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#不思議系小説 の時間です。  作者: 佐野和哉


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11/12

Velvet Chocolate

 君の澄んだ声が僕の意識に滑り込んで来る。優しい風が草原を撫でてゆくように眠りから揺り起こす。

 まるで質量のない砂糖菓子のように甘く儚いひと時を繰り返す。

 視界が開ける。君がほほ笑む。また僕の頬を撫でる。君の澄んだ声が吐息に乗ってくるくる回る。窓の外は真夏。螺旋を描く。陽射しが降り注ぐ。汗ばんだ素肌に気づく。しわくちゃの白いシーツ。枕がふたつ。ユマ・サーマンみたいなヘアスタイル。ヴェルベットみたいなスマイル。


 君の声だけを追いかけている。

 林立する白い風車が回り続ける。敷き詰めたソーラーパネル。歩いても歩いても遠ざかる。風と孤独と記憶。君に刻まれた傷。冷たく閉ざされた冬。月も星も凍りつく。悪夢のような日々が過ぎてゆく。君の過去は雪にうずもれてゆく。心だけ今も泣いている。その涙をぬぐう人を知っている。それは僕ではなく。それは、僕ではなく。


 君の声が聞こえない。

 何も問題ない。君が元気で幸せならばそれでいい。

 強がりではない、でも本音でもない。心の奥底でとぐろを巻く感情が今日もどす黒い。排水管に詰まったヘドロみたい。腐り果ててもまだ燻っているヤケボックイ。愛することさえ出来ない。諦めたくはない。自分を見失うほど好きになった人になんて、もうきっと出会えない。


 君の声が聞きたかった。

 晴れ過ぎて黒ずんで見える青い空。光を浴びて雲が浮き上がった。出会いも別れも笑ったり泣いたり、全部ぜんぶ君のためだった。

 気が付くと外は夜明けだった。端末の向こうで君が笑った。名残惜しそうに電話を切った。最後の長電話。


 君の声はVelvetのように。

 君の笑顔はChocolateのように。

 君の別れを共に悲しめない。

 君のことを抱きしめたい。

 君の声はVelvetみたいに。

 君の笑顔がChocolateみたいに。

 優しく、甘く、心が震えて、

 忘れられない。


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