勇者進撃
シクスパークで、ジョーを仲間にしたジェット達。
仲間が揃ったことで、遂に冒険は本格始動したのだった……
「よーし、進むぞー!」
この旅の主役にして王国お墨付きの勇者、ジェット。
「我らが向かったその先には、何があるのか……」
パーティの頭脳にして冷徹な仮面の貴公子、ローレンス。
「全てブン殴ればいいンだな……」
狂瀾怒濤の拳で善も悪も打ち砕かんとする、ジョー。
三人はジェットを先頭にして、歩いていた。
行先も分からぬまま、何となく進む。
「……じゃあ、次どこ行く?」
ジェットは二人に向きながら後ろ歩きする。
二人は、ずっこけそうになった。
「遊びに行く大学生か俺らは!」
「なんと、勇者のくせに魔王城の場所を把握していないのか!?」
「しゃあねぇだろ、思いつきでなったんだから。地理も苦手だったし……」
「……」
ローレンスは髪を掻いてから、腰から地図を取り出し、二人に見せるように広げた。
「では、説明させてもらうぞ……」
この世界には、大陸が二つある。西と東の大陸だ。
現在ジェット達が居るのは、シクスパーク……つまりは東の大陸の中の上ら辺である。
「もうそんなに進んだのか?」
「我らは馬車やら何やら使った故、まだ見ぬ国や村に寄っていないだけだ。正直、勇者が魔王を倒す旅としてはかなり早い段階でシクスパークに着いてしまったとは思うが……効率が良くていい。」
「無駄な寄り道はしてねェって事か。」
ジョーに頷き、大陸と進むべき道への議論は続く。
魔王城というのは、西の大陸に存在するが……生憎、西の大陸が今はどうなっているかは不明のままである。ただ言えるのは、そこに魔王城があるという事だけだ。
その肝心の魔王城……魔物を統べる王がいるハズなので相当に大きいかと思えば、その姿は見えないのでどこにあるかも分からないのだ。きっと、結界か何かでもかけられているのだろう。
「では、我らが行くべき道を話そう。まず……」
まず、シクスパークの近くにはヴォシム王国という大きい国がある。そこで装備やら何やらを備え直す事となるだろう。
ヴォシム王国で準備を整え次第、西へ向かってノーヴェムという村で休憩を挟み、また西に行ってディエチ港という港でどうにかして船を手に入れ、西の大陸へ向かう……
「……これが、大まかな魔王城への道のりだ。」
なお、西の大陸はどうなっているかは不明なので今の所言えることは無い。それは、西の大陸に着いてから追々どうにかすれば良いだろう。
「じゃあ今はまず、ヴォシム王国って所に行けばいいんだな?」
「ああ。」
「へっ、ローゼ以外の王国か……期待できそうにねぇなぁ。」
三人は、西へ歩を進めた。
歩きながら、少年達は他愛の無い雑談を始める。
「また、シクスパークから北にはサーバマウンテンという山がある。山登りでもするか?」
「オイ、余計な事をしている暇は無ェんじゃねぇのか?」
ジョーが、珍しそうな顔をしている。
それを見て、ローレンスはクスリと笑った。
「冗談を言っただけだ……貴様には分かりづらかったか?」
「悪かったな……」
顔を少し赤らめ、髪を掻く。すぐに頭を振って、顔色を戻した。
「山ねぇ……」
ジェットは、ふとそう呟いた。
北の方を見ると、確かに山が見える。緑に包まれた、大きな森の山である。
「別荘を建てるには丁度良さそうだな。」
「夢の話ならば、魔王を倒した後に地道に働く事だな……」
「ハハハ、生きて帰れたらの話ではあるがな。」
ジョーの言う通り、夢みたいな金の使い方する話はこの旅から生還した時にいくらでもしようと思っている。
とりあえず、ローゼ王なら「魔王倒したからお小遣いちょーだいっ!」って言えばくれそうな気がする。
「ああ、魔王を倒すのが楽しみになってきたな。」
「我も、魔王を倒した後はどうするかを考えねばな……」
「俺も生きて帰ったら、女探しでもするかなァ!」
笑いながら言うジョーの横に、ジェットがつく。口元を隠し、ニヤケながら視線を向けて。
「この時彼は知る由もなかった……この旅より、女探しの旅の方が過酷な事を……」
「殺すぞてめぇ。」
「はははははっ。」
話していると、不穏な気配が周りに現れた。魔物特有の、嫌な気配だった。
「おいおい……折角話が盛り上がってんのに。」
「魔物に、我らの事など知ったことでは無い……」
「……フン。」
三人は目を鋭くして臨戦態勢をとった。ジェットは剣を抜き、ローレンスは手刀を構え、ジョーはファイティングポーズを取る。
その周囲には、既にサキュバスやデーモンやゴブリンが囲んでいた。
「へぇ〜、勇者ジェット……まだ生きてたんだぁ〜……」
「しぶといやつ……それに、そんな二人までぶら下げちゃって……」
知性のあるサキュバスやデーモンがそう言いながら三人を見下し、指を向ける。するとゴブリン達は怒号を上げながら武器を構え、三人に突撃した。
「よっしゃああっ!!」
ジェットは一体の足を切り落としてから、ローキックで頭を蹴る。その蹴りで頭部は粉砕し、脳と頭蓋骨の破片、肉片がそこらに転がった。
「せりゃああっ!!」
ローレンスは跳び、回し蹴りを何度も放つ。その足から斬撃が飛び、周りのゴブリン達も切り裂かれた。腕や頭や足が次々にハネられ、鮮血が飛び散る。
「おるらぁあっ!!」
ジョーは群れに突撃し、その中心に着地。腕と足を力任せに振り回した。拳や蹴りが乱打され、次々にゴブリン達を撲殺しながらサキュバスに近づいた。
「ち、チャームっ!」
サキュバスは手でハートを作り、そこに魔力を込める。そこからピンク色のビームを射出し、ジョーに直撃させた。
これで、この男は私に魅力される……
「効くかよバ〜〜〜カ。」
ジョーは何事も無かったかのように拳を構え、サキュバスの眼前にまで迫る。その拳を、下腹に叩き込んだ。「ぐしゃり」という生々しい音が鳴る。
「ーーーッッッ!!!?」
「ちぇいッッ!!!」
次に放たれた、顎を狙ったハイキック……は直撃し、なんと首が千切れた。ぽーんと跳ね上がったサキュバスの頭部が放物線を描きながら、あたかもシュートされたサッカーボールが落ちるようにぼとりと落ちた。
「……!!?」
「何処を見ている?」
サキュバスの最期を見て狼狽えるデーモンに、ローレンスが駆け寄る。
「はぁッ!」
「キャ……」
手刀を薙いで、胴諸共腕を断ち切った。手刀に斬属性を纏い、まるでバターのように切り落としてみせたのだ。
ずるりと胴体が落ち、下半身も倒れる。血がどくどくと溢れ出て、血溜まりが出来た。
仲間にサキュバスとデーモンを任せたジェットは、ゴブリン達を相手に暴れていた。
「ヘイヘイヘイッ!いくぜいくぜいくぜっ!!」
駆け回り、剣に魔力を込めながら敵を切り裂いていく。
「シャアアッ!」
「ガァアッ!」
「グォオッ!」
死を恐れぬ戦闘生命体であるゴブリンは、同胞の死を目の当たりにした程度で腑抜けはしない。しかし、ジェット達を相手にするにはあまりにも命知らずすぎた。
ジェットはゴブリン達の攻撃を避け、剣を掲げた。
「あいつ、我らが居るのだぞっ!!」
「避けりゃいい。問題ねェ。」
二人はジェットの剣に纏われた魔力を見、察した。そんな二人を信頼し、彼は魔力を解放する。
「はーい、皆危ないよーっ!!」
剣に纏われた魔力が天を衝くような冷気に変わり、辺りに寒波が旋風する。その剣を腰に構え、薙ぎ払いの体勢をとった。そう、これはエルフの森で使っていたあの大技である。
「技名募集中ッッ!!!」
広範囲に渡る剣の魔力の薙ぎ払いは、迫っていた敵達やそれに続く連中をも凍らせていく。完全に剣が薙ぎ払われた時には、既にたくさんの氷像が立ち並んでいた……
「ギシャアッ!」
「ギャアァッ!」
しかし、二体ばかり避けていたようで、上空からジェットに向かって攻撃してきた。しかし、その背後には例の二人の影があった。ジェットの技を跳び避け、敵に目をつけたのだ。
「せいやぁっ!」
「喰うぜッ!」
ローレンスの飛び蹴りで一体が蹴り殺され、ジョーの踵落としで一体が縦に断裁された。
二人はジェットの横に着地し、返り血を払った。
「ア〜ア〜、こんなモンかよ……」
「いや……」
また別のタイプの魔物の群れが現れる。今度は、スライムとハーピーとメスゴブリンだ。
「普通のゴブリンじゃ、こんなものか〜!よっわいな〜!」
「ふふん……今度からこいつらに差し向けるゴブリンは全員メスに改造しましょうか……」
「アハハハ!それがいいや!アハハハ!」
三人は構え直し、魔力を解放する。
「……なんで敵がこうも女ばっかなんだ?」
ジョーがふと、そんな事をジェットに聞いてきた。
「あはは、向こうだと女が上の立場なんだとよ。そんでもって男の大半はあのゴブリンにされちまうの。」
「拉致された人間が、種馬にされた挙句ゴブリンに改造されるという話はよく聞く。全く、悪趣味な連中だ。」
「へェ……」
まぁ、元人間だろうと魔物は魔物。容赦する必要はない。当然、目の前の彼女達にも容赦はするつもりは無く……
「では。」
ローレンスが真っ先に切り込み、ハーピーの背後に来る。
「速……!?」
「死ね。」
そのまま、背中に寸勁をした。するとその体内に衝撃が駆け巡り、顔の穴という穴から血を噴き出した。
「がはっ……!?」
揺らいだ所に手刀を薙いで、首をハネた。残った胴体を蹴っ飛ばし、着地した。
「やーっ!」
背後からスライムが迫ってきたが、回し蹴りで胴を真っ二つにする。しかし、手応えはなかった。
べちゃりと分断されたスライムが落ちて、一つの水たまりになる。それはぷるぷると震えて、再び女体を作り出した。
「ざぁんねん、私に斬撃は効かないもんねー!」
「……まぁ、分かってはいた。」
「そんじゃあ勇者のターンっ!」
ローレンスの肩を踏み台に切り込んできたのは、ジェットだった。剣に氷の魔力を纏い、それでスライムを斬る。
「きゃ……!?」
スライムはたちまちに凍っていった。身動きが一切取れずに、苦悶の表情のまま凍結した。
「ちょいっ!」
「せぇいっ!」
容赦の無い二人の蹴りが、スライムを粉砕した。バラバラと破片が飛び散り、その命も終わりを迎える。
一方では、ジョーがメスゴブリンに突っかかっていた。
「ハッ、人間の男が!今すぐに力の差を」
言いかけたメスゴブリンの脛にローキックが入った。鈍い音が鳴ったかと思えば、折れた骨が皮膚を突き破り、飛び散る血と共に露出した。
「痛……!!?」
「力の差を……なんだって?」
「ぐ……このガキっ!!」
一矢報いようと、折れた方の足でジョーの金的を蹴ろうとする。しかしそれより速く、ジョーの蹴りが股を蹴り上げた。その蹴りは恥骨を粉砕し、股下から20cmまで足がメリ込んだ。
「ァ!!!?」
スタッカート気味の悲鳴を上げ、宙を舞う。あまりの痛みに、白目を剥いて意識を失ってしまう……
「はい、お疲れ。」
ジェットが、落ちてきたメスゴブリンに剣を突き上げた。剣は背中から入り、胸から突き抜ける。
剣をブンッと振って、メスゴブリンとその血を払った。
敵の気配は、もうしなかった……
「ふぅ、敵の群れを追い払ったぞ!」
「ああ、「魔物の群れを倒した!」状態だな。」
「RPGのゲームじゃあるめェし。」
三人はそう言いながら臨戦態勢を解いて、息を吐く。そして、旅路の続きを踏み出した。
「よーし……ともあれ、ヴォシム王国に行ってみよう!何かあるかも知れない!」
「ああ……こんなご時世だ。少なからず問題は抱えているハズだ……力になれるといいな。」
「ま、何も無ェのが一番なんだけどナ。」
魔物達の、死屍累々の屍を後に三人は進み続けた。
次の目的地は、ヴォシム王国だ。




