第28話:馬車の旅路
ホノカは馬車でイグラシアに向かっている道中だ。
イグラシアは二つの領と山を乗り越えた先にある。
ホノカ達は昨日二つの領を通過して残る山に向かっていた。
「ホノカ様、そろそろ山に入るのでこれを…」
ショウリはホノカにクッションを渡そうとするが
「別にいい、お前らで使ってくれ」
ホノカはそれを受け取らない。
「いいのですか?これから山に入ると揺れが酷くなってお腰の負担になりますよ?」
マイナがホノカを心配する。
「それくらい大丈夫だ。俺からしたらお前らに身体を壊されたら困るから、自分達に気を配ってくれ」
「ありがとうございます!」
マイナはホノカの優しい言葉に感激する。
「ですが…」
ショウリは主従関係を重んじているので戸惑ってしまう。
「俺はお前らの本当の主人じゃないんだから人前だけしっかりするばいいんだよ」
「は…はぁ…」
ショウリは納得できていないが主人であるホノカへ返事をする。
ガタン
「おっと、なんだ?」
突然に馬車が停止してしまう。
「おい!どうしたんだ!?」
ショウリは小窓から御者に事態の確認をする。
「モ、モンスターです!」
「何!?此処らへんだとストーンリザードか!?」
「い、いえ、あれはロックリザードです!しかも4体!!護衛の方々は殆どやられてしまいました!」
「何!?こんなところにAレートモンスターが!?しかも4体…」
ショウリはこの事態に絶望してしまう…
「おい、俺の事忘れてないか?」
ホノカは少し不満そうな顔で自分の存在を表す。
「そ、そうでしたね!!!」
ショウリはホノカの事を守る存在として考えていたので、ホノカが自身達より強い事を思い出す。
「じゃあ行ってくる」
ホノカは馬車を降りていく。
「!?、ホノカ様!装備は!?」
ショウリはホノカが何も装備していないのに気づく。
「あ、そうだな…」
ホノカの目に弓が止まる。
「ちょっと借りるぞ」
ホノカは倒れていた護衛の騎士から弓を拝借する。
「え?、ホノカ様?それは弓ですよ?!」
ショウリはホノカが弓を持っていくのに驚愕する。
「大丈夫だ。安心しろ」
「で、ですが…」
ショウリはホノカの余裕な態度に唖然とする。
「ゴワァアアアアアア!!!」
トリケラトプスのような岩を纏ったモンスターであるロックリザードが暴れ回っていた。
ロックリザードは護衛を突破してホノカ達の方へ走り出す。
「お、二列になってくれたか…」
(「金属魔法 アイアンアロー」)
ホノカは鋼鉄の矢を2本造りだす。
(「流石にスキルの使用はやめとくか…」)
ホノカはショウリ達の目を気にしてスキルを使わずに弦を弾く。
「ふー…」
ホノカは深呼吸をして集中する。
「ふ!」
ホノカは矢を放つ。
ズドドン
2本の矢は2体のロックリザードを貫通して、矢は耐え切れずに砕けるが衝撃波だけが残りの2体を貫き、4体を一撃で絶命させる。
「ギリギリだったな」
「そんな馬鹿な…」
ショウリはこの事態を、光景をただ驚愕することしか出来なかった。
「おい、ショウリ」
「な、なんでしょうか…?」
「あいつらを手当てするの手伝ってくれ」
「かしこまりました…」
ホノカとショウリとマイナは護衛の騎士達を手当てしていく。
ロックリザードと戦闘で死者は奇跡的にいなかった。
「助かります…」
騎士の一人がホノカ感謝する。
「気にするな、寧ろ戦える俺が戦わずにお前らが傷つく方が目覚めが悪いからな…今度からはすぐ頼ってくれ」
「…はい」
騎士は少し悔しそうだったがホノカの優しさに笑って了承する。
「ホノカ様、此方は手当て完了しました」
ショウリがホノカへ報告する。
「そうか…じゃあ暫く此処らへんで休憩するか」
「いいのですか?」
「あぁ、コイツらを無理矢理連れていくより、動けるようになってからの方が効率がいいだろ?」
「確かにそうですね。皆さんに伝えてきます」
「あぁ、頼む」
(「最悪…神法術で連れて行くからいいけど」)
こうしてホノカ達は少しの間だけ野営するころになった。
(山の洞窟)
此処は元々、鉄鉱石を掘る為にゲオルグがイグラシアと取引して得た鉱山だったが…
此処にそんな物は元から無いため、これが原因で戦争は激化した。
そして戦争に夢中になり長年鉱山は放置され山賊の巣窟になっていた。
山賊のボスは二人の部下から報告を受けていた。
「何?ロックリザードがやられただと?」
「は、はい…」
「も、戻ってこないので見に行ったら4体ともやられていました…」
「冒険者じゃないんだよな?」
「はい、貴族の馬車に護衛が15名ほどです」
「何?それで制圧出来ないだと?」
「は、はい…」
「チッ」
(「俺の山賊業が…」)
山賊のボスは元々、この鉱山の鉱夫だった。
彼は諦めきれずに鉱山を掘っているある日、ロックリザードの進化前のパマスリザードを見つけた。
彼はそのパマスリザードを飼い一緒に暮らすようになった。
ある日パマスリザードに餌である岩石を食わせていた時に、パマスリザードからストーンリザードに進化した。
彼は試しにもう一匹パマスリザードを飼い岩石を大量に食わせたら進化した。
彼はパマスリザードの進化条件に気づいた。
彼はそれからパマスリザードを複数育ててロックリザードの群勢を作り上げて、更に他の鉱夫を集めて、山賊を結成した。
「ソイツらはもう山を降りたのか?」
「いいえ、負傷者の手当てをする為に野営しているようです」
「そうか…」
ボスは頭を抱えながら考え込む。
「よし…襲いに行くぞ」
「「「おおおおおーーー!!!」」」
山賊達は武器を取り、ホノカ達の元へと向かう。
(山道)
ホノカは炊き出しをしていた。
「美味い!」
「なんて美味さだ…」
「も、もう一杯ください!」
騎士達はホノカが作ってくれた豚汁を食べていた。
ショウリはホノカの炊き出しが貴族らしくないと考えて不満になっていた。
「いいのですか?このような事をしていて…」
「もう少しで彼らの体力も回復するし、待っててくれよ。
ほら、お前も食っておけ」
ホノカは明るくショウリの不満に対応する。
「は、は…」
ショウリは渋々豚汁を受けとる。
「ショウリさんも食べたら?スゴい美味しいよ」
マイナが豚汁を食べながら、豚汁を薦める。
「貴方はもう少ししっかりしてください…まぁ…折角なのでこれをいただきますが…」
ショウリはマイナに叱言を言い、豚汁を口にする。
「!?」
ガツガツ
ショウリは豚汁を掻きこむ。
「美味い!!!」
「でしょ?」
マイナはショウリの顔を見て嬉しそうにする。
「何を悠長に言っているんですか!これは王宮や高級レストランに出せるレベルですよ!?」
ショウリは興奮しながらマイナに近づく。
「た、確かにすごい美味しいすけど…」
マイナはショウリの勢いに引いてしまう。
「すみません!おかわり!!!」
ショウリはホノカの豚汁を覚えるためにおかわりを要求するが…
「悪いな、もう無い」
豚汁は既に騎士達により完食されていた。
「それにそろそろ来るかな」
「?、何がですか?」
ドド…
少し地面が揺れ始める。
「来たな」
ホノカは揺れの正体を知っていた。
「「?」」
ショウリやマイナは揺れが小さい為、気づいてすらない。
ドドドドドドドド
「え?!何!?」
「な、何だ!?」
揺れが大きなった為、漸く気づく。
「大変です!」
騎士の一人が揺れの正体に気づく。
「数十体のロックリザードです!」
「何!?!?」
(「いや…ホノカ様がいるから大丈夫か!」)
ショウリが揺れの正体を知り驚愕するが、ホノカの存在で直ぐに落ち着きを取り戻す。
「お前ら!武器をとれ!俺が直々に指南してやる!」
しかしそんな甘えはホノカが許さない。
「え!?あの数を相手にしろと!?」
「ふ、不可能です!!!」
「無理だ!」
騎士達が抗議をする。
「おい…」
ホノカは低い声で凄む。
その声に騎士やショウリは恐怖してビクついてしまう。
「俺の飯を食って、タダ働きするつもりか?」
「いや…」
ショウリだけでなく、騎士達が「理不尽だ」という顔で硬直し唖然する。
「武器をとれ!」
ホノカは喝と指示を出す。
「は、はい!」
騎士達は勢いに押され指示に従い、武器をとる。
「5人1組になれ!ロックリザードは腹が柔らかい!2人が揺動をし、一匹でもいい、蜥蜴をひっくり返えせ!
ひっくり返した蜥蜴で他の奴らの道を塞いで一匹一匹丁寧に狩っていけ!」
「わかりました!」
こうして騎士達はホノカの指示通りロックリザードを狩っていく。
「“シールドバッシュ”!」
盾でロックリザードがひっくり返る。
「ギャアアアア」
それにより他のロックリザードが足を止める。
「「“回転突き”!!」」
二人の騎士が槍で腹に穴を開ける。
「よし!2匹目だ!次行くぞ!」
「「「「おう!」」」」
こうして狩る速度は上がっていき、残り10匹なるとロックリザードは逃げていった。
「逃げてったぞ!」
「俺らが勝ったぞぉおおお!」
騎士達が勝利に歓喜する。
「お疲れさん」
ホノカは騎士達を労う。
「流石S級冒険者だ!」
「闘うだけでなく指揮も出来るとは!」
騎士達は逆にホノカの指導力を褒め称える。
「喜んでこんでいるところ悪いがお前らが勝てた理由は二つある」
「え…それは英雄殿の指揮があったらからでは?」
「違う。まず一つはお前らが先程食べた豚汁だ」
「とんじる?」
「そうだ。豚汁のお陰でお前らのステータスは底上げさせていたんだ」
「成る程!」
「やはり英雄殿のお陰か!」
「そしてもう一つはあのロックリザードは養殖されたモンスターだからだ」
「養殖?それはあれが人によって育てられたってことですか?」
ショウリがホノカに質問する。
「そうだ。そのためあのロックリザード達はレベルも低く防御力以外はかなりの雑魚だ。だからこれに慢心せずにこれからも訓練に精進してくれ!」
「「「はっ!!!!」」」
「ちょっと待ってください!モンスターを育てた何者かいるっていうことですよね?!」
「あぁ…それなら…」
ホノカが木の陰を睨むと一人の男が出てくる。その男は山賊のボスだった。
ボスを見るとショウリや騎士達は臨戦態勢に入る。
「すまない、投降させてくれ…」
ボスは土下座して騎士達に懇願し始める。
ショウリは虫のいいボスに怒りを感じる。
「貴様!そんな事…」
「待て、話を聞かせてくれ」
「な、何故ですか!?」
「あのロックリザード達、養殖とはいえ俺らを殺せた筈なんだ…それなのに重傷者はいても死人はいなかった…
だからあのロックリザード達の飼い主の話を聞いてみたいんだ…」
「で、ですが!!」
「待ってくれ!」
「頼む!その人を殺さないでくれ!!!」
隠れていた山賊達9名が姿を表す。
「馬鹿野郎!!!何故出てきた?!」
ボスは部下を怒鳴りつける。
「でも…俺たちあんたを見捨てることなんて出来ない!!」
部下達は泣きながらボスに歩みよる。
「処罰はお前らから話を聞いてからだ」
ホノカはボスと部下から山賊になった経緯を聞く。
「成る程…あんたらも大変だったんだな…だが、山賊行為を起こしたのに変わりはない。罰は受けてもらうぞ」
「勿論だ…」
「山賊達を一箇所に集めて縄で括れ」
「はっ!」
「よし、ちょっと行ってくる。此処で待ってくれ」
「え?どちらに…?」
ホノカと山賊達は一瞬にしてその場から消え去る。
「ホノカ様!?ホノカ様!?」
(数時間後)
ホノカは一人で戻ってくる。
「ただいま」
「ど、何処に行っていたのですか!?
山賊達はどうしたのですか!?」
「王宮、山賊も王宮に置いてきた」
「お、王宮!?」
「山賊はどうなったのですか?」
「さぁな…王様次第だよ」
(王宮)
「ホノカめ…また面倒を…」
「そうですね」
「でも…先代の負の遺産にも、もっと目を向けないとな…」
「よろしくかったのですか?新設部隊など創って」
「いいじゃないか。予算は英雄殿が出してくれたんだし、恩も返していないのにこれ以上英雄の力を借りるわけにはいかないしね…」
こうして元山賊達の彼らはイグラシア国境を守る魔獣部隊として訓練することになった。
パマス→ストーン→ロック→メガリス
→メテオ
いいね、感想、Twitterフォロー、ブックマーク登録、誤字報告などより良い作品を作る為、活動の原動力になるのでご協力お願いします。
Twitter▶︎@inuboshi_fatowl
私事で大変申し訳ございませんが暫くお休みしたいと思います。
理由としては最近辛い出来事が重なり精神的に疲れてしまい、お盆を機にちょっとお休みしたいなと思いました。
休む期間は2週間くらいと考えてます。これ以上休むつもりはございませんのでご安心ください。




