駆け抜ける疾風に勝ちたくなった
途中で切れてしまっていたので前話を書き足してます。申し訳ありません。
「将軍、お前は良い奴だ……!」
経験値取得が無いからか特にアナウンスは無かったがアイテムは獲得できていた。しかしこれは……ふふふふふ。笑いがとまらん。
【厳つい王猪頭】×1
【老いた王猪髭】×1
【折れない王猪牙】×2
【大きな王猪皮】×7
【猪肉】×18
【猪のフィレ肉】×2
高城から聞いた話によると、ドロップアイテムは参加人数が少ないほど多くなり、レアドロップもしやすくなるんだとか。大体のゲームがそうなのでは? と思うかもしれないが、ピッキングアウトでは余りにも大きなモンスターでもない限りドロップアイテムはモンスター準拠だ。
分かりやすく言うと、目に関するアイテムは二個しか落ちない、ということだ。ソロ討伐しようがパーティで討伐しようが【厳つい王猪頭】は1つしかドロップしないというわけだ。
揉めないか? それ……。
「そういえば重量的に……限界か?」
忘れかけていたが過重によってデメリットがあるゲームだったな。んー……? お、レベルか筋力値か分からないが過重のボーダー上がってたのか。もう少し入れても大丈夫みたいだな。
【厳つい王猪頭】だけで2割持ってかれてるんだけど……そういうことなのか? あのサイズがそのまま? 博物館行きのサイズだったぞ?
「さて、とりあえず肉以外の食材、も……っ!」
キィン!
「ピィィ!?」
殺気を感じた俺は咄嗟に【プロテクション】を使って体の正面を守った。それによって鋭利な嘴をプロテクションの魔力壁に突き刺すことになったのは小さな鳥だ。
今までの小鳥とは違う、蒼と翠の羽毛に包まれ、金の尾羽の生えた鳥。カワセミのような見た目とサイズだが……翼がやけに大きい。
「ピィィ!」
【プロテクション】に突き刺さった鳥は翼を振って回転し、そのまま貫通して俺を刺し殺そうとした。
だが!
「《ジャストカウンター》!」
「ビッ!?」
嫌な予感がした、停止状態から起動した、これだけ揃っていれば何かあると思うし、迎撃を選択するさ! 木の棒を振り抜いた渾身のスイングによって吹き飛ぶ小鳥。猪将軍の時とは違い体格差を活かした一撃だ、小鳥に成す術は無い。
が、この小鳥は空中で体勢を整えてしなやかに着地した。そして地面を走って空中へと飛び立つ。一連の動作は惚れ惚れするほど滑らかで、そして奴は空中でも滑るように空を駆けた。
「あぶなっ!?」
【大山猫の眼】発動、これにより俺は魔力を色で把握できるし(最近は発動しなくても強い魔力なら色が着いて見える)、早すぎる相手に目が追い付く。そのお陰でかわすことができたが、鳥は空中で羽ばたくことなく方向転換し再度俺を狙う。速い、だがお前らの狙いはここだろ?
「《ジャストカウンター》!」
「ピィィ!?」
心臓を狙った突貫はスキルの光を帯びた木の棒によって阻まれる。こいつは流鏑覚やトツゲキイカルと同じモンスターだ。戦いの経験が活きるぜ。
だが木の棒は脆くも崩れ去った。それは耐久値が0になったことを意味し、ドラゴンや猪将軍の攻撃すら耐えて見せたこの島の『木の棒』が耐えられない攻撃だったということになる。
普通ならドラゴンなんかとの体格差的にもあり得ないが、奴らは心臓一点狙いの『貫通性能』を持つモンスターだ。威力を集中させるような特別なスキルがあるのかもしれない。
「なんなんだ、お前」
「ピィ……」
何度か梟と戦ったが、奴らはカウンター一発で奇襲失敗と見なして逃げ出した。以前戦った流鏑覚は逃げはしなかったが有利不利がつく前に止めを刺したから参考にならないが……目の前の鳥は自分の攻撃を防がれて尚、俺を倒そうと睨み付けている。
その眼に諦めはなく、ただ前だけを見詰めている。己よりも巨大な敵を前にして「だからどうした」と言わんばかりのその眼は……俺の憧れと一緒で。俺が持たなくてはいけない眼で。
「俺はゼノン」
真正面を向いて名乗りを上げる。木の棒しか使えないのが申し訳なくなる。だがこれも俺が進んできた道の誇りだ。今、装備不可となった剣達はドラゴンとの思い出であり、ドラゴンに託された証だ。ハンデでも侮りでも無いということを戦いの中で証明する。
ああ、なんだろう、ブレイキングボアの時とは違う……アークファウンの時とも違う、初めてドラゴンに会ったあの時のような感覚。
「いざ尋常に……!」
シュト!
キィン!
「勝負!」
心に火が点いたこの感覚! 堪らなくワクワクするぜ!
高速の刺突を【カウンターバッシュ】で阻む。空中で体勢を整えて奴は駆け出す。そうか、こいつは空を走るのか! 大地と遜色が無いほど無尽蔵に空中を駆け巡る。超高速故か残像すら見え始めた。ブレイキングボアによって拓かれたこの一帯は奴にとってホームそのものだ。
となるとブレイキングボアの討伐が出現の条件だった可能性もあるな。ドラゴンを襲わなかった? いやまぁNPC同士の戦闘がどれだけあるのかも分からないが……目の前のこいつがドラゴンを恐れるとは思えない。つまりドラゴンはこいつも倒したってことだろうさ。
ならどうするか。決まっている。俺も勝つ! そのためには守勢じゃダメだ、攻勢に出る!
「手数は俺の方が上! マウントは奪うものだ!」
スキルによって強化された木の棒の二刀流。天地を駆ける翡翠と金尾、【大山猫の眼】では捕捉すらできないが幾分かマシになった。なら上等、ここだ!
【投擲】した木の棒を回避してみせた翡翠鳥だが、飛ぶのではなく駆けるだからこその弱点。余計なステップは減速を生む。つか平然と重力にも逆らってないかお前!
まぁいい、更に木の棒を【投擲】する。奴は当然回避したが……少し俺に近付き過ぎだぜ。
「抜刀術、《ラピッドスラッシュ》!」
【ラピッドスラッシュ】は速度に特化したスキルであり、その剣速故に振った後に意識のラグ(思考が行動に追い付かないために起きる。VRゲームあるある)があるために使い勝手が悪かったのだが、ここに来て閃いたのは「アイテムボックスから木の棒を取り出す」と同時に「ラピッドスラッシュを起動する」というものだ。
残念ながらアイテムボックスから同時に2つ取り出しても両手に装備はできないので、一本での攻撃だけどな。だがかなりの早業だぞ、翡翠鳥にクリーンヒットするくらいにはな!
「ピギィィ!」
「《コフィン》!」
「ピィ!?」
俺は【コフィン】をノックバックで怯んだ翡翠鳥を囲むように展開した。そんでもって、ぶっ飛べ!!
【コフィン】によって生じた魔力の多面体を掴み【投擲】する! 小型サイズが仇になったな。掴めるのなら投げられる、投げた先は木々生い茂る森の中だ!
「ピィィ!」
【コフィン】が切れたか。10秒しか保てないんだよな。ま、魔力が高ければそれだけ長くなるんだろう。無振りレベル最低値ですが何か?
空中を駆け出す翡翠鳥だったが……ここはもう俺の土俵だ! 森の中でならデカブツを出し抜いたことだってあるんだぜ俺は!
【壁蹴り】を使い空へ。【クロノススラッシュ】をぶち当てる! 翡翠鳥は翼で迎撃……ではなく大きく旋回しやがった!? ……かすったけどこれ効果続いてるかな?
【クロノススラッシュ】を当てた木の棒はまた腰に差しておく。布石として大事にしないとな。
着地した後に上を見ると……翡翠鳥が7羽いる? いや、まさか残像!? 高速で移動しているのか!? 速すぎる鳥はラインを描くのではなく残像を残すらしい。
だが今の俺は冷静だ。今なら千鳥だろうと千羽だろうと烏合の集だ! 鳥だけに。
加速した上で攻撃に転じる翡翠鳥には悪いが、お前たちを俺はよく知っている。どんなに加速しようと……お前達はただ一点を狙っているということをな!
「【ジャストカウンター】!」
ギィィン!!
真正面から心の臓を貫かんとしていた翡翠の矢は【ジャストカウンター】によって阻まれつつも、果たして結果は拮抗であった。
このままだと木の棒が先に限界を迎える。耐久値がある以上、拮抗ではダメだ。いなすように体をずらして力を逸らす。
ギュン!(翡翠鳥が木を貫いた音)
「減速してそれなのか!? 強過ぎだろ!」
しかもそのまま大回りで向かって来てるし! 嘴だけじゃなく意思も固いなお前!
「ピィィ!」
更なる加速を持って俺を射抜かんとする翡翠鳥。タイミングさえ掴めれば……。【大山猫の眼】を発動。そして【アンカーフッド】を発動する。一定時間足が動かないが……賭けるしかない。木の棒を斜めに構えて……。
「《プロテクション》!」
キィィィィィ!
甲高い音が響いた。翡翠鳥の正面からは斜めに展開された【プロテクション】によって嘴は滑り、翼が障壁とぶつかる。翼では威力が足りないのか【プロテクション】は壊せない。が、翡翠鳥は虚空を駆けているからこそバックステップを挟んでの立て直しを選択した。
賭けは俺の勝ちだったようだな。【ウェイクアンカー】発動! そんで、
「《コフィン》!」
「ピィ!?」
再び閉じ込められた翡翠鳥の上を【壁蹴り】と【空踏み】で確保、貰ったぜマウント!
「《スタッグソーホイップ》!」
水晶体を足で掴んで投げる! 【コフィン】は長くはもたないからな、スキルによって勢いよく投げられる途中で効果が切れる。逃がさん! 《クロノススラッシュ》を解放!
「ピギィ!?」
これで終わりだ!
「《帯電》! からの《シンカー》!」
勢いそのままに地面に打ち付けられた翡翠鳥に向かって俺は【帯電】した状態で【シンカー】を発動し重くした足で上空から突っ込む! 足裏からじんじんと衝撃が走る。スキルを使ってからの落下ならダメージはない。
攻撃転用【シンカー】の威力で地面にめり込んだ翡翠鳥は抜け出そうともがくが……地に落ちた鳥、踏みつけるは人間。勝ち目はない。長い翼を両足で踏みつけて……チェックメイトだ。
「じゃあな。その眼……カッコよかったぜ」
スキルの光に包まれた木の棒が翡翠の羽毛を貫いた。
《一羽にして千、天を突く翡翠の羽は止められた》
《駆け抜ける疾風はその風を止めた》
《風雲は急を告げ、次代の風を呼ぶ》
《【千鳥駆】イッテントッパを撃破しました》
《称号【快刀乱麻を断つ】を獲得しました》
《アイテムを獲得……Loading。
千鳥駆の金尾×2を入手しました。
千鳥駆の翡翠翼×2を入手しました。
千鳥駆の剛嘴×1を入手しました。
千鳥駆の強心臓×2を入手しました。
千鳥駆のメモリー×1。入手しました》
あれ? アナウンスあるの?




