第14話:クラス分けとクラスメイト
「ごめんってトーカ」
「俺は別にキレてねぇよ…」
そう言うホノカではあったが、明らかに怒りのオーラのようなものが出ている。
「テスト受けずにお前と同じクラスには出来ねぇのか?」
「無理だね」
オーレンは間髪入れずに応える。
この学園ではテストを受けてクラス分けをする事になる。
テストの内容は学力と教師若しくは先輩との戦闘試験があり、その結果と更に家柄を含めて5つのクラスへと分けられる。
そこに一切の不正はない。
因みにオーレンは一級クラスである。
「はぁ、試験で別のクラスになって、その所為で死んでも知らねぇぞ?」
「大丈夫。トーカならきっと何とか出来るよ」
「はぁ…」(何だよ…信用は?面倒くせぇ)
「トーカ君。こちらへ」
二人が話していたら教師が来て、ここで一度オーレンと別れてテストを受ける場所に案内される。
「これを」
教師は素っ気ない態度でテストの準備を整える。
(「子供頃に一様は勉強したけど解けるか?」)
ホノカがテスト用紙と向き合うと。
歴史を全問解き終えて算一から算九も何とか答えることができたが、理七で筆が止まる。
(「わっかんねぇ…中1レベルわかんねぇ…」)
結局それ以降も上級貴族が習う内容があり解答する事は出来なかった。
そして次の試験会場へ案内される。
「次のテストを受けてもらいます。内容は先程と違い魔法、錬金のテストです。
それが終わり次第、今度は私と魔法の実技試験を受けてもらいます。」
学園側はホノカが魔法を使える事を承知している。
そしてホノカものの15分でテストを全問解答をして終わらせている。
ゲームをやり込んだホノカとってテストの問題は全て基礎中の基礎問題だった。
結果を知るまでもなく全問正解である。
「もういいのですか?」
「あぁ」
「後悔しても知りませんよ?」
「その時はその時ですよ。先生」
男性教師はホノカの余裕ぶった言い方に少し眉を寄せる。
善意でホノカに忠告したのに、それを無下にされ顔には出さないがご立腹である。
「そうですか。わかりました。では次の試験に移ります」
隣の闘技場に移る。
若い女性の教師が来てホノカに試験の説明をする。
「ルールを説明します。此処では魔法だけを使用してください。
魔法サポート系アイテムや近接系スキルを使用していた場合失格とします。
勝敗は気絶若しくは降参することで決定します。勿論殺しは無しです。
わかりましたね?」
「はい」
「そういうアイテムがある場合は私に預けてください。」
男性教師が苛立って話は割り込んでくる。
「説明は終わりましたね。ブリオ先生、開始の合図をお願いします」
女性教師に開始の合図を頼む。
女性教師は少しだけ戸惑うが言う通りにした。
「わかりました。それでは…
はじめ」
「サンダーボール」
「へ?」
ドン。
魔法一撃で男性教師は吹っ飛び壁にぶつかり気絶してしまう。
「え?」
若い女性教師は何が起こったか分からずに困惑する。
「す、すみません。“無詠唱”のアイテムは使用してないですよね?」
何とか状況を把握したが信じられずにホノカの不正を疑う。
「ないけど」
「じゃあ、あの…“鑑定”してもいいですか?」
「はい」
「“鑑定”…」
女性教師はホノカの装備を確認するが、異常は見つからない。
「だ、大丈夫です。少し此処で待っていてください。次の教師が来ます」
女性教師は風魔法で男性教師を運び去っていった。
1時間後
「どうも君がトーカ君だね?」
「そうです」
「遅くなってすまないね。授業もあって遅れてしまったよ。でも言い訳してもいいかな?」
(「もう言っただろ…」)
「どうぞ」
「感謝するよ。じゃあ言わせてもらうが君がものの20分で全ての魔法・錬金の試験を終わらせてしまうのも悪いのだよ?物事には予定が決まっているものだからね」
「たしかに」
「わかっていただき感謝するよ。」
(「このおっちゃんいい奴かもしれないな」)
今迄の教師と違いこの男性教師は生徒に気軽に謝ったり話かけてきたりする姿はホノカにとって好印象だ。
「失礼、名を名乗るのが遅れたね。騎士学科長のロンド・プリナタです。以後お見知りおきを…
ルールはさきほど魔法、武術が逆だと思ってくれればいいよ。勿論殺しは無しだよ?」
「わかってますよ。先生」
「よろしい。では合図を頼むよ?」
「はっ」
ロンドのーに合図を頼まれてもう一人の教師は敬礼する。
「はじめ!」
「“縮地”」
最初に仕掛けたのはロンドだった。軍刀の様なレイピアで攻撃してくる。
「“剣牙”」
そのまま連続して攻撃を続ける。
ホノカはそれを受け止めるだけで特には何もしない。
「“剣爪”」
ホノカは避ける。
「どうしたのかね?防戦一報ではないか」
(「ふわぁ〜ー…寝みぃ。」)
ホノカはテストで頭を使って疲れていた。
「トーカ君。」
ロンドは話かけるが攻撃は止めない。
「何ですか?」
ホノカもいなしながら返答する。
「私がさっき言った事を気にしているならすまないが…騎士対して本気を出さないのは失礼に値するよ?」
ロンドは先程自身が言った『予定』の事をホノカが気にしていると思っている。
(「?」)
ホノカは何の事を言ってるのか理解できていない。
「なら私が本気を出させてあげますよ」
ロンドの攻撃の速度がある。
しかし、ホノカはそれを全ていなし続ける。
(んー)「そんなに早く終わらせたいならそうさせてあげますよ」
(「“峰打ち”」)
トン。
ズドーン。
腹に一撃をもらいロンドは白目を向いて気絶する。
これでホノカの試験全てが終わった。
(学園の会議室)
教師陣は集まりホノカの試験結果をみていた。
「何と…理術は低いですが、歴史と算術は数問しか間違っていない…」
「不正の可能性は?」
「それは無いじゃろ、学園長はわざわざ『黒刀』…トーカ君に試験がある事をオーレン殿下が教えないように釘を刺したのですからな」
髭もじゃな教師は不正の可能性を否定する。
「確かにオーレン殿下は王族の中でも特に真面目な方…学園長との約束を破るとは思えない…」
「それより、凄いのは魔法、錬金の知識だ!」
ホノカに魔法で瞬殺された教師が興奮し楽しそうに声を張る。
「全問正解だぞ!全問!魔法、錬金のどちらかが満点の者はいままでにもいたが、両方が全問正解ですよ!魔法学科長!」
「わかっておる…お主から散々聞いたわ…」
魔法学科長は男性教師の熱にうんざりしていた。
「錬金学科としても頼もしい逸材という訳ですね。」
胸の谷間が露わになっている錬金学科長がホノカもといトーカを楽しみにしている。
「貴方はどう思うの?ロンド学科長」
錬金学科長はロンドに質問を投げる。
「あぁ…彼は私にスキルを…刀技を一つだけ使用して勝った。S級を抜きにしても逸材中の逸材です。」
ロンドは返答するが、どこか心ここに在らずだ
(「我々教師陣は皆が冒険者でいうA級、学科長はA級以上S級以下の実力を有する…それを赤子の手を捻るように遇らうとは…
そして彼の立ち振る舞い…言動は一見粗野な感じがするが、所々に表れる貴族の振る舞いが見え隠れする。」)
ロンドはホノカの出生を怪しむ。
「それでは彼のクラスは一級という事でいいですかな?」
学園長が話まとめてホノカのクラスを決める。
「異議なし」「同意します」「同じく」「うん。いいと思います」
殆どの教師は賛成するが、数名の教師は口に出さないだけで不満な顔をする。
◇
(ホノカ視点)
俺のクラスは一級クラスになった。
これからクラスとクラスメイトに会いに行く。
「やぁ、トーカ君」
「ん?」
コイツは第二王子の…
「ブレン殿下」
「そんなに畏まらないでくれ。」
「どうして此方に?」
「君に会いに来たんだよ…叔父上に続き兄上が君の機嫌を損ねてしまったからね…急遽謝りに来たんだよ」
「そうですか…」
コイツ、多分だけど部分的に嘘をついてるな…
「兄上は国王の映し鑑だね…武人に目がないんだ…」
苦労してんだな…親と上が脳筋って…
「だが、兄が我慢できないのもしょうがなかったと思うんだ。君の戦う姿を観てしまったらね」
コイツも観てたのか
「褒めいただき感謝します」
「改めてオーレンを頼むよ」
「任せてください」
「うん。じゃあ先生が来たみたいだから失礼するよ」
ブレンと入れ替えるように担任が俺に会いに来てクラスに案内してくれる事になった。
「君がトーカだな?」
お、来たな。
「そうです。」
「うむ。私は一級クラスの担任、フォルト・ワーグナーだ…
それにしても君は点数の割には言葉遣いがおぼつかないな」
ワザとそうしてんだよ。
「平民ですから」
「…そうだな。では追いて来なさい」
「はい」
父上程じゃないけどおっかない先生が担任なったもんだな…
「君は自身で平民だと言っていたが…」
ビク。まさか気づかれた?!
「ああ言う、自身を卑下するのは止めなさい」
なんだ…元貴族だとバレたかと思った…
「私は人の出自を気にしないが、此処の教師も生徒も気にするものは多い…だから自身を下にし、謙ったり、相手をワザと挑発するような事を止めなさい」
「わかりました」
案外この人もいい奴なのかもな…たぶん
「よろしい…此処が君が学ぶ教室、一級の一年生クラスだ。入りたまえ…」
「皆もの自身の席につきたまえ、これから途中からではあるが新入生を紹介する。入ってきたまえ」
呼ばれた。
おー大学みたいな風景だな…恐らく貴族の序列か成績順なんだろうな。
「彼はオーレン殿下の護衛で冒険者をしているトーカ君だ。
勿論試験を受けて此処のクラスに入る事が出来た者だ。
トーカ、オーレン殿下の隣へ」
「わかりました」
オーレンの隣か…そこは融通してくれたんだな。
「何…あの仮面…」ボソ
「オーレン殿下は何を考えてるんだ?」ボソ
「野蛮だわ」ボソ
うわー。めっちゃ言われる、睨まれるー。
「ツナータ先生の体調が優れないとの事なので今回の魔法学の授業は自習をするように…」
トントン。
?
「なんだよ?オーレン」
「ツナータ先生…今日君が凄んだ先生だよ」
あぁ、ぽっちゃり婆さんかー。
「オーレン殿下失礼します」
誰?この人?
「やぁ、ヴィオラ嬢。」
立ち振る舞いとオーレンに声をかけるって事は結構位が高いんだろうな。
「貴方!」
うお!びっくりした。急にこっち向くな。
「お母様が言っていた冒険者は貴方ね?
平民で冒険者になのに、このクラスに入れるって事は中々見どころがあるのね!」
誰だよ、お母様って。
「彼女はヴィオラ・フジムラサキ。フジムラサキ公爵家の御令嬢で、学園長のお孫さんだよ」
あー。紫色の髪の色っぽいオバサンの娘か。
しかもあの爺さんとあのオバサンは親子か。
「それはそうでしたか。ご褒め言葉ありがとうございます。」
オーレンはホノカがちゃんとした言葉を発したため、目を丸にして驚く。
「ふふ。オーレン殿下の護衛の任が終わったら、うちに仕えるつもりは無いからしら?」
へー。まさかのヘットハンティングか。
「申し訳ありませんが…丁重にお断りはします」
「何ですって?!」
「ヴィオラ様がわざわざ貴方にお声をかけたのに」
あーあー。うるさいな取り巻きが…
「お黙りなさい!」
お黙りなさいって。
「そう、残念だわ。気が変わったら声をかけて」
うわー。取り巻きまだ睨んでくるよ。てか他も睨んでくるな。
これがクラスメイトか…
◇
ポーラは空を見ながら兄の遅い帰りを待っていた。
(「お兄ちゃん早く帰って来ないかな…」)
「ポーラ様、身体が冷えてしまいましよ?」
「ありがとう。コン次郎。」
ナデナデ。
「もう少しお空見ていたいの、きっとお兄ちゃんも見てると思うから…」
「かしこまりました。それならタヌ太郎を連れて来ますね」
コン次郎はポーラの身を案じてタヌ太郎に護衛を任せる。
「うん。ありがとね」
ポーラはそれを察して笑顔で応える。
(「お兄ちゃんまだかなー」)
そんなポーラが見る空には大熊座が一際輝いていた。
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