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王女殿下はお忍び中です!~陰で才能を発揮していたら、大好きな騎士に気づかれました~  作者: たつきめいこ
グロリアーナ12歳

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番外編・悪事身にとまる【カイリー】

ep.30『見劣り姫はお茶会の準備をする』直後の男爵令嬢カイリーのお話です。

令嬢の妄想がひどすぎて、一部事実と異なる部分があります。

 男爵邸の自室にて、久しぶりに心穏やかな時を過ごす。

 ここ数日、平穏とは言えない時間ばかりだった。例えば……と考えかけて慌てて首を振る。唯一落ち着ける場所で悪夢を思い出したくない。今日は何も考えずにゆっくりすると決めたのだから。


 ソファーに身を預け、出入りの商人が「心を落ち着かせる効果がある」と言っていたお茶を飲む。甘い匂いが鼻腔をくすぐって、悩みがすっと消えていく。


 これで、ランドルフ殿下に会えれば最高なのだけれど、今は訓練場の見学ができない。

 仕方がないと諦めかけて、でもすぐに浮気をする彼が悪いのだと思い直す。

 私はただお仕置きをしただけ。よくある恋人同士のじゃれ合いというものね。


「お茶のおかわりをお願い」


 使用人におかわりを頼むと、使用人が手を動かしながら声をかけてきた。


「お嬢様。茶葉が少なくなったのでいつもの商人に声をかけたのですが、しばらく来られないそうです。いかがなさいますか?」

「え? どうして来られないの? 商人は信用第一でしょうに。茶葉はどのくらい残っているの?」


 使用人の話を聞いて、眉間に皺が寄る。常備されている量を見越して早めに連絡しているだろうから、問題はないと思うけれど……。


「それが、昨日と今日でだいぶ減ってしまいまして、残りはもうほとんどございません」


 言われてはじめて、お茶をたくさん飲んでいたことに気づく。


「そう……しばらくはお預けね」


 なんでもっと早く商人を呼ばなかったのかと思いながら、淹れてもらったお茶を飲む。

 すると、別の使用人が「大変です!」と慌てた様子で手紙を持ってきた。


「そんなに慌ててどうしたの? それは誰から?」

「おおおおお、お嬢様! 王家の紋章です!!」

「王家……? ああ! きっとランディ様からね! 今回はどんな熱烈な言葉をくださるのかしら!」

「いえ、それは……あっ!」


 一向に渡してこない使用人に業を煮やし、奪うようにして手紙を受け取る。

 ペーパーナイフでさっと封を切り、中から便せんを取り出して開いた。


「……あら? なんだか便せんが可愛らしい?」


 殿方らしくない便せんに疑問を抱き、封筒に目を落とす。そして。


「ヒッ!?」


 送り主の名を見たとたんに悲鳴が出た。同時に放り投げた手紙が宙を舞う。


「いけません、お嬢様! 王女殿下からのお手紙を粗末に扱うなど不敬ですよ!」


 使用人が慌てて手紙を拾い、こちらに差し出してくる。う……受け取りたくない。でも、用件を把握して返事を書かなくてはならない。

 怖くて仕方がなかったけれど、震えながらも再度手紙を受け取った。


 恐怖を押し殺し、改めて手紙を読む。

 手紙には、かなり綺麗な字で、お手本となるような文が書かれてあった。


「お嬢様、王女殿下はなんと?」


 せっつかないでと思いつつ、読み進める。どうやらお茶会の誘いだったようだ。


「第三王女殿下が、私とお茶を楽しみたいとおっしゃっているわ。でも、なぜ?」


 疑問しか残らない。最近、第三王女殿下によくお会いしている。遭遇率が高くて、つけ狙われているのかと疑いもした。

 ただ、殿下がいるお店に私が行った時もあるので、偶然だと思う。

 とはいえ、怖いものは怖い。あまりに恐ろしいから引きこもったくらいだし。


 そういうわけで、私と殿下は顔見知り程度の関係だ。話をするといっても世間話。しかも当たり障りがまったくない、一般的な話題だけ。

 それなのに、私とお茶を楽しみたいとはどういうことなのか? まったくわけがわからない。

 でも、一男爵の娘に断るという選択肢はない。

 本音を言えば、都合が悪いからとキャンセルしたいが、のちのちに響くと困る。


 心は泣き叫びながら、返事には喜びの言葉を綴って送ったのだった。

自分の行ないが回りまわって返ってきた男爵令嬢でした。


これにて1章『グロリアーナ12歳編』すべて終了です。

お読みいただき、そしてブクマや評価等々していただきありがとうございました。


次回は、キリがよいところまで、もしくは完結まで書き終えてからアップしたいと思います。

それまでお待ちいただけると嬉しいです!

(テコ入れも多少すると思いますので、お含みおきいただけますと幸いです)

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