうすぐで、戦闘が始まるのだ。
「おっしゃあ、野郎共!武器を構えな!砲門を開けて砲丸ぶっこむ準備と、バリスタを設置して弾を装填しとけ!機関銃と近接用の武器も一応携帯しとくんだな!」
船長の指示で、船員はバタバタと準備をする。その準備の最中、不安そうな船員の男がジェイドの所に来た。
「その……船長、以前あれだけ猛威を振るった人魚海賊団相手に、また戦うんですよね……増援が、あの未成年の少年3人って……本当に、大丈夫なんですか?」
「馬鹿野郎!!」
ジェイドは、何故か男の頬をビンタした。
「ぶっ!?」
「あいつら3人はなぁ、お前達の100人分……いや、1000人分は強い!!心配すんじゃねぇよ!それとも、俺の言うことが信用できねぇってかァ!?」
「い、いえっ!」
「いいか、お前さん達は自分に出来ることをやればいい。あの3人は、バリスタの撃ち方も砲弾の撃ち方も分からねぇ筈だ。だからこそ、お前さん達が出来ることを本気でやりゃあいい。」
「はいっ!失礼しますっ!」
男は、準備に戻る。
一方、例の3人はいつでもオッケー状態だった。
「よっし……!」
「さぁ、何処から来やがる……!?」
「……」
ローレンスが跳んで、舳先に立つ。仮面越しに、海の向こう側を見た。
「……」
風……波……潮の匂い……その全てに、魔の気配がまとわりついてくる。嵐の前のような静けさに、耳を澄ませた。
「……来る。」
そう確信した瞬間……急に、大きな波を立てながら海面から海賊船が浮上してきた。ジェイドの船と、同じぐらいの大きさだ。
「うぉおおっ!?」
「まさかの、下からだと……!?」
「なにかに掴まれっ!!」
ジェットとジョー、その他の船員やらは、そこら辺のものに掴まって波に耐える。しかし、ローレンスは顔色一つ変えずに舳先に立っていた。
「……いや、こんなものではないな?」
周囲を見回すと、何隻もの同じような海賊船がこの船を囲んでいた。まるで、待っていたかのような奇襲だった。
「ここに戻ってくるのは知っていたぞ、ジェイドよ……」
一番大きな海賊船の舳先に、戦闘力が高そうで胸の大きな人魚が立っていた。
「ボニー……!」
左眼と、無い右腕が疼き、幻肢痛のように痛む。思わず、ギリギリと歯ぎしりをしてしまった。
「そして勇者共よ!ここに来ることは分かっていた!魔王様の腕を奪った罰として、ここで海の藻屑になるがいい!」
向こうの海賊船で、ボニーは声高々に言うが、ジェットとジョーは苦笑いした。
「ごめん、なんつってるか全然分かんねぇ。」
「波と音とか、距離とかの問題でな……」
困惑気味に、二人で話し合う。でもとりあえず、敵意を向けている事だけは確かなので、戦闘準備に入ろう。
「周りの雑魚共は無視して、このまんま奴の海賊船に突撃しろォッ!!」
「おぉおーっ!! 」
船は加速し、ボニーの海賊船へと向かう。しかし、取り囲んでる船が黙ってはいなかった。
「くらいなさいっ!」
海賊船の一つが、砲弾を放ってくる。綺麗な放物線を描き、こちらに着弾する寸前の事だった。
「あらよっと!」
「おおっ!?」
ジョーが跳んで、砲弾を受け止めた。そのまま腕に抱え、振りかぶり……
「返すッッ!!!」
思いっきり、投げ返した。猛スピードで水平に投げられた砲弾は直撃して大爆発し、海賊船がまるまると爆発に融けた。
「きゃーっ!?」
「く、崩れるぅうっ!!」
「この……!!」
人魚達はイルカのように泳いできて、海面から大きくジャンプした。10m近く跳び上がってきてから、ここに着地した。そして武器を抜いて、船員に襲いかかってきた。
「うわ、マジか!」
「戦闘だ!!武器を抜いて、交戦しやがれェエッ!!!」
「あぁ!!」
船員も馬鹿ではなく、船長の命令を聞いて人魚と交戦する。ジェットも剣を抜いて、人魚に向かっていった。
「はぁあっ!」
そのジェットに向かって銃撃する人魚が一体いた。彼はそこに目をつけて、銃弾を剣で弾き飛ばす。そして剣をぶん投げ、そいつの胸にぶっ刺した。
「っ!?」
「しゃおっ!!」
走ってその剣の柄を持ち、人魚の上半身を真っ二つにする。そこから、勇者無双が始まった。船内を駆け回りながら、人魚達をバッサバサと切り倒していく。
「人魚は海を渡ってくるんだよな……なら、この手しかねェわな。」
ジョーが不意に跳び上がって、人魚が泳いでくるコースに拳圧を放った。
「!」
人魚の一体の頭が粉砕し、脳や目玉やらが飛び散る。それを見て、群れが止まった。
「ひっ……!」
「ヒャハハハハハハハ!!」
ジョーは何度も拳圧を放って、人魚を潰していく。別の海賊船が、彼に目をつけた。
「この……!!」
バリスタの弾が放たれ、こちらに向かってくる。しかしそれを受け止めて、人魚の群れの方にぶん投げた。それは一体に深々と突き刺さる。
「邪魔すんな!!」
ジョーはその海賊船に目をつけて、手を向けて魔力を三発ばかり放った。すると、ドーム状の大爆発が巻き起こり、海賊船もその船員もろとも爆炎に飲まれ、消し炭になった。きのこ雲が立ち、波が大きく揺れる。
「な、なんて魔法だ……!」
「くっ……!奴らの進行方向を全力で妨害しろ!戦闘員は、直接乗り込んで船長の首をとれ!」
「はっ!」
人魚の大軍が、周囲からこちらに向かってくる。流石にこの数で攻められたら、ピンチだ……
しかしジェイドは悪い笑顔を浮かべ、目を光らせた。
「ライトニングボルト起動!!焼けェエッッ!!」
「ラジャーッ!!」
次の瞬間、この船の船底から雷電が波動し、海面に電撃が炸裂した。
「うぎゃああっ!!?」
「ああぁあーーっ!!?」
人魚達にもバチバチと電撃が通って、一瞬で群れが壊滅した。
「何だアレは!?」
「よっ。」
声を漏らした人魚を、ジェットが蹴り飛ばす。するとその人魚も海面に投げ出され、電撃に晒された。
「ほ、ホントに何だこれ……!?」
「サメ避けの機械だ!違法改造されてる事は気にすんじゃねェよ!」
「……ロックだねぇ。」
敵の猛攻も激しくなり、普通に銃弾やらバリスタの弾やらが船体に刺さり始める。砲弾は、なんとかジョーが投げ返してはいるものの、このままではまずい。削られる。
「くそっ!!これ以上は近づけねぇ!!頼めるかローレンス!!」
「充分だ。」
ローレンスはそう言って腰を落とす。次の瞬間、舳先が"爆発"した。
「!!?」
脅威の脚力による跳び上がり。蹴られた舳先は爆発するように粉砕したのだった。
当然、海賊船はローレンスを撃ち落とそうとする。
「せいやぁあああっ!!」
しかし、斬撃魔法が上空で拡散した。自分に向かってくる砲弾やバリスタの弾、果ては銃弾までもが斬られ、ローレンスから外れていく。
「斬ッ!!」
その手から、二発ばかり魔力を飛ばす。魔力は蛇のようにうねりながら空を舞い、それぞれ海賊船にぶつかる。そして、船体にもその乗員にも斬撃が入り、バラバラになりながら崩れていった。
「おお、一気に2隻も……!!」
「はぁあああっ!!」
ローレンスは滑空し、ボニーのいる海賊船に向かう。
「撃ち落とせッ!!」
船の機関銃やら何やらが、こちらに向く。そして、無数の銃弾やら何やらが飛んできた。
「せいやぁああああああ……!!!」
迫り来る無数の攻撃を、次々に手刀で弾き飛ばす。攻撃の波に逆らうように、その身は敵の海賊船へと落ちていく。
「吹き飛べぇえっ!!」
そうシャウトし、手を向ける。するとその船上に斬撃の竜巻が巻き起こった。
「っきゃああっ!?」
「うわぁあーっ!」
斬られながら吹き飛ばされ、海面に投げ出される人魚達。その体に電撃が駆け巡る……かと思いきや、既にライトニングボルトは収まっていた。
「っクソ!もう一度充電しねぇと!」
「んじゃ、ここからが俺の出番?」
「おっと、俺が居ンのも忘れんな。」
ジェットが剣を振りながら、ジョーが指をボキボキ鳴らしながら歩く。既に、人魚が乗り込んでいる。
「そんじゃあ、やるか!」
「有象無象どもが……生きて帰れると思うなよ……!!」
ジェットとジョーは船の防衛に回る。一方でローレンスは、無事にボニーの海賊船に着地した。当然、敵に囲まれる。しかし、その敵を分けながら、ボニーが登場した。
「……ほぉ?来たのは貴様一人か。」
「……」
豊満な胸と金髪に白い肌……ここまでなら普通の人間だが、その下半身は魚のそれだった。いかにも水魔法が得意そうな戦士だ。そして、その潜在能力たるや凄まじい。クローディナでは、話にもならないだろう……
「貴様がボニーだな?」
「いかにも……仮面の戦士・ローレンスよ。それにしても、大きく出たなぁ……まさか、この人数比で貴様に勝ち目があるとでも?」
「ある。」
「ほう……?」
「まぁ、我から言わせてもらえば……「その程度で我に勝てると思うか?」と問いたい所だがな。」
その言葉が、プライドの高いボニーの逆鱗に触れた。青筋を立て、金髪がユラユラ浮かび上がる。
「総員、離れよっ!あの海賊船を襲いに行けっ!!」
ドスの効いた指示に、有無も言わさずに従う人魚達。そして、この場は一対一になった。
「思い上がるなよクソガキめ……その矮小な体、バラバラにして股間のモノを食い千切り、丸焼きにしてから皆で小便でもぶっかけてやる!!」
「下品な女め……アイツの方がまだ品性が見える……」
二人は構え、向かい合った……




