第14話:神殿侵入
(法国)
ホノカと三条は門を通らずにホノカが三条を背負って壁を飛び越えて入国していた。
そして二人ともローブを身につけて顔を隠していた。
「神殿の警備ってどんな感じだ?」
「騎士が沢山いるね。」
「そうか…」
ホノカは情報の薄さにガッカリする。
「あ、あと、神殿って僕もそう言っていたけど、どちらかと言うと大きな教会って感じだよ」
それを察したのか、三条は要らない情報を話す。
「じゃあなんで神殿って言ってたんだ?」
「神殿…教会の修道女?や騎士たちがそう言っていたから…僕たちもそう言うようにしていたんだ」
「ふーん」
ホノカは答えが平凡だったので適当に相槌をする。
そんな態度を年下にされた三条は少しムッとした顔になる。
「で!どうするんだい?!」
三条は少し声を荒げる。
「大声出すなよ」
ホノカは三条の存在がバレるのを危惧してというよりは、ただ五月蝿くて面倒くさいと思ったので注意した。
「ご、ごめん」
三条は真剣に怒ってくれたと思い込んで、申し訳なさそうにする。
ホノカは三条に計画を説明し始める。
「まずお前らを召喚した張本人を突き止める。その後にお前の友達を避難させて…」
「避難させて…?」
(「俺がソイツを倒す」)
「いや…何でもない…」
ホノカは三条の事を信じきっていない為、本当の目的は隠した。
「そ、そうか…」
「避難させてたらお前らを元の世界に帰す方法はないか神殿?教会?の資料を漁ってみる」
「本当かい!?助かるよ!、…」
ペコ
三条は喜びのあまり声を大きくしてしまい、自ら口を塞ぐ。
「あぁ、でもあまり期待し過ぎるな…もしかしたらそんな方法がないかもしれない…」
(「最悪の場合、俺が法術作成をして帰すけどな」)
「そうだね…でも僕たちの為に危険な事をさせてしまって…ありがとう…」
三条は見えにくいが真剣で顔で感謝する。
「気にするな、元々似たような事をするつもろだった」
ホノカは元々神殿に侵入をして弟を助けるつもりだったので、三条達、転移者を助ける為に神殿に潜入をするのも、結局やる事は変わらない。
「ん?」
三条はホノカが何の事を言っているのか分からず首を傾げる。
「兎に角、今は教会に潜入する」
ホノカは説明するのも手間だったので話を元に戻す。
「うん…あ、着いたよ」
「ほー」
ホノカはゲームには存在しなかった立派な神殿に関心していた。
「どうやって潜入するんだい?」
(光神法術 神隠しの衣)
ホノカと三条の姿が消えていく。
「え、ちょ…」
三条はその現象に戸惑ってしまう。
「ど…」
ムグ
戸惑いすぎて大声を出そうとした三条をホノカが口を抑える。
「これは姿は完全に見えなくるが、音は隠せたいわかったか?」
コクコク
三条は声を出さずに頷く。
「?、だから見えないんだって頷いたってわかんないぞ」
「ごめん…わかったよ…」
ホノカに注意された三条の顔は恥ずかしさで真っ赤になっている。
ホノカは一度法術を解除する。
「お前は俺の肩を掴んどけ」
「わかった」
二人は神殿の内部へと向かっていった。
(神殿)
二人は何とか音を出すに潜入していた。
道案内はホノカの後ろにいる三条が行い、行く方向が前の場合は肩を押して、
後ろの場合は肩を引っ張り、右の場合は右肩を叩き、左の場合は左肩を叩くことで案内していた。
「ここだ」ボソ
二人は生徒たちが召喚された部屋に着いた。
(「これは…」)
扉にはデルーノー邸の時にあった魔力紋で開くようになっていた。
ドタドタ
(「ん?」)
中から複数人の足跡が聞こえる。
二人は一旦扉から離れる。
ゴゴゴゴゴ
扉が開き始めた。
中から修道士の格好した四人が出て来た。
「転移者の捜索が中止らしい」
「という事は死んだのか?」
「あぁ、殺した奴に譲渡されて興奮して少し暴れようだ」
「全く…贄だとも知らずに好き勝手しおって…」
「我慢しろ…使徒様も「死ぬ命だ。最後くらい楽しませてやれ」と言っていただろう?」
「そうだが…」
彼らは仕事の愚痴を話していた。
ガタン
「誰だ!?」
男達は音のした方向を見る。
その方向には…
「え、あの、その…」
若い修道士見習いの少年が立っていた。
「聞いていたな?」
男は少年に近づき脅し聞き出す。
「あ、い、いいえ!」
少年は何とか否定しようとするが…
「死ね」
男はナイフを取り出し少年に襲いかかる。
「うわあああああああ!」
バタバタバタバタバタ
しかし男達は全員気絶していく。
「え、へ?」
少年は何が起きたか分からずに変な声を出してしまう。
「おい」
「え、だ…」ムグ
ホノカだけ姿を表して、少年が大声を出しそうだった為、口を塞ぐ。
「お前に聞きたい事がある…大声を出したら…わかるな?」
ホノカはチラッと気絶させた男達は見ながら脅す。
コクコク
少年は必死に頷き了承する。
「ぷは」
「お前ここの人間か?」
「うん…まだ見習いで来たばかりだけど…」
少年は怯えながら話す。
「じゃあコイツらの事は知らないのか?」
「いや…知ってる…こ、この方々はアーゼル様の直属部下だよ…」
「そのアーゼルっては?」
「ここの第一位神官様だよ」
(「ソイツが多分…教団の幹部だな…」)
「ソイツの部屋は何処らへんにある?」
「教会の中央棟、教皇様の下の部屋だよ…って君アーゼル様をどうするつもりだい?!」
(「状態異常魔法 スリープ」)
ホノカは少年を眠らせる。
「よし、中央棟に行くぞ、また俺の肩を掴んでくれ」
ホノカは三条に再び肩を掴むように指示をする。
「う、うん」
三条はホノカの手際の良さにドン引きしてしまう。
「君、思いっきりいいと言うか…躊躇がないと言うか…」
「五月蝿い、いいから行くぞ」
三条を黙らせてホノカは再び姿を隠して、中央塔に向かう。
(「どう見ても僕が年上なのに…」)
三条はホノカの態度に少し不満に思う。
(教会の広場)
二人は元々いた西棟から中央棟に向かっていた。
中央棟には北棟からのみ入ることが出来るので一度広場を通って北棟に向かっていた。
ザッザッザ
生徒達と思われる集団が前から来た。
二人は避ける様に端に移動する。
三条は彼らの様子を見て、少し疑問に思う。
(「一、ニ、三班…非戦闘スキルの女子が何人かいないな…」)
騎士が話を開始する。
「これから訓練を開始する!死んでしまった三条様の為にも強くなるのです!」
「「「おーーーーー!」」」
生徒達は雄叫びを上げる。
「訓練開始!!!」
生徒達の戦闘訓練が始まった。
ガキン、ガキン、ガキン
生徒達は武器をぶつけて、力任せな闘いを行なっていた。
ドン
非戦闘スキルの生徒が吹き飛ばされる。
「おい!しっかりしろ!そんなんじゃあ強くなれないだろ!」
同じ班の生徒が叱責する。
「う、うん!」
彼はすぐに立ち上がるが…彼の顔は恐怖で強張り、足が震えていた…
三条はその光景を申し訳なさそうな顔で見つめる。
「おい、行くぞ」ボソ
ホノカは三条に進む様に聞こえるかギリギリの小声で促す。
三条は決めてはいないが、ホノカの肩を叩く事で了承を表す。
ホノカ達はそのまま北棟に向かっていく。
(北棟)
此処は生徒達の宿舎でもあり中央棟の教皇や重要関係者が逃げる際に使う二番目に強固な棟になっている。
今日はいつもと違い、騎士が巡回していてホノカ達は上手く進めずにいた。
(「まさか、コイツが言っていた騎士は沢山いるってのを、こんな風に実感するとわ…」)
(「いつもこんなにいないのに…」)
薄い情報を言った本人ですらこの状況を驚いていた。
騎士の中にもこの厳戒態勢を驚くものもいた。
「おい、何で今日はこんな人数で巡回してんだ?」
「なんか勇者の数人が大揉めして死人が出たらしいんっすよ」
(「!?」)
三条は騎士達の話に驚く。
(「!?」)
ホノカの肩から三条の手が離れる。
(「あの馬鹿!」)
ホノカは“感知”スキルを使用して三条を追いかける。
(3班の部屋)
バン
三条は飛び込むように扉を開けて入る。
「あれ?」
その部屋には誰もいなかった…
しかしその状況を余計に三条を不安にさせた。
三条は部屋を出て探そうとするが…
「くっ…」
ドン
「勝手なことするな」
ホノカは神法術を一旦解除して三条を取り押さえる。
「だって皆んなが!」
「それなら情報を集めてからにしろ!誰が死んだかもわからないんだろ?それなのに勝手な事をして…お前が今やってる行動は他の仲間を危険に晒してんだぞ」
ホノカは三条を睨みながら、静かに叱責する。
「く…」
三条は心配と無力さに涙を流し始める。
『大丈夫か?』
『あぁ、一応だけど…』
外から声が聞こえる。
ホノカは三条を胸ぐらを掴みながら三条を起こして、神法術で隠れる。
ガチャ
3班の浦杉以外の班員が入ってきた。
しかし山本の顔には包帯が巻かれていた…
田本も腕に包帯をしている。
「大クズの野郎…急に攻撃して来やがって…」
彼らの負傷の原因は大崩だった。
「『スキルを寄越せ』とか訳わからない事言いやがって…いてて…」
田本は愚痴をこぼしながら腕を摩る。
「ありがとう…阿立君…」
山本は助けてくれた阿立に感謝する。
コクン
阿立は頷いてベッドに横になる。
(「よかった…皆んな無事で…」)
三条は怪我はしているが生きていて変わらない様子の彼らを見て安心する。
シュン
(ウラの森)
ホノカは三条を連れてポーラがいる場所に転移した。
ドン
「ぐわ」
三条は押されて倒れ込む。
「ホノカ様!」
タヌ太郎がホノカが帰ってきた事に気づき近寄ってくる。
「ポーラは?」
「ポーラ様はコン次郎、ウル四郎、カブ五郎と共に狩りをしに行きました」
「そうか…悪いが俺はもう一度出る…コイツを逃げないように見張っておいてくれ」
「はっ!」
三条が焦って話に割り込んでくる。
「ちょっと待ってくれ!僕も連れて行ってくれるんじゃないのか?!」
ホノカは漆黒の瞳で三条を見つめる。
「お前を連れていくつもりはもうない…」
ホノカはその一言を告げてその場から消える。
「ど、どうして…」
三条は消えたホノカに聞くが、その答えは返ってくることはない…
何よりその答えは三条本人も知っていた…
(法国)
「全く…勝手な事して、こっちは数人ボコしたのがバレる前に調べるを終わらせたいんだぞ…」
ホノカは跳躍を何回もして教会に再び辿り着く。
「しかし、子ども同士で殺し合ったのか?転移者って子どもじゃないのかよ?」
ホノカは転移した学生が殺し合いをする事を想像することが出来なかった。
ホノカは再び姿を隠し、今度は音も消す。
そして一気に北棟向かう。
(「そういえば…阿立と呼ばれたあいつ…一人だけ呪われてなかったな…」)
氏名 阿立登(光神の恩寵)
種族 人族(転移者)
レベル100
職業 なし
称号 不殺
恩寵『異世界言語』、『不動金剛』
(「“不動金剛”って何だ?聞いた事ないスキルだけど…」)
ホノカは華麗に壁を蹴りながら騎士達を避けて中央棟に入る扉の前に着いた。
(「ここだな…」)
ホノカが扉を開けるその瞬間…
「おい!大変だ!修道士達が数人倒れているぞ!」
(「くそ、バレたか…」)
ホノカが気絶させた修道士達が見つかってしまう。
(「早く探すか…」)
ホノカが扉を再び開けようとしたその瞬間にまた…
「止めて!!!!!」
少女の叫び声がする。
(「ちっ…あああああ、くそ!」)
ホノカは教団の情報を調べてるのと少女を助けるかで葛藤を一瞬だけして少女を助けに向かう。
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