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傷物騎士の俺が婚約破棄されたら、学園の才女に溺愛されるようになった。  作者: 左リュウ


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第17話

 メリアンジュ魔術学園騎士科の生徒は、卒業後にその全員が騎士団への配属となるわけではない。


 生徒たちは入団試験を受け、その合否によって進路が分かれる。

 不合格となった者は『王国軍』の兵として配属され、合格した者は『王国騎士団』への入団する。


 即ち、メリアンジュ王国騎士団員とは、一定以上の実力を認められた精鋭たちだ。


 そんな精鋭揃いのメリアンジュ王国騎士団において、掛け値なしに『天才』と称される者がいた。


 スラブヴァイト・ヴォーデンゲルグ。


 メリアンジュ王国が誇る剣の名家、ヴォーデンゲルグ家の息子として生まれた彼は、同盟国への留学後、飛び級で留学先の騎士学園を卒業。


 十五歳という若さで騎士団試験に合格。

 十六歳で王国から『Sランク』の認定を受ける。

 そして十七歳となった今では、精鋭が集う王国騎士団の一番隊隊長を任されるまでになっていた。


 『万術』のリゼリット・フランメルクが魔術の天才であるならば。


 スラブヴァイトはまさに、剣の天才。

 人々は類稀なる才能を持つ彼を――――『剣王』と呼んだ。


(しっかしまぁ……その『剣王』様のご案内を、オレが務めることになるとはねぇ)


 レリクの友人――――ノイル。

 彼は学園へと到着した騎士団の面々を迎え、学園を案内する役目を仰せつかっていた。


 今日の『学内戦』に見学に訪れているのは、騎士団長と、スラブヴァイト率いる一番隊騎士が数名。


 単純な戦力だけなら、王族直属護衛並だ。


「ここに来る度、学生の頃を思い出しますよ」


「ああ、そういえば騎士団長も、この学園出身でしたっけ」


 ノイルの問いかけに、騎士団長は懐かしさに目を細めながら頷いた。


「ええ。私も『学内戦』には出場していました。優勝することは出来ませんでしたがね」


「へぇ。そんじゃあ、当時の優勝者は、今は聖騎士辺りですかね」


「騎士団に配属されて、しばらくした後……戦場で命を落としました」


「……そりゃ失礼しました」


「謝ることはありません。それが騎士というものですし……それに彼は自分の腕に驕りがあるタイプでしたからね。優勝したことが仇になった、と言いますか」


 学生時代における優勝で得た自信が、驕りを招いたということだろうか。

 騎士団長の反応からするに『よくあること』なのかもしれない。


「くだらないな」


 二人の会話を耳にしていたらしい、一人の少年が冷たく吐き捨てた。

 銀色の髪と赤い瞳。触れる者に痛みを与える氷のような美形の騎士。


(なるほど。こいつが……)


 ――――スラブヴァイト・ヴォーデンゲルグ。


 王国内で、たった七人しか存在しないとされる『Sランク』の称号を持つ人物。

 『万術』のリゼリットと対を為す天才――――『剣王』。


「己の実力を過信し、努力を怠った愚者が一人消えた。……それだけの話だ」


 彼は『学内戦』を控えて思い思いに過ごす学生たちに、冷え切った視線を向けている。


「生ぬるい箱庭の中でトップを獲ったぐらいで、自分を天才だと思い込む。そんな勘違いをするバカを生み出すぐらいなら、こんなママゴト大会は潰した方がマシだ」


「まあ、そう言うな。確かにそういった側面はあるかもしれないが、『学内戦』は学生同士が切磋琢磨するための場としては有効だ」


「……だと、いいがな」


 やれやれと言わんばかりに、騎士団長はため息をつく。

 どうやらこの『天才』の扱いには、それなりに手を焼いているらしい。


「すみませんね。うちのエースが」


「ははっ。いやいや、気にしないでください。実際、オレら学生なんか、本物の『天才』からすりゃあ物足りないのは当たり前ですよ」


「……オレを『天才』と呼ぶな」


 ノイルが何気なく言った『天才』という言葉に反応し、スラブヴァイトは咎めるような視線を向けてきた。


「あー……すんません。嫌いでした? 『天才』って言葉」


「いや。むしろ『天才』という言葉を、オレは愛している。なぜならそれは、たった一人にのみ与えられるべき言葉であり、たった一人を指す呼称だからだ」


 先ほどまでの冷徹な様子とは打って変わって、スラブヴァイトの声が熱を帯びてきた。


「オレ如きが『天才』と呼ばれるなど烏滸がましい……その言葉は、たった一人、あの方だけを指すものであるべきだ…………いや。いやいや、いっそ『神』でもいい。オレ如きが『剣王』ならば、あの方には『神』の名が相応しい……」


 一人で熱く語り始めるスラブヴァイト。

 その様子にただならぬ熱気を感じたノイルは騎士団長の方を振り向くが、騎士団長本人は申し訳なさそうに首を振る。


「彼には、心から敬愛する師がいるようでしてね」


「師ではない――――『《《先生》》』だ!」


「同じだろう」


「違う! オレの神聖な思い出を汚すな!」


「わかったわかった……」


 何やら彼には『先生』なる人物がいるようで、その人物のことを異常なまでに敬愛しているらしい。


(『先生』ねぇ……そういえば、レリクのやつはどうしてるかな)


 普段は早めに会場入りして精神を集中させているはずだが、見当たらない。

 そして付け加えるなら……リゼリットの姿も見当たらない。


(まさか二人でいちゃついてる間に遅刻、なんてことはねぇよな……)


 どうか親友があの小悪魔に誑かされていませんようにと願いながら、ノイルは騎士たちを特別観覧用の席まで案内することにした。



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