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ピッキングアウト  作者: もぶ
歴戦の竜と無謀なる者
26/72

活火激発、歴戦の竜と異種の輩 #3


 リスポーンしたんだけども、まぁ待て。クールになれ。さっき聞いたことを思い出せ。


 おもむろにステータスを確認。


 …………デスペナルティ無し。


 ってことはマジでレイドボス? アホなの運営……。

 そりゃあ島の重鎮、ボスエネミーであろうドラゴンを歯牙にもかけない訳だ……。適正人数6人(ドラゴン)と適正人数100人(レイドボス)じゃ俺とドラゴン以上に格差があるだろう。


「だがレイドボス……レイドボスか。……力ずくで倒せるってことか?」


 イベントボスとレイドボスの違い。レイドボスはレイド(強襲)と名前にある通り突発的な戦闘発生か集団での討伐を前提に作られるボスモンスターだろう。イベントボスとの大きな違いは……ギミックだろうか。


 謎解きによる弱点解明や戦闘エリアを限定する仕掛け、生け贄に毒を持たせて飲ませたり超巨大イベント限定軍事兵器、ありとあらゆる弱体化ギミックや弱点特効攻撃をもって討伐するのがイベントボスだ。

 イベントボスには弱体化をしなければ倒せない、そもそも負けを経験しなければストーリーが進まない、特定アイテムを所持しなければダメージが入らないなどの強制された負けイベが故意に存在したりもする。


 だがしかし。


「通常モードは攻撃は物理的なもの。風を起こして攻撃ってのも見せていない。体当たりや足で蹴られるだけでも災害級だが俺が間に入ればドラゴンを守りながら戦闘できる」


 レイドボス、いつ来るか分からないモンスターを対策しようがない。そしてそんなモンスターを「これが無いと倒せません」とか言ってみろ。そんな醜悪な運営、株価暴落するぞ。


 星の数ほどゲームが生まれては消えていく世界なわけで、絶対に無いとは言えないけども。


「炎モードは現状打つ手がない。ように見えて弱点は水っつう……考察も何もない希望論だけどおあつらえ向きに海があるんだよな。試さないなんて舐めプだぜ」


 硬質な鱗以外は物理的な攻撃は無効、どころかこっちが焼かれる。俺に魔法的な攻撃は銃二丁のみ。ヘヴィスラッシュはあくまで魔力で強化された物理技だからなぁ……。


「さて、レベルアップした。スキルも格上相手に連打した。狙(・)い(・)通(・)り(・)に(・)育(・)っ(・)た(・)か(・)な(・)?(・)」


【戦闘スキル】


 スラッシュLv.16 on

 ┣ラピッドスラッシュ

 ┣チャージスラッシュ

 ┗リバーススラッシュ New!


 ヘヴィスラッシュLv.6 on

 ┗ソニックスラッシュ


 カウンターバッシュLv.MAX on

 ┣ジャストカウンター 

 ┣マズルカウンター New!

 ┗ジャッスル 


 プロテクションLv.17 on

┗ランパート


 切り返しLv- on

 クロノススラッシュLv.1 

 片手剣Lv.17 on

 二刀流Lv- on

 棒術Lv.4 on

 木の棒Lv- on

 戦線復帰Lv- on

 壁蹴りLv.MAX on

 空踏みLv.2 on

 アッドLv.5 → アドバンス Lv.1 on New!


 竜呼吸法

  《竜の吐息》New!

  《弔息吹》New!

  《咆哮》New!

  《帯電》New!


 リブートLv.8 on

 アンカーフッドLv.18 on

 ┗ウェイクアンカー New!

 宣戦賦刻Lv- on

 シンカーLv.1 on New!

 大山猫の眼(リンクスアイズ)



「育ったのと生えたのとあるけど……いいね、シンカーとランパートは使えそうだ。マズルカウンターは難しいか?」


 竜呼吸法だけスキル情報が閲覧できない。鑑定のレベルとかじゃなく、そもそも見ることができないように設定されているのか? 帯電? はさっきのカブトムシのお陰か? 俺帯電するの?


《シンカー》

 足を重くする。アンカーフッドとは異なり歩くことも可能。


《ランパート》

 魔力を消費するがプロテクションよりも範囲の広い防御を行う。武器種に限らず発動できる。


《マズルカウンター》

 魔法発動直前に刃を当てることで魔力を暴走させて返す。


《ウェイクアンカー》

 アンカーフッド発動後に敏捷値に補正がかかる。


《大山猫の眼(リンクスアイズ)》

 魔力を色で識別できる。


《リバーススラッシュ》

 剣で下から上に切り付ける。


《アドバンス》

 筋力と敏捷値に補正がかかる。


 スキルの確認はできた、後は実践あるのみだな。


「よし、んじゃとりあえず海のほうへ……あれ?」


 ビギナーズソードを取り出そうとしたが……取り出せない。いつもならワンタッチで簡単に手元に出てくるのに……。


《第一レベル上限が近付いています。レベル上限に達するとビギナーズ武器は装備できなくなります》


 ???


「はぁぁぁぁぁーーー!?!?」


 は、待て待てレベル上限!? 何それ聞いてない! チュートリアルにも無かっただろ!? 公式サイトをチェックしてくださいってか!? ほぼ流し読みです!!


「レベル上限、ってことは……いや待て、スキルはレベルが上がらなくてもスキルポイントで取得ができる、そう、だからそこまで……。

 あぁ!? スキルのレベルは上がらないから派生はしなくなるのか! よりにもよってカウンターもプロテクションも派生するやつだ!!」


 これは、面倒なことになった。どう面倒かって?


 俺の作戦はこうだ。


 ①ドラゴンの攻撃は始祖鳥に比較的有効なため攻撃に専念してもらう

 ②そのドラゴンを俺がスキルを使って守る。スキルなら始祖鳥と俺は対等になるため

 ③とりあえず火消したいから海、行こう


 この②がそもそも綱渡りだがそれしか手が無い戦力差だ。

 都合によってはモンスターを他にもけしかけないといけないが……海、となるとザリガニだな。


 岩礁地帯に始祖鳥を引き寄せる、が最低条件。今はビギナーズ武器は別問題だ。一旦忘れる。

 さぁて、森の明るく光っているほうに始祖鳥がいるんだろうが……木の幹を蹴って上に向かい、空中を蹴ってさらに上へ。この《空踏み》も以外と便利だな。《壁蹴り》の親戚だからか跳躍力もあるし。さくっと木の上へ。


 遠くに見えるオレンジの光に向かって叫ぶ。弱い犬はよく咆哮(ほえ)るんだ。


『お前なんて木の棒で十分だ、焼き鳥野郎が!!』


 スキル《咆哮》は恐らく挑発効果がある。それを使ってヘイトを稼いで引き付けつつ海に向かう。

 数十キロは離れてるが……聞こえたようだ。光が、いや炎が段々と近付いてくる。森の木々が燃えていくからよく分かる。


 木の棒は今48本、いざとなったら頼むな。 


「さてさて……距離を保てるかが問題だが……」


 そもそも炎になったら体重ってどうなって飛んだぁぁぁあー!!


「一直線に向かって来やがって、取り敢えず……海に向かってダッシュだ!」


 後ろを向けて背を見せる。有りもしないプライドなんか気にしない、前に進め、やるしかないんだ。


 木に向かって《壁蹴り》、姿勢を整えて《空踏み》、再び《壁蹴り》、頭上から降ってきた梟の足をジャストカウンターで迎撃「ピギャア!?」、大地を転がったが体勢を整えて再び走る。


 炎になった鳥が飛んで追いかけてくるのに頭上に注意しない奴はいないだろ。後そこ燃焼の範囲では? 地上は今、空から火の粉(というか羽根?)が降る。


「ギァアォァ!?」


 うわぁ、断末魔。





◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 他人事みたいに言ったがそれどころじゃないな。たった今迎撃した梟が焼かれた、その事実が俺に危険を知らせる。熱も感じるけど!


 いや速い! 後ろに始祖鳥が近付いていると振り返らずとも分かる。そしてこのままだと追い付かれる、岩礁地帯なんてとてもじゃないが間に合わない。


「くっそ、さっきまで走ってたくせに……!」


 余裕、いや慢心か。巨体を浮かべるには助走が必要だろうという油断、スキルを上手く扱えているという自負、そんな都合のいいところだけを切り取って『なんとかなる』と思い込んでいた。事実、圧倒的に格下な俺がなんとかしてしまっていた。


 後方で森が燃えていく。その熱はどんどん距離を縮めていく。火の粉が見えた、どうやら俺の上に始祖鳥がいる。


 ああ、消防署のVR体験を思い出す。火が燃え上がるということは灰が舞い上がる。熱せられた気体は肺を焼く。


「げほ、げほっ! っは、無駄にリアルだな!」


 火を人間は怖れ畏れた。死を招く恐怖としての火、死を弔う畏怖の対象としての火、どちらも人類史において何世代も重ねてきた歴史だ。根源から人間は火が怖いんだよ!


 火の粉が目の前を焼く。


「長時間の、範囲攻撃は、どうしようも無い……」


 ランパートで防いだところで何も無い、火の粉は1つじゃないしこの火の粉には何の労力も割かれていない。そんなものを1つ2つ防御したとして、俺に何ができる?


 カウンターで跳ね返した。レイドボスを投げ飛ばした。だから何だというのか。システムを上手く利用していたに過ぎない。ただの羽ばたきで俺は死ぬ。その事実が俺に迫る。


 一度陥ったマイナス思考は俺の足を止める。

 最初から無理だったんだ。調子に乗っていた罰だ。奥さんの敵なんて討てない。お前はただの雑魚なんだから。ほら、火の雨ですぐにお前は死ぬ。


 抗いたいと心では思っても、頭が働かない。この世界で何度も受け入れた死が突然怖くなる。


 何もできな「ガァァア!!」


 黒い何かが迫る火(死)を掻き消す。何か、なんて分かってる。俺が何度も挑んだ相手だ。ドラゴンは鱗を硬質化させまた俺を庇う。


 何の意味も無い行動……いや、NPCが何の意味も無い行動を取るはずは無い。ドラゴンは俺を意味を持って守ってくれている。硬質化したとして相手はレイドボス、火から伝わる熱は間違いなくドラゴンにダメージを与えているだろう。


「なんで、俺を庇うんだ?」


 口から出たのは疑問。俺は無意識に、ドラゴンに答えを求めていた。


「ガァ」


 何言ってるかは分からない。だが、ドラゴンの声音は俺を気遣うものでは無い。まるで「当たり前だ」というように、ドラゴンは俺を守り続ける。


 ドラゴンを守ろうとしていた俺がドラゴンに守られている。奥さんの弔いの為のこの戦いで俺は調子に乗って勝手に気落ちした、只の足手まといでしかないのに……。


 ふと俺の耳に神の声が聞こえる。


《特殊クエスト【竜夫人の願い】を辞退しますか?》


 …………奥さんの、願い?


 弔いの為に始祖鳥に喧嘩を売ったのは俺だ。そうだ、奥さんは何を願った? ドラゴンは何をしていた? 息絶えそうな奥さんから離(・)れ(・)て(・)遠く上空で始祖鳥を相手取っていたのは何故だ?


 ドラゴンはどう見ても地上で戦う方が得意じゃないか。始祖鳥だって炎状態の前は空をすぐには飛べなかった。戦闘場所としては苦手だろう。


 それに好戦的なドラゴンが俺の策に乗って始祖鳥に背を向けたことも気になる。俺を信じた? いや、違う。俺と利害が一致したのか? 俺は巨大カブトムシと始祖鳥をかち合わせたかった。ドラゴンの利益と損害は何だ……いや、奥さんの願いをドラゴンも叶えようとしている? その為に俺が必要? 


「あ……」


 その時、やっと前が見えた気がした。  


《特殊クエスト【竜夫人の願い】を継続します》


「ごめん、ドラゴン。奥さんの願いを思い出したよ」


「ガァ」


「その状態で動けるか? もう少しで海に出る、この距離なら竜(・)宮(・)洞(・)は(・)安(・)全(・)圏(・)に(・)入(・)る(・)と(・)思(・)う(・)」


 奥さんとドラゴンが守りたいものなんて決まってる。ましてや俺を庇ってまで果たしたい願いなんだ。何で気付かなかったんだろうな。ドラゴンは竜宮洞から始祖鳥を引き離したかったんだ。だから空中で戦闘をしていたし、俺の森の奥へ行く案に乗った。竜宮洞が安全になるなら何でも良かったのかもしれない。


 ドラゴンは、竜宮洞にある卵を文字通り命懸けで守ろうとしている。そしてわざわざ俺を庇うということは……俺に恩を着せたいのか? 


 もしかしたら、ドラゴンは死ぬ気なのかもしれない。

 


 


 



 

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