153「襲撃者の正体」
ルリア達は事の顛末をピルアーナに相談した。
「うん、うん、成程ね、確かにゴーストのようですね」
ピルアーナは部屋のありこちを調べてみた、
浴室、玄関、トイレ、リビング、窓ガラス、ベランダ、クローゼット。
異常は見つからなかった、でも念のために霊的結界を張っておく。
「どうやら、部屋の中には侵入していませんね」
どうやら窓の外からの悪想念で影響が出たようだ。
呪いに近い物かも知れない。
そうなると結構強いゴーストになるだろうか。
皆が考え込んでいた時に、チャイムが鳴った。
「はーい」
チズシアが玄関を開けると、其処にいたのは藤田さんだった。
「タリエルさん、ルリアさん、強力な除霊の道具をお持ちしました」
せっかく好意で来てくれたから、追い返すのも問題だ。
藤田さんを部屋の中へ招き入れた。
「あら、外人さんがこんなに……」
チズシアとピルアーナを知らなかった藤田さんは驚いている。
皆で自己紹介をして、今回の事件を語り合った。
やがて時刻は深夜12時に差し掛かる。
突如、ベランダ側の窓ガラスをドンドンドンと叩く音が響いた。
「ひぃ!」
音が響いた窓を見た藤田さんが小さな悲鳴を上げる。
彼女の目には、窓の外に生気の無い、数人の人の顔が視えた。
そいつ等が部屋の中を覗き込み、窓ガラスをバンバン叩く。
それはピルアーナにも見えている。
「ん~、キツネですねー、それもいっぱい」
「へ? キツネ?」
「キツネと言っても、そこらの獣の狐じゃありません」
ピルアーナの説明によると、霊界で人が獣化した邪霊だと言う。
藤田さんは納得がいった様子。
先に除霊出来ていたのは、下っ端で弱い奴。
今来ているのは、もう少しレベルの高い奴らしい。
その程度なら、無属性の精霊のピルアーナでも十分に祓うのは可能だ。
例え更に上位の金毛九尾のキツネでも、ピルアーナは負けないだろう。
「でもね、なぜ集中攻撃になってるのか、調べる必要がありますね」
窓の外を見れば、かなりの数が様子を伺っていると言う。
厄介なのは、それらは只の野ぎつね(野干)では無いように思える事。
神の眷族や使いの者だとしたら、背後に神がいる可能性は高い。
神が出てきたら、ピルアーナでは手に負えないと言う。
「取敢えず、シレラさん達を呼んでおきますね」
「あ、あの、私家の近くの神社で強力な厄除けの神具をお借りして来たのですが」
藤田さんの言う強力な除霊の道具とは、神社の神具らしい。
「ああ、それはチョット……」
ピルアーナは困り顔をする。
今呼んでいるシレラ達も正体は『神』だから、別の神の物があると悪影響になりやすい。
同種の呪物がある場合、影響力が干渉し合って、効力を打ち消す場合が多い。
神そのものにとって、影響力は少ないだろうけど、邪魔なものは邪魔なのだ。
藤田さんは不安そうだが、その神具は燃やしてもらう事にした。
事が終われば、燃やした物と同じ物を返す事にを約束する。
部屋の中に、光が出現した、異世界を繋ぐポータルだ。
ブオオオンと小さな音がして、大きな光の輪に広がった。
「え? 何が起こってるの?」驚く藤田さん。
ポータルの中から、シレラ・ミモ・タリマがやって来た。
冒険者姿のシレラ達。
こういうシチュエーションは、藤田さんの趣味にドストライクだ。
アニメで観るような出来事が、目の前で起こっている。
「え、と、その人達は?……」
ミモの大きさにも驚いている様子。
彼女の背丈は多分200以上ありそうだ。
「ありゃー、部外者もいたの?」
「ん、後でなんとかする」
「久しぶりなのであります」
遅れて来たシレラ達は、皆から事の事態を聞いてしばし考え込んだ。
「なるほどね、キツネ共が眷族なら、荼枳尼天が関わるかも」
荼枳尼天、インドではダーキニーと呼ばれる鬼神だ。
かつては、人の生胆を喰らう悪鬼とも言われていた。
人としては、恐ろしい相手だろうけど、
そんな荼枳尼も、神界では女神パールバティの侍女に過ぎない。
「なら、チャンディー様なら、一言言えば終わりなんじゃ?」
「あー、チャンディーはパールバティじゃないよ、別神なの」
なぜかキャラが被って、混同されるとか。
「パールバティは人妻だしー、彼女とは似て無いと思うけどね」
言われれば、チャンディー様の旦那さんって聞いた事が無かったっけ。
旦那さんがいたら、いつまでも冒険者やって遊んでいないだろうし。
ルリアとピルアーナは改めて気が付いた。
パールバティの腕は二本で描かれている。
ドゥルガーは8~10本の腕が描かれて、虎かライオンに乗っている。
それくらい両者は似ていない。
しかし、どちらも激怒の姿がカーリーだったりする。
という事は、交友関係があるのだろうと想像が出来てしまう。
パールバティとは、カーリーのアバターを共有しているらしいけど。
どこまで解っているのか解らないけど、目を輝かせて聞き入る藤田さん。
こういう神様関係の話題も、趣味の範疇なのかも。
眷族のキツネについては、主となる神に仕えている者に、
他神のチャンディーが命令する事は出来そうに無い。
そういう事情はチズシアにもよく解る道理だ。
「最悪、ダキニの主人を呼ぶしか無いね」
そして、いよいよ迎撃が始まる。




