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4.「失敗だった」


―この三年間は、

失敗だった。


そう父親がつぶやいたのは受験真っ只中のあの日。


すべてを

否定された気がした。


あたしが必死で生きてた三年間を、失敗だと決め付けた父。


結局彼には

何も届いてなかった。


もう、どうでもよくなった。


いつも5位以内をキープしていた成績も、受験も、恋も。


何もかも手に入らない気がしてた。


誰にも認められない気がしてた。


愛することがどういうことなのかも見失ってた。


何もかも諦めて、何も感じない心を求めてた。


そんなあたしが選んだ道は、



リストカット―。



軽蔑されることを覚悟で、手首を切った。


理由なんて無かった。


ただなんとなく…この表現が一番合っている。



今思えば、

訴えたかったんだと思う。


自分はリスカするぐらい

苦しんでいると。


他の奴らとは違うと。

だから助けてくれと。



…ただ甘えてた。



嫌われればいいと思った。


親友にも。


あの人にも。


このとき、あたしは初めて友達さえも本気でいらないと思った。



人間が、信じられなくなっていた。


たくさん騙されて、

たくさん裏切られて、

疲れてた。


自分にも何の価値も感じられなくなっていた。


だから、

カッターナイフが

手放せなかった。


リスカをやめてから気付いたのは、あのときのあたしは完全に狂っていたということ。


後悔は今もまだ消えない。

傷跡も消えない。


きっと、この先ずっと、

一生消えないんだと思う。


それでもあたしは生きたいから、もうリスカはしない。


ううん、

生きたいからじゃない。


生きなきゃいけないからだ。


両親を、親友を、裏切った罪を償うためにも…。





親友とあの人、

いっそくっ付いてしまえばいいと思った。


そうすれば、

諦められるから、

近くにいられるから。


そう考えて、あたしは親友の告白を手伝った。



汚い。


あたしは、汚い女だった。


ただ、親友を利用しようとしてただけ。


結局すべては自分のため。

他人のことなんか考えられない。


あたしは、

そんな人間だった。


そんな自分に嫌気がさして、手首の傷はまたひとつ、またひとつと増えていった。




人の痛みが

分からなかった。


心がどうしようもなく

弱かった。



リスカはそんなあたしを

何度も救ってくれた。



こんなこと間違ってるって分かってた。


けど、このときのあたしは、自分を傷つけること以外に生きる術を失っていた―。



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