2.「忘れてる」
要らない感情の存在に気付いたのはいつだっけ?
…クラスが離れたときだっけ?
廊下ですれ違ったとき、いつの間にか目で追ってたのを覚えてる。
そのとき、あたしの隣にはあの人の彼女もいて。
あたしと同じように、あの人のこと一生懸命目で追ってたっけ。
その横顔は、あまりにも幸せそうで、あたしは―。
今でも思う。
もし、ずっと同じクラスだったなら、馬鹿みたいな感情に振り回されずに、ずっと隣にいれたかなって。
今のあたしは友達以下。
きっと、他人。
ううん、それ以下かな。
だって、もう忘れてる。
あの人の中に、あたしはきっと存在しないから―。
二年生のときかな。
あの人が彼女と別れたと聞いたときは、別に嬉しくなかった。
またすぐ新しい彼女ができると思っていたから。
あたしは大して可愛くない。
性格も歪んでいた。
だから彼女になりたいなんて、最初から望んでなかった。
諦めてた。
ただ、せめて、
友達でいたかった。
それだけは、
諦め切れなかった。
同じ学校にいるのに、ただクラスが違うってだけで、あたしは怖かった。
あの人に忘れられること。
ほんと…くだらないね。
でも、真剣だった。
好きな人、
いないのはつまらない。
そう思ってた。
だから、いつもテキトーに誰かの名前を挙げて、毎日のように恋バナで盛り上がった。
それでよかった。
好きな人、いない方が楽。
そう思ったのは、再びあの人と同じクラスになったときだった。
嬉しかったんだと思う。
また前みたいに、いっぱい話したくてしょうがなかった。
毎朝、何て話しかけようかと考えながら、教室に入った。
そのくせ、おはようも言えなくて、結局何も話せない日々が続いた。




