第22話:クーデター
(王宮)
「予算会議を始めたいんだがな…」
ゲオルグは少し苛立っていた。
「ブロン公爵はまだか?!」
第一師団団長兼軍務大臣のホクニネ侯爵も激怒していた。
ブロン公爵は1時間以上遅刻している。
「予算会議が無いなら私は帰らせてもらおか…」
茶髪のイケメンは席から立ち上がる。
「ムーン辺境伯…」
彼はグレンダの弟、ボレアス・ムーンである。
姉とは違い、接近戦ではなく風魔法や氷魔法の性能がある。
「待ちたまえ。ムーン卿」
宰相が止めるとボレアスは会議室の全員を睨む。
「私の義兄を冤罪で殺し…私の甥と姪を行方不明にした。あんたらとはこれ以上同じ空気を吸いたくないんだよ…」
ボレアスはグレンダとは特別仲が良い訳では無かったが、大切な家族ではあった。まだ若くして辺境伯になったばかりの時は義兄あり当主の先輩でもあるクーガに助けてもらったこともあり、血の繋がった姉より義兄のクーガと仲が良かった。
更にホノカの出産には立ち会っていた。
グレンダクーガに送り返されていたが、ホノカとユーガ、ポーラにも妊娠祝いと出産祝いの贈り物を送っていた。
「待つのだ!」
ホクニネも止めるがボレアスは無視して会議室を出る。
ガチャ
「ブロン公爵…」
最悪のタイミングで来たのはクーガを貶めた張本人ブロン公爵だった。
「やぁ…陛下、皆さん…そしてボレアス君」
ブロンは遅刻したのにも関わらず意気揚々と挨拶をする。
ボレアスは煽られたが微動だにしない。
「退いてもらおか…」
「それは了承しかねるね、これから会議だ」
「遅れたブロン公爵貴方が悪い…」
「そうだぞ!一体何をしていたんだ!」
ホクニネも立ち上がって遅刻の理由を問い詰めようとする。
「まぁ、その理由を説明するためにもここは一旦座ってもらおうかな…?」
「断る」
「いや、座ってもらう」
ブロンは小型の魔導銃を取り出す。
「それは…何つもりだ…?」
ボレアスに魔導銃の知識は無いが、相手が自身を攻撃しようしてるのは理解できた。
「話すから座ってもらおうか?」
ボレアスは銃突きつけられ渋々座った。
「助かるよ」
「これは何のつもりだ?」
ゲオルグが静かにことの顛末を聞き出す。
「国が変わる時が来たのですよ。陛下…
さぁ、入り給え」
ブロンが言うと黒いローブを纏った四人組の集団が入ってきた。
「ローブを脱ぎ捨て…正体を明かし給え」
バサ
彼らはローブを脱ぎ捨てる。
「貴様はへーオン!!」
血色の悪い肌で青髪の男は元貴族で死霊魔導師の使い手へーオン。
一度国家転覆を狙い死者の軍団を率いたテロリストだ。
「アイツはダルロウナだ!」
褐色肌の女性は聖魔法と鞭の使い手ダルロウナ。
元冒険者で光神教会の圧力により冤罪で王国を追われた悲しき復讐者。
「ノートノーガまで…」
数年前まで開かれていた王国の闘技場で活躍していた虎の獣人ノートノーガ。
現国王ゲオルグの政策により食い扶持を失い冒険者になるも、唯戦えばいい剣闘士と違い、調査や捕獲をやらなけばならない冒険者は彼には合わなかった。
「どうして…貴方まで」
「陛下、これは家の復興と復讐です。」
「家の復興?」
「はい…ヘレスティナ・ヴォルカニカは偽りの名前…私の本当の名はヘレスティナ・イフリート。これが私の本当の名です。」
「イフリート!?」
「生き残りがいたのか?!」
会議室にいた貴族達は驚く。
彼女は約90年前に存在した元イフリート伯爵家の長女である。
彼女のイフリート家は他国、エルフの国に眼をつけられてしまった。理由は家名に精霊の名を冠しいた為である。
その国と同盟を結びたかったペンドラゴン王国により無理矢理没落させられた悲しき貴族である。
「彼らは今の王国に怨みがあり、この国をより良い国したいと願う市民なのですよ」
ブロンは光の無い瞳で会議室の全員を眺めながら話す。
「そして今から彼らには王国の重要拠点を潰してもらいます。」
ゲオルグとガルルグが立ち上がる。
「ふざけるな…此処にいるのは武人ばかりお前の好き勝手にさせるか!!」
ゲオルグが全員に戦闘を支持し、全員が戦闘体勢になる。
「換装」
ブロンの指輪から槍と防具が換装される。
「“奥義・雷槍”」
「「「ぐわぁああああああ」」」
会議室の貴族達は一瞬で蹴散らされた。
「私が無策で此処に来るとでも?本当に貴方は戦う事しか頭にない。
まるで鬼人族だ。」
「おい、第二王子がいないぞ?」
「何…?」(気取られたか?…いや、あの麒麟児でも不可能だ…)
「まぁいい…国王を見捨てた王子など…国民はついて行かない…捨て置け…」
「了解」
ブロンは半壊された室内から王国を見上げる。
「これから王国は変わる。」
(街道)
「ちっ、あの婆さん急にギルドに呼び出すなんて…今日から学園の休校が開けるのに…」
ホノカは何も知らずに冒険者ギルド向かっていた。
「…」
ホノカは冒険者ギルドに向かう最中に視線を感じる。
(「70…80…90…100跳んで28か…」)
“索敵”のスキルにより大勢の敵に囲まれたているのがわかった。
「ん?」
ホノカの前に数人が立ちはだかる。
「あんたは三代目斧姫…」
ホノカの前に現れたのは三代目斧姫ことベロニカである。
ベロニカは話始める。
「お前は確かめたいことが二つある…」
「なんだ急に?」
ホノカは睨みながら聞き返す。
「まず一つはお前は王国側か冒険者側か」
「はぁ?」
「今王国は改革の時が来た。お前はどちらか側につく?」
「はぁ…」
(「何て馬鹿な事を…」)
ホノカは呆れてため息を吐く。
「お前もこの国は嫌いだろ?トライーガの子ども」
「!?」
「やっぱりな。お前の父親譲りのその眼を見たら何となくだがわかったよ…」
ベロニカのが話している間に徐々に周りから冒険者が集まってる。
「もう一つの聞きたいことはそれか…?」
ホノカは少し動揺したが再び話を聞く。
「違う…初代斧姫の事だ。」
「何だ?」
「グレンダ様は何で死んだんだ?」
「わからない…父上は知っていたが聞く前に殺された…」
ホノカは敢えて真実を語る。
「そうか…グレンダ様は幸せだったか?」
「あぁ、それは間違いない。母上は幸せだったよ」
「そうか…」
ベロニカは地面に立てていた斧を持ち上げ肩に乗せる。
更に周りの冒険者達も戦闘体勢に入る。
「あたいのやる事は決まったよ…“獣化”」
ベロニカは象の獣人に変身する。
「オラァあああ」
彼女は近くにいた冒険者を薙ぎ払う。
「な、何つもりだ?!」
「あたいが師匠の師匠の忘れ形見を傷つけるわけねぇだろうが!!!!!」
ベロニカは怒号する。
そして彼女の二人の仲間が側に来る。
「どうせこれを止めるんだろ!?行きな!!」
「相手はお前らの倍以上はいるんだぞ?」
「獣人ナメんじゃないよ。ウチら3人でこんな奴ら一捻りさ!」
二人の仲間もホノカの方を見て笑ったり親指を立て、自分達に任せろと示す。
「はぁ…わかった、だがこれだけはさせろ」
「ん?」
(付与神法術 ステータス・ハイパーアップ)
ベロニカ達3人が光を纏う。
「力がみなぎる」
「これは?!」
「身体が軽い…」
3人は自身の力の上昇具合に驚いてしまう。
「効力は30分だ。それまでに片付けろ」
「あいよ!」
ホノカはその言葉に安心して冒険者ギルドに向かう。
「あんたら凄いんだね…」ボソ
(冒険者ギルド)
「婆さん!」
扉を開けると臨戦体勢の冒険者がホノカを待っていた。
「やれ」
「砲剣」×6
ホノカは全てを避ける。
入り口は壊されてしまう。
「魔法隊、次弾発射」
「ツイン・ファイヤーボール!!」
「ウォーターランス!!」
「ウインドカット!!!」
「ランドボール!!!」
「“峰打ち・斬波”」
ズドン
ホノカは反撃をして前線にいた冒険者達を倒す。
「流石だな…『黒刀』…」
「ハーグ…」
冒険者達を指揮していたのはハーグだった。
「悪いな、『黒刀』。これも婆さんの頼みなんだ…」
「嫁さんはこの事を知ってんのかよ?」
「知らないよ…こんな事に巻き込めるかよ…」
「そう思うなら何で…」
ハーグは悲しい顔でホノカを見る。
「あの婆さんはこの国に親兄弟…愛する旦那を殺されるてんだよ…」
「!?」
ホノカの衝撃的な真実で言葉が出なかった。
「婆さん…ヘレスティナさんは元々この国の貴族だったんだ…でも…外交問題でその家は取り潰され、母親はショックで病気になり衰弱して死んだ…父親は子供の為に冒険者になったが、ダンジョンで死んでしまい…兄も同じく冒険者になって死んだ…妹は何とか一緒に暮らしいたが…奴隷商人に攫われ助けに向かったが妹さんは自分で舌を噛み切って自殺…」
ハーグから語らた内容はヘレスティナの過酷過ぎる人生の一片だった。
「その後…ヘレスティナさんはひたすら奴隷商人や不正貴族を殺しまくっていたらしい…その殺伐とした人生を救ったのが旦那さんだ…」
ハーグは大剣を抜き床に突き刺す。
「そして二人は結ばれた…
その後俺の爺様や婆様とそれにもう二人との仲間と出会い…当時は有名なパーティになっていったんだ」
「ハーグさん」
冒険者が禍々しい剣を持ってきた。
「あぁ…これを退かして置いてくれ」
「わかりました」
大剣は退かすため二人がかりで運ばれる。
「しかしヘレスティナさんに再び悲劇が襲ったんだ…
80年くらい昔の話なんだけどな…当時は獣人嫌いな奴も多かったんだ…
有名になっていたパーティ、俺の爺様は獣人でな…ブロン領のギルド長に目をつけられていたんだ…
しかしそいつは唯嫌がらせをしていただけでな…
問題は有名になっていたパーティそのものだった…
そのギルド長の嫌がらせで依頼されたんだ。そこに親父達のパーティに嫉妬していた貴族で結成されたパーティにワイバーンを消しかけられ、ヘレスティナさんの旦那さんは死んでしまったんだ。」
ハーグは魔剣を手にする。
「あの人は師匠で恩人なんだ…その願いを邪魔はさせない」
「何をするつもりなんだ?」
ホノカは悲しそうな顔で質問する。
「聞いたんだろ?この国を変えるんだ。これ以上言う必要は無いだろ?」
ハーグも悲しそうな顔で質問に答える。
「…」
ホノカは瞳を閉じる。
「止めるんだろ?」
「あぁ」
ホノカは少し涙目になり応える。
「魔剣よ、汝の力を解放せよ!」
魔剣は闇を纏い更に禍々しくなっていく。
「うっ」
ハーグは自身の属性でもない耐性スキルもない為、魔剣の使用でダメージを負う。
「行くぞ…」
ハーグは苦しみながらホノカに挑む。
コクン。
ホノカは何も言わずに唯頷く。
「“合技・覇王剣”!!!」
ハーグは魔剣の力により合技を放つ。
(“合技・連続峰打ち”)
勝負は一瞬で終わった。
ホノカは魔剣をバラバラにして、ハーグの関節にのみダメージを与えた。
「『黒刀』流石だよ…」
(回復神法術 エクストラキュア)
ホノカは何も言わずに間接のダメージはそのままにハーグの闇属性で爛れた身体を癒す。
「なっ…」
ハーグはビックリして起き上がろうとするが間接のダメージで首だけを上げる。
「婆さんは何処だ?」
「王宮だ」
「そうか…」
ホノカは聞いて直ぐに行こうとする。
「待て…」
ハーグに止められる。
「学園に行け…学園にも別働隊が動いてると聞いた。
あと王都か何処の森も危険だ…モンスターの群れを隠しているらしい…」
ハーグの自身の知っているだけ計画の情報を話す。
「そうか…助かる…」
「あと頼み事がある…」
「なんだ?」
「ヘレスティナさんを止めってやってくて…
俺じゃあヘレスティナさんを止めれなかった…
だからどうか頼む…」
ハーグは泣きながらホノカに懇願する。
「勿論そのつもりだ…」
◇
(ホノカ視点)
王都の森って事は俺らの隠れ家がある場所か…?
今のポーラとタヌ太郎達がいるかぎり大丈夫だと思うが、もしもの時があるかもな…
ポーラ達を学園に配置して結界をはって一緒に立て籠りをさせるか…
同時に守るにはこれが一番か…
「空間神法術 神の抜け道」
隠れ家に着いた…
「ポーラ!」
「お兄ちゃん!お帰り!」
「ごめんポーラ。急ぎの様なんだ…」
「どうしたの?」
「今からお兄ちゃんと学校に行くんだ。そこでお兄ちゃんの友達を守ってほしいんだ。」
「お兄ちゃんの友達?!いいよ!お兄ちゃんの友達に会いたい!!」
今の言い方気になるんだけど…
「狩りの装備を整えていくんだぞ」
「はい!」
「お前らも行くぞ」
「「「「「はっ!」」」」」
「皆んな俺に捕まれ、
空間神法術 高等転移『ストデウム学園』」
◇
ホノカはポーラを連れて学園へ来た。
校門は破壊されていた。
「くっ、手遅れか…?」
ホノカは学園の光景を目の当たりにして焦る。
「トーカ!」
ホノカの偽名を呼ぶ声が草むらから聞こえる。
草むらから出てきたのは肩を負傷したヴィクトルと女性がいた。
「やっぱりお前なんだな!その髪と格好でわかったぜ!」
ヴィクトルはホノカの顔知らなったが、特徴が酷似していた為、ホノカがトーカだとわかった。
「ヴィクトル、学園はどうなったんだ?」
「学園は…数人の教師と4、5、6年の先輩達がクーデターを起こしたんだ…俺も交戦したんだが、装備も陣形もあっちの方が上で太刀打ちできずに姉貴と草むら隠れていたんだ」
「どうも、はじめましてヴィクトリア・オニギリです。貴方のお噂は弟から聞いています」
彼女はヴィクトルと違い貴族らしい振る舞いをする。
ヴィクトルはその姉の他所用の顔にひいていた。
ドス。
弟の態度に気づき、肘で傷を打つ。
「痛ってぇ!!!」
「その子たちは?」
ヴィクトリアは痛がるヴィクトルは無視してホノカにポーラの事は尋ねる。
「この子は俺の妹のポーラです」
「はじめまして!ポーラです!」
ポーラはちゃんと自己紹介をすませる。
「あら、はじめまして。よろしくね」
ヴィクトリアはポーラと同じ目線になり微笑みかける。
「妹なんていただな」
痛がり涙目のヴィクトルがポーラの存在を興味を持ち、ホノカに質問する。
「あぁ」
ホノカはちゃんと挨拶のできたポーラの頭を撫でながら答える。
「そうだ。オーレンは?」
ホノカは冷静になりオーレンの所在は聞く。
「殿下か?わからない…」
「そうか…ちょっと待ってくれ…」
(“索敵”)
ホノカは敵の位置を確認し始める。
「戦ってるな…これは東の5階か…」
「東の五階?それなら高等部の一級クラスがあるところよ」
「わかった。案内を頼みたい」
「勿論よ」
「行く前に…」
(回復神法術 パーフェクトヒール)
ホノカは二人の傷を癒す。
「え…?」
「そういうのは後で姉貴。いちいち驚いてたらキリねぇぞ」
ヴィクトルはホノカの異常さに驚く姉に忠告する。
「じゃあ、行く道中にも数人いると思うが突っ切るぞ」
「えぇ」「おう」
(廊下)
「死ね!平民が!!」
ズドン。
教師は鳩尾を殴られ気絶する。
ホノカは躊躇なく敵である教師や生徒を制圧していく。
「何て手際がいいの…」
ヴィクトリアは異常な光景にも関わらず、ホノカの凄さについ関心してしまう。
「ほら姉貴!おいて行くぞ!」
ヴィクトルが関心して止まっている姉を注意する。
(6年一級クラス)
「“剣牙”」
ズド
そこにはホノカ達の担任であるフォルトが戦っていた。
敵として…
「君で教師は最後だ…」
「私は負けない…」
「死ね。」(“剣牙”)
スパン!
フォルトの剣が断ち切られる。
「…」
「先生…敵で間違いないんだよな…?」
「そうだ」
「聞きたいことは山程あるけど…聞いている暇はないんだ」
「心配するな。何も言うつもりない」
フォルトは折られた剣から誰かが落とした剣に持ち変える
「“奥義・徹甲斬”」
そのままフォルトはホノカに切りかかる。
「“斬撃”」
ホノカは何の躊躇いもなくフォルトの手を切り落とす。
「あんたはこれぐらいしないと諦めないからな…」
ホノカはフォルトに申しわけなそう顔して見る。
「…」
フォルトは叫ばずにいたが激痛で倒れる。
「役立つがぁ!!!」
他の教師や生徒がホノカに反撃する。
「お前らがな」
ホノカはその言葉に激怒し、一瞬で敵の手足を斬り飛ばす。
「「「ぎゃああああああああ」」」
全員が痛みで転げ回る。
「あんた大丈夫か?」
「あぁ」
ホノカは負傷先生達を回復させていく。
「ん?君は?」
「あぁ」
ホノカは鬼の仮面を取り出して教師に見せる。
「それは!?君はトーカ君か?!」
ガラ!
「トーカ!!」
教室から立て籠っていたオーレンが出てくる。
「オーレン大丈夫か?」
「あぁ、先生達のお陰で…」
オーレンは自身の無力差に落ち込む。
「王宮は占拠もされているらしい、だから俺は王宮側のカバーをしたい。妹と俺の従魔を置いて」
「妹?!と従魔???!トーカに妹?!君は魔獣使いだったの?!!!」
オーレンは急な話に驚きを隠せずに慌てふためく。
教室の外の様子が気になって一人の女子生徒と男子生徒が教室から出てくる…
「「ホノカ…」君?」
彼女はホノカの顔を見るなり泣き出す。
「シューナ、ヴィナタ」
「やっぱりホノカなんだね?」
「あぁ」
シューナはホノカに抱きつく。
「よかった!生きていたんだ…私…ずっとずっと心配してたんだから!!」
シューナは今迄の気持ちが溢れ出る。
ヴィナタも涙目になりながら近づいて来る。
「ずっと探してたんだよ?」
ヴィナタは涙目と鼻声になりながらホノカに話しかける。
「すまない…」
「わかってる…わかってる…
生きていてくれてありがとう…」
ヴィナタは耐えられずに右手で眼を隠す。
彼の右手から水が溢れ出す。
「トーカ…ホノカって?」
オーレンは不安な顔でホノカに疑問を投げかける。
「俺の本当の名は…ホノカ…ホノカ・トライーガだ」
「「「トライーガ?!!!」」」
オーレンやヴィクトル、教師陣はその名に驚く。
皆んなその後の言葉に言い淀む。
オーレンがホノカに跪く。
「殿下!?」
教師陣はオーレンが跪いたのに驚き止めようとしたが、そうなる前にオーレンが話し始める。
「君の父…クーガ・トライーガが無実の罪で裁かれたのは…我々ペンドラゴン王家の不徳が致すところ…国王に代わり、オーレン・ペンドラゴンが此処に謝罪申し上げます…」
オーレンは震えながら謝罪する。ホノカに跪いたのを後悔したわけでない、嫌いな父親の為に謝罪をしているからでもない…
その理由はこれでホノカとの友情関係が終わってしまうという恐怖からだ。
「お前が謝る事じゃない…」
ホノカはオーレンを立たせる。
「俺は確かに復讐する為の情報が欲しくてこの学園に来た…名前も髪色も偽りだ。…でもお前と過ごした時間は俺にとって偽りはなかった。」
オーレンはホノカの言葉に嬉しく抱きついてしまう。
「ありがとう…」
「オーレン悪い…王宮に行かなきゃいけないんだ」
ホノカはオーレンを抱きついた引き剥がす。
「そうだね…」
オーレンは抱きついてしまった事が恥ずかしく顔を赤らめる。
「結界をはっていく。それから…」
「それは駄目だ」
オーレンが結界をはることに反対する。
「どうして?」
「ここはいざという時の国民の避難場所になっているんだ…だから駄目なんだ…」
「あぁ…わかったからそんな悲しい顔するな」
ホノカはオーレンの苦しそうで悲しい顔を見て、自身の計画を取りやめる。
「お前ら!!!」
ホノカが大声を発すると学園の各所に配置していた五体が集合する。
「え?!」
「何この子達?!」
「可愛い!?!!」
従魔を見た生徒や教師達は従魔達に見惚れ驚く。
「タヌ太郎、カブ五郎お前らでポーラとこの人達を守るんだ」
「承知」「了解した」
「じゃあ行ってくる」
ホノカは王宮へ向かう。
フォルトは平民と恋をしたが、貴族の跡取りであるフォルトは結婚を許されませんでした。
彼は法律を変える為に奮闘しましたが、他の貴族達は彼と彼の家を偏見の目で見始めました。
この事に激怒したフォルトの親、祖父母はフォルトが愛した女性を殺しました。
これをキッカケに彼は家から離縁しまいした。
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