とんだ同窓会だな
シクスパークの闘技場……
その近くの酒場で、ジェットとローレンスは落ち着いた。
しかし、そこに現れたのはメッサリナ三姉妹。
闘技場を脅かす傍若無人の姉妹に、二人はつっかかろうとした。
しかし、その三姉妹を呆気なく倒したのは二人ではなく……
「……」
二人と同じローゼ第一魔法学校出身、ローレンスが探していた人間である、ジョーという男だった……
ジェット、ローレンス、ジョーと、カウンターを並んで座って話し合う事となった。
「まさか、こんな所に居たとはな……探したぞ。」
「あ、どうも……」
「……」
ジョーは、ジェットの方に目をつける。
そして、軽く会釈をした。
「俺はジェットだ、よろしくな。」
「ああ。」
「……」
ローレンスは静かに、例の紙を出した。
そして、話の本題を切り出す。
「貴様には聞きたいことが山ほどある……しかし、まずはこれだ。いったい、どういう意味だ?何があったのだ?」
「……」
ジョーは、苛立った顔を見せた。
その表情はすぐに呆れ顔で塗りつぶされ、口からは溜息が漏れる。
その次に、コーラを一口飲んだ。
「……去年の決勝、覚えてるか?」
「ああ、知ってる……あの時、ボロボロになりながらも何度も立ち上がって……それから形勢逆転して、何とか勝ちに持ち込んだっていう戦いか……見に行ってたから、覚えてるぜ。」
ジェットのそれを聞いて、ジョーは更に深い溜息を吐いた。
頭をバリバリと掻きながら、項垂れる。
「その大会が終わった後な……アイツは、何も言わずに帰った……って思ったら、その次の日から何処の誰かも分からんチンピラとつるむようになってたんだ。」
「……」
ちなみに、クロナの事ではない。
あいつは、格闘大会には出ていない。そろばん大会になら出ていたが。
「……アイツというのは?」
「分かんねぇか?水龍院だ。水龍院カナコ。東と西のハーフで、東西の武道という武道を全て極めた最強の武道家だ。」
「やはりか……貴様が決勝で戦った相手だったな。」
「ああ、そういやそんな名前だったな……お淑やかで巨乳で落ち着いてて、みんなのアイドル的な……」
「アイツの本性を見りゃ、そんなイメージは吹き飛ぶ……まぁ、チンピラとつるんでるだけなら良かったんだ。」
カランカランと氷を鳴らし、コップを前に出す。
額に絆創膏を貼ったマスターが、そのコップにコーラを注いだ。
注がれてる間に、頭を抱えた。
「しばらくして……奴とつるんでたチンピラは全員殺され、奴も姿を消した……それが分かったのが、あの試験の結果発表日だ。」
「……」
結果発表日……ローレンスが、この紙を見つけた日だ。
そして、ジョーの探索を始めた日でもある。
そんでもって、俺が栄光を手にした日でもあったか。
「何故だか知らんが、俺はアイツをぶん殴りたくなった……だから、あの日置き手紙だけ残して走ったんだ……」
「行動力あるな〜……」
「相変わらずな奴だ……」
そういう訳でジョーは今、人探しの最中だそうだ。
つるんでたチンピラ達の不可解な死……消えた水龍院……
やはり、人間が抱える問題は魔物だけでは無さそうだ。
「……傍若無人で強い女が居るって聞いたから走ってここに飛び込んだが、あのザマだ。まるで話にならねぇ……」
「馬車、使わなかったのか……」
「あのエルフの森を突っ切ったのか……」
ジョーは少し考えてから、こちらを向いた。
「そう言えば、俺は中退扱いになるのか?」
「む、それを言ったら我もだな。どうなのだ?」
ローレンスも、便乗してこっちに向く。
「いや、一応卒業扱いにはなってるぜ。特例中の特例みたいだけど。」
「うむ……まぁ卒業しようがしまいが、成すべき事は変わらん。」
「ああ、俺もやる事ぁ変わらねぇ……けどよ、せっかくあのアカデミーの卒業生3人が、世界一の遊園地に居るんだぜ?ちょっくら遊んでいこうぜ……」
ジョーは、笑顔を浮かべて拳を握る。
ローレンスは仮面越しにでも分かる、嫌そうな顔をした。
「ジョー、我らに遊んでいる暇など……」
「あーあーあー、この石頭野郎……てめぇは少し、マジメ過ぎんだよ。」
「い、石頭野郎……」
「遊ぶって、何すんだ?ジェットコースター?」
チッチッチッと、ジョーは指を振る。
そして、腕を組んだ。
「分からねぇか?今近くにこの遊園地で一番楽しいアトラクションがあるだろうが。」
「……」
ああ、そういう事か。
このジョーという人間、けっこう戦闘狂の成分が入っているのだ。
「まぁ、遊び終わったら旅に出りゃいいさ。俺もついてくから。」
「おお、本当か!」
何と、コロシアムに出ればジョーも仲間になると言う。
出まいと思っていたコロシアムに、出ねばならない理由が出来た。
これで、三人旅になる。
「ローレンス、てめぇも参加しろ。」
「あまり、乗り気にはなれないがな……まぁ、いいだろう。」
「よーし、決まりだな!」
三人の実力確認も兼ねて、コロシアムに参加しよう。
きっと、金にも困らなくなるはずだ。
「それじゃあ、俺は先に行って待っている。あまり待たせんじゃねぇぞ……俺は待つのは嫌いなんでな。」
ジョーはそう言ってコーラを飲み干して金を置き、先に行ってしまった。
「よし、じゃあ俺達も行くか!」
ジェットもオレンジジュースを飲み干し、金を置いて酒場から出ていく。
少し遅れ、ローレンスも代金を置いて酒場から出た。
その顔には、「やれやれ」という感情が浮き出ている。
「……全く、とんだ同窓会だな。」
そんな事を呟きながら、ジェットに続いた……
闘技場のシステムとルールは以下の感じだ。
A、B、C、D、E、F、G、Hグループに分かれ、予選を行う。
予選で勝ち残った者達が本戦へ出場。勝ち抜き形式でどんどん上がってもらう。
そして、最後まで勝ち抜いた者が優勝者である。
場外につくか、降参するか、気絶したら負け扱いになるとか。
あと、武器の使用は禁止されている。しかし、木製の武器ならばセーフとの事だ。
至って普通の、ただのバトル大会であった。
「ヒャハ!Hグループか!」
ジョーはくじを引き、とっととHグループへ行った。
「むぅ、Cか……」
ローレンスもくじを引いて、Cグループの元へ。
「よーしっ!」
ジェットが引いたくじ……それは、Aグループのくじだった。
「あ、あぶね〜……CとかHとかじゃなくてよかった……」
CとHは、ローレンスとジョーが居るところだ。
二人に当たって予選で負けるなんて、無様な結果は残したくない。
やるからには、全力でやらねば。
「よっ、よっ、ほっ。」
今回ジェットが武器にするのは、木刀。
よく出来た、頑丈な木刀だ。
ジャグリング紛いの事をしながら、空き時間を潰している。
そうこうしている内に、すぐに呼び出されてしまった。
「は〜い!」
木刀を持ち直し、リングに上がる。
その様子を、ジョーとローレンスが見ていた。
「さぁて、まずはここに集まってくる戦士の実力はどの程度のものかな……」
「世界中から戦士が集まってくるのだ。期待は出来る。」
二人が話していると、ジェットの相手が姿を見せた。
相手は自分と同じ年齢ぐらいの、双剣使いだった。
その双剣も、例によって木刀だ。
「おお、双剣。二刀流って奴か?」
「一刀が二刀に勝てると思うな……行くぞっ!!」
戦いの銅鑼が鳴らされ、試合が開始される。
先に動いたのは、双剣の戦士だった。
「ぜぁあっ!!」
大きく振りかぶって床を蹴り、ジェットに飛びつく。
その剣が振り下ろされる寸前に、ジェットは消えた。
「なっ!?」
ジェットは、既に相手の背後に居た。
一撃を躱し、相手の死角を通りながら背後を取りったのだ。
「よっと。」
無造作に相手の背中に足を振り、場外にまで蹴り飛ばした。
「ぐはぁあっ!」
双剣の戦士は、場外の床に叩きつけられた……
「そこまでっ!!」
「やった。」
ジェットは勝ち名乗りを上げ、退場する。
例の二人が、彼を迎えた。
「よぉ、一瞬で終わらせてたなぁ。」
「まぁ、あの程度の戦士なら手こずることは無いと思っていたのだがな。」
「ま、後の事を考えて早めに終わらせただけだ。」
話していると、次はローレンスが呼ばれた。
もう、次の試合が始まっているらしい。
「次は我の番か。行ってくる。」
「頑張れー」
ジェットの応援を背に受け、場に上がる。
相手は、黒いコートを着た普通の男に見えた。
「はじめっ!」
始めの合図と共に、男はスマホを取り出した。
「なんだ?」
「チートコード、発動……!」
スマホを操作し、しまう。
次の瞬間、とてつもないエネルギーが爆発し、旋風が巻き起こった。
「おお。」
ローレンスの頭に浮かんだもの……
それは、魔術と機械で自分の身体能力を上げるというテクノロジーだった。
この世界の人間の体には、魔術の回路というものがある。
その魔術の回路を機械と同期、特定の操作をすれば、実力の限界以上のパワーを引き出せるという魔力……機械魔導の一つだ。
「悪いね、一撃で終わらせる!」
男はそう言いながら、こちらに突っ込んでくる。
そして、胸に拳を叩き込んできた。
直撃し、背中へと衝撃が抜ける……
「……」
ローレンスは、ノーリアクションのまま男を見ていた。
いくら限界以上のパワーを引き出せても、立っている次元が違うのでは意味が無い。
「……えっ!?」
「それが攻撃か?」
「くっ!!」
男は飛び退いて構え、拳に全エネルギーを込める。
そして床を思いっきり蹴って、こちらに突撃した。
「はぁああーっ!!」
「……」
その姿は既に残像で、男の一撃はすっぽ抜けた。
「何処を見ているのだ。」
「っわぁああああっ!!」
目標を外した一撃の勢いのまんま、場外に投げ出された。
派手にスっ転び、ゴロゴロと転がり、倒れた。
「そこまでっ!」
「……」
ローレンスは退場し、二人の方を向く。
「やったね。」
ジェットは拍手しながら、彼を迎えた。
一方のジョーは、爆笑していた。
「ヒャハハハハハハ!アイツ、だっせぇ!ヒャハハハハハハハハ!!」
「フン、貴様の品の無い笑いは変わらんな。」
「アァ!?」
「あーあー、喧嘩すんなガ〇ジ共。」
ジェットが二人を止め、別の場所に目を向ける。
そこでも、戦いが繰り広げられており、そのレベルはまぁ高い方だった。
「ぜぇいっ!」
「とりゃーっ!」
次々に試合は進んでいき、今度はジョーの番になった。
「……」
相手は、武道家の男だった。
試合開始の合図と共に、戦いが始まる……
「うぉおおっ!!」
「フン。」
突進してきた武道家に、デコピンする。
すると次の瞬間、場内に僅かに衝撃が発生し、旋風が巻き起こった。
「!!」
「……」
旋風を顔に受けながら、ジョーの方を見る二人。
ジェットの方は驚愕しており、ローレンスは腕を組みながら微動だにしていなかった。
戦っていた戦士達も固まり、そこを見る。
「……」
武道家は天井に激突しており、白目を剥いていた。
「そ、そこまでっ!」
「……っあ〜……加減が効かねぇな。」
ジョーは退場し、二人の所に行く。
ジェットは拍手しながら、迎えた。
ローレンスは、依然として腕を組んだままだ。
「お、おお〜……」
「乱暴な奴め。」
「次からはもっと加減するさ。」
……たぶん、この調子だと決勝で当たるのはジョーかローレンスだろう。
俺、生きて帰れるのかなぁ……
予選試合はこんな感じで進み、数々の戦士達もどんどんと数を減らしていった。
三人は、見事に予選を勝ち抜き、本戦へ出場する事となった……




