冬の終わりと、春の訪れ
「おい‥なんだ、あの妖精は?」
「あいつ‥確か前にも‥見たような気が‥‥そうだ!思い出した!あいつ確か俺の息子が妖怪に襲われた場所にもいたぞ!」
「‥‥それってまさか‥あいつがこの災いを呼び寄せているんじゃないのか」
「じゃあ‥わたしがこんな思いをしているのはあの妖精のせいなのね!」
大切な存在を失った悲しみや辛さから逃れようとヒトはその原因を求め、それを排除しようとする。
例え、エラミーがそれらの悲しみを食べ、記憶を無くさせて悲しみを無くして来たとしても、彼女の姿を見てそれを思い出すものもいる。
そうした人々や不幸に遭った人々がエラミーの能力で記憶を無くす前、その場にいた彼女を悲しみや不幸の元凶と決め付け、やり場の無い怒りをぶつけるのも仕方の無いことであった。
「やめて!やめてよ!あたしだって本当はこんなことしたくないんだ!でも‥こうしなきゃあたし‥生きていけないんだ!‥‥分かって‥誰か分かってよ!」
人間や妖怪に追い回され、逃げ回りながらエラミーは心の中でそう訴える。しかし‥元来悪戯好きな妖精のそんな思いに気づくものなど『いるわけ』ない‥‥
そして‥それらの敵意を受けながらも人々の悲しみや辛さを受け入れ、生きるためにはそれをするしかない自分に対するエラミーの迷い、憤り、そして、悲しみ‥‥そして皆と異なる生まれであるが故に妖精からも疎まれてきた過去‥‥
だが、彼女の心はそれに屈する事はなかった。自分の存在に悩みながらも、それに押し潰される事無くこれまで生きてきた。
そして、そんな彼女の前に現れたのが嵐と早苗。彼女達が見せた人を救い、希望を見せるその姿勢がエラミーにはとてもまぶしく見えた。だが‥‥
‥まずいわね、このままじゃ早苗達は‥
‥どうしよう~わたしのせいでおねえさんたちが~‥
自分がしでかした事で招いてしまった大切な存在を失う事への悲しみ、辛さ‥‥出会い際に嵐が洞察したようにエラミーはそれを感じ取り‥‥そして決意した。自分のした事を償う事を、そして最後の最後くらい、誰かを悲しませるのではなく、誰かを救い、喜んでもらおうと。
それらエラミーの内心を感じ取った早苗は‥先程以上に強く思った。
‥‥この子を助けたい‥‥と。
その思いが力へと変わり、結界がより強くなる。まるで‥‥長い冬の後、春に花が咲くように‥‥
「‥‥あ‥‥」
早苗の協力によって負担が軽減されたのか、エラミーの表情が和らぐ。
「これなら、何とかしのげる筈です」
「‥‥う、うん」
自分達はこれでもう大丈夫。そう判断した早苗はそこで嵐の存在を思い出すと、大声で叫ぶ。
「‥先輩!わたし達はもう大丈夫です!だから、そちらの方達を守っていてください!」
「‥‥分かったわ」
そう言いながらも嵐は不測の事態に備えるべく警戒だけは怠らない。




