3.「恨んでた」
―背、伸びたね
同じクラスになって、何日も過ぎた頃、勇気を出してあの人に話しかけた。
心臓が壊れそうだった。
前と少しも変わらない笑顔で、このときあの人はなんて言ったっけ。
ドキドキしすぎて、忘れてしまった。
でも、言葉に出来ないくらいに嬉しかったのは覚えてる。
嬉しくて、その日は一日、顔が緩みっぱなしだった。
親友から無理やり聞きだした好きな人、それはあたしが好きなあの人だった―。
その名を親友の口から告げられた時、あたしは笑って、いつものように嘘をついた。
別に何とも思っていない人を好きな人に仕立て上げて、恋する乙女を演じてた。
偽りの恋は
案外楽しかった。
でも、本当の恋はそんなに穏やかなものじゃなかった。
そんなに美しいものじゃなかった。
少なくとも、あたしにとってはそうだった。
親友にあの人のことを問い詰められて、必死に好きじゃないと否定しながらも、あたしは心のどこかで彼女を恨んでた。
先に告げてしまえばよかったと思った。
本当の気持ちを。
けど、そうすれば、今度はきっと彼女が自分の気持ちに嘘をつくことになったかもしれない。
それでも構わないとは、
とても思えなかった。
親友はあの人ととても仲がよかったと思う。
2人は隣の席になることが多くて、よくあたしの席まで2人の笑い声が聞こえてきた。
あたしは親友の気持ちを知っていたから、彼女はあたしの本当の気持ちを知らなかったから、どうすることも出来なかった。
もし、あの人があたしのことを好きだったら…と、ありえない仮説を立てながら、あたしはいつも虚しい青春に苦笑してた。




