第27話:イグラシア王国へ
ポーラによるボヤ騒ぎがあったものの、無事にイグラシアへの留学が決まった。
出立の日になり、ホノカは少数に見送れていた。
「私も行く!」
聞き分けのいいポーラは珍しく我儘を言い、ホノカを困らせていた。
「ごめんな、ポーラ…でもどうしても連れて行けないんだ…」
理由はポーラはペンドラゴンで待機する事になったからだ。
勿論従魔達の護衛つきで。
「ポーラ…夜は転移して帰ってくるから…」
「んんんんん」
ポーラはホノカに抱きついて離そうとしない。
ホノカはポーラを抱きしめる。
「ポーラ…本当にごめんな…お兄ちゃんもポーラと離れたくないけど、ユーガを探さないといけないんだ…
お兄ちゃんの我儘を聞いてくれないか?」
ホノカは悲しそうな顔でポーラに語り問いかける。
グス
「毎日戻ってきてくれる…?」
「勿論だ」
「私我慢する…」
「ありがとう…ポーラ」
ホノカは感謝をして、再びポーラを抱きしめる。
「いってきます」
ホノカは立ち上がりポーラの頭を撫でる。
「いってらっしゃい!」
ポーラは涙目であるが、笑ってホノカを見送る。
「そうだ。これ…」
ホノカはポケットから指輪を取り出す。
「危なくなったら、これに『発動』って言うんだ。そうしたらお兄ちゃんの所に来れるから、手放しちゃ駄目だよ?」
「うん!」
ホノカはポーラのトライーガの家の指輪を着けてるチャーンに更に指輪を着けてポーラの首にかける。
「準備が整ったみたいだね」
オーレンが妹との団欒を終えたホノカの側にきた。
「すまない、ついな…」
「気にしないよ…君たち兄妹の邪魔は誰にもさせないよ」
オーレンは切ない顔でホノカとポーラを見る。
「ありがとよ」
「気にしないでくれ…
そろそろ出発しないといけないから急いで説明するよ」
オーレンはホノカを馬車へと案内する。
「これが君を乗せる馬車だよ。」
ホノカはイグラシアへ転移できるが、ホノカが『黒刀』とバレる可能性を少しでも減らす為に、馬車で移動しイグラシアに向かう事になった。
「これはオニギリ辺境伯の馬車でね」
説明するオーレンの隣にいるヴィクトルの父、ヴィクトリー・オニギリが嬉しそうにしている。
「息子の学友であり、国の英雄を嘘でも我が子供にできるとは恐悦至極ですな!」
「そう言ってもらえると嬉しいよ…オニギリ辺境伯」
ホノカはオニギリ家の子供としてイグラシアに向かう事になっていた。
因みに事前にヴィクトリーはブレンにホノカが貴族の話を極端に嫌がる事は聞いている。
「何を言いますか。英雄殿…この国の者は皆、貴方と現国王に感謝しています。もっと自身を持ってください」
ヴィクトリーは二人に対して、感謝の言葉を述べた。
「あぁ、頑張ってみるよ」
ホノカは照れくさそうに返事をする。
もう一人は少し申し訳なさそうな顔はするが、何処か安心しているようだ。
「そうだ!貴方の身の回りを世話する二人を紹介しなくては!
おい!二人ともに来なさい!」
ヴィクトリーは男女を呼びつける。
「さぁ…自己紹介をしなさい」
男女二人が会釈をして男性の方から挨拶をする。
「この度、英雄様の従僕をさせていただきます。ショウリ・シャケと申します」
「私はメイドのマイナ・テンムスです」
「二人ともオニギリ家の分家でC級冒険者だよ。」
ヴィクトリーが二人の説明を付け加える。
「冒険者で従者なのか?」
「あぁ、オニギリ家とその分家は代々、最低でもC級冒険者に成るのが仕来りでね。
君の邪魔にならないよう人選したんだ」
「成る程…自分で戦えるか逃げれるんだな」
「その通り!だから緊急時はほっといてくれて構わないよ!」
ヴィクトリーの言葉を肯定するように、二人とも会釈をする。
「そっか、これからよろしくな」
「「かしこまりました。」」
挨拶を済ませると二人が偽装のための物資などを積んで準備が整う。
「いってきます」
「いってらっしゃい!」
ホノカとポーラは改めて別れ挨拶を済ませる。
「ホノカ、コルナ嬢を頼むよ…」
「あぁ、任せとけ」
ホノカはオーレン達との約束をして、馬車に乗り込もうとする…
「待ってくれ!」
ホノカを呼び止めてそこに現れたのはガルルグだった。
「叔父上!どうしてこちらに?!
何よりお身体は!?」
オーレンはガルルグが此処に現れた事より容態を気にする。
そのガルルグは寝てたと思えない程、クマが酷く、立ってるのがやっとという様子だった。
「陛下…そんな事はどうでもいいのです…
『黒刀』殿…娘に会う時にこれを見せてください…」
ガルルグは心配して肩を貸そうとした衛兵を退かし、自身にホノカが今日立つ事を知らせなかったオーレンを睨み、ホノカにある物を渡す。
「これは?」
「そ、それは…私が…妻に贈った婚約指輪だ…これの存在を知っているのは私と此処にいる者と娘だけだ…」
「そんな大切な物を何故?」
「娘は今…誰を信じていいかわからなくなっている…
だから少しでも娘を安心させてあげたいんだ…だからこれを娘に渡しくれ…頼む…」
ガルルグは膝をついて、ホノカに泣きながら懇願する。
「わかった…だけどよ…」
「な、なんだい?!」
ガルルグは何らかの要求をされると思い、顔を上げる。
「あんたいい加減休むんだ…」
ホノカは悲しそうな顔でガルルグに語りかける。
「そんな事…」
ガルルグは痛いところを突かれ目を逸らす。
「あんたにとってコルナ嬢がただ一人の家族のように、コルナ嬢にとってもそうだろ?」
「…」
更に痛いところを突かれ黙る事しか出来なかった。
「あんたの為じゃない…コルナ嬢の為に休むんだ」
「わかった…」
ホノカの言葉を了承する。
「サンダーボルト公爵を医務室へ」
オーレンは騎士達にガルルグを医務室に連れて行くように命令する。
「「はっ」」
ガルルグは衛兵に医務室へ連れて行かれる。
「ありがとう…ホノカ…」
オーレンも辛そうな顔でホノカに謝罪する。
「いいんだ…」
ホノカは今のガルルグに、死んだ父を重ねていた…
状況も事情も違うが、二人とも同じ目をしているのにホノカは気づいていた。
「じゃあ行ってくる」
ホノカは今度こそ馬車に乗り込み、馬車が出発していく。
ホノカとポーラは馬車が見えなくなるまで手を振り合った。
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